『中村吉右衛門の歌舞伎ワールド』 おくだ健太郎/著 中村吉右衛門/監修

小学館フォトカルチャー 1,575円 1998年11月発行 ISBN4-0933-1112-9

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_4093311129



歌舞伎見人(かぶきみるひと)


■出版社の案内文


当代きっての歌舞伎役者中村吉右衛門の舞台で知る歌舞伎の楽しさ面白さ

本書は、歌舞伎役者、播磨屋こと中村吉右衛門丈が演じる役柄を通して、歌舞伎の名作の舞台を解説し、

歌舞伎の楽しさが満喫できるように構成されています。  


全体は、大きく二部に分けられていて、前半は八ページ単位で一演目を、後半は二ページ単位で一演目を解説。前半部分の「じっくり楽しむ歌舞伎名作選」では、「俊寛」「熊谷陣屋」「忠臣蔵」といった、極め付きの十二演目を選び、それぞれの解説は、二ページ単位で、まず名場面、次に芝居をよりよく理解するための背景と登場人物、そして芝居の流れを理解するためのあらすじ、最後はここぞという見どころ・感じどころの四つのパートから成り、吉右衛門丈演じる豊富な写真を使い、文字通りじっくりと一つの演目について紹介しています。後半の、「一度は見ておきたい名舞台」は、「勧進帳」「夏祭浪花鑑」といった、珠玉の八演目を選び、吉右衛門丈演じる役柄の魅力、ひいては演目の面白さが端的に理解できるように代表的な舞台写真とともに紹介しています。  吉右衛門を知ることが、歌舞伎を知ることになるという、当代きっての役者吉右衛門、「よっ、待ってました!」と思わず声をかけたくなる待望の歌舞伎案内です。


■目次


はじめに 中村吉右衛門


じっくり楽しむ歌舞伎名作選

 佐野次郎左衛門   籠釣瓶

 熊谷直実 陣門・組打   熊谷陣屋

 佐々木盛綱   盛綱陣屋

 大星由良之助   四段目・七段目

 梶原平三景時   石切梶原

 南方十次兵衛   引窓

 一条大蔵卿   一条大蔵譚

 河内山宗俊   河内山

 浮世又平   傾城反魂香

 法界坊   法界坊

 毛谷村六助   毛谷村

 俊寛僧都   俊寛


コラム 歌舞伎の「鬼平」


一度は見ておきたい名舞台

 武蔵坊弁慶   勧進帳

 団七九郎兵衛   夏祭浪花鑑

 幡随院長兵衛   極付幡随院長兵衛

 山陰右京   身替座禅

 井伊直弼   井伊大老

 松浦鎮信   松浦の太鼓

 加藤清正   二条城の清正

 老母藤奈美・藤戸悪龍   昇龍哀別瀬戸内-藤戸


コラム 中村吉右衛門の家


■歌舞伎見人メモ (抜き書きの部分もあれば、まとめた部分もあります)


・客が遊女となじみになるまで

 高級遊女と遊ぶには、引手茶屋の紹介がぜったいに必要だったので、次のような手順でなじみになった


 ①引手茶屋に相談…茶屋の独断で、その客に見合った店、相手が決まる

 ↓

 ②初会…まず引付といって、初めての客数名がいちどきに、相手の遊女と広間で向かい合って顔をあわせる。

       その後、座敷での遊興も含めて、遊女はいっさい口をきかない

 ↓

 ③裏を返す…2度目のことをこういう。初会よりも遊女は親しくなり、会話もしてくれる

 ↓

 ④馴染み…遊女が気に入れば、三度め以降の遊興に進展。これで初めて床入りができた


・「熊谷陣屋」に登場する藤の局は、御所に女官として勤めていたときは「藤の局」という名だったが、

 のちに武士(経盛)の妻になったので、藤の局から藤の方へ、呼称が変わる


・「双蝶々曲輪日記」の「ふたつちょうちょう」とは、大関・濡髪長五郎と素人相撲の放駒長吉という二人の

 ”ちょう”と名のつく力士の話