舞台には一人がけの白い四角いソファーがふたつ。

開場に流れる音楽の音量が上がり、客電が消えて舞台にライトが付くと、

風間俊介と松岡茉優がすわっている。

「おいおまえ」

で始まる物語。

もともとの発達障害なのか育成に問題があったのかはたまた両方なのか、

11歳にもなって日本語もまともにかけない乱暴者のモリ。

モリにウサギ小屋の掃除当番を代われとメールをうけた

耳が不自由なのか緘黙なのか、話さないらしい木生(キオ)。

キオは金持ちで鼻持ちならない嫌われ者で友達もいない(自称)。

キオに日本語を教えて欲しいというモリにキオは本を読めという。

音がわからないというモリにキオは漫画を読めという。

漫画は音が字で書いてあるから。

夏の間、寄宿学校にぶち込まれたふたり。

二人で湖を見ているとき、モリは水面が光っている音はキラキラだという。

漫画にキラキラと書いてあったから。

夏に会い、8月31日に別れるふたり。

12歳の夏も寄宿学校で会う。

モリの言葉はとてもまともになっていた。

去年のようにふたりの楽しい夏、のはずだったが、

ミス・マウンテンを追っていった併設のサナトリウムで寝たきり状態の少女を見てから

ふたりの関係は変わる。

モリは少女をゆっくりさんと名付け、いつもの、時計が6時3分をさして止っている時計台での

キオとの待ち合わせを断ってゆっくりさんの元へ通う。

今年も8月31日が来た。

来年もここで会おうというモリ。

だがキオは別の施設に入れられることになっていた。

キオが夜中に書いたメールはモリに送られたのか。

うん、また来年ね。

次の夏、あらわれないキオにモリはメールを送る。

サナトリウムで手伝いをしていると。

リネン類の洗濯などをしていると。

ゆっくりさんにも会えていると。

 

ミス・マウンテンがゆっくりさんの主治医を殴って警察がくる。

 

モリには南極にいる、と言っていたキオだが、自分で作った夏みかんを送る。

ゆっくりさんの枕元にも置いてほしいと。

 

ゆっくりさんの病室にリネンの換えを置き、夏みかんを枕元に置こうとしたモリは

よくわからない光景をみる。

ゆっくりさんの顔にコンビニのコーヒーの入れ物が置かれ、

主治医がそれを取ってコーヒーを飲み、またゆっくりさんの顔面に置いた。

看護師は主治医の肩を叩いて笑っている。

病室を出たモリを主治医が追ってくる。

階段の所で追いついた彼はモリに「彼女の命には1円の価値も無い」とささやく。

気付くとモリは暴力の怪獣に変身して、階段の下で主治医の顔を何度も踏みつけていた。

 

自分ではどこにいるのかも分からないモリだが、身寄りの無いかれを所長が引き取り

ミシンを教わっているらしい。

前に所長が教えていたヤクザは女の子のワンピースが縫えるようになって独り立ちしていった。

 

施設をぬけだしたキオは親の高級貴金属を盗み、サナトリウムにボランティアに入り、

ソフトクリームショップで働いていた。

迷惑がって、もう送ってくるなというモリに、ゆっくりさんの様子を伝え続けていた。

 

変質者に声をかけられ、逃げて車道に飛び出し、ミス・マウンテンの運転するトラックの

ミラーが背中に当たって寝たきりになった。

トラックは道を落ちて炎上し、ミス・マウンテンは背中に大やけどを負った。

 

サナトリウムにゾウガメが迷い込み、その餌を買いに行くバスの中でもモリにメールを送っていた。

サナトリウムから連絡が入り、ゆっくりさんが目覚めたと。

だがモリは信じない。

ゆっくりさんはどんどん回服し、やがて退院していく。

キオはゆっくりさんに、あなたの事をとても心配していた人いた、と告げる。

ゆっくりさんは「しっていたわ。その人の声に導かれて、私は目覚めた。忘れられるものですか」

 

届いていないふりをしていたメールに、モリは答える。

キオを好きだと。

自分の服を気に入ってくれる人も増え、仲間とショップを開く準備をしていると。

本屋に寄ったら君の本が売っていた。なぜ教えてくれなかった。

キオは言う。

君をモデルにしているような所があるから。

ウサギの耳を食べようとしていた。かれはいう。

おいおまえ。

 

坂元さんの朗読劇はジワジワくる。

また次の不幸が起きるのではないかと不安になってしまう。

けど、今回の話はまだ若いふたりに作家と服飾デザイナーという明るい未来が見える話だった。

何年かしたらまた見たい。