髪結亭 日記 (映画・落語・演劇・その他)

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自分で観た、映画と落語の感想

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「いぬむこいり」 片嶋一貴 監督作品 K'sシネマにて。

 

自由さと遊びごごろに満ちた一本。この事を実現させようとすると、どうしても自主制作に近い形の低予算映画になるのだろうが、そのハンデをものともしないというか、逆手に取って、自由な作品に仕上げている。しかも自主規制をして萎縮するどころか、メリハリの効いた演出がテンポよく映画を進め、四時間を超える大作に仕上げている。痛快極まりない。そこらの映画制作関係者、ザマヲミロである。

 

ネタバレにならないように個人的な感想だけにした。ともかく、第2章は石橋蓮司と柄本明の存在感が抜群。得に、石橋蓮司の長台詞は感涙もの。ATG時代を彷彿とというかそれを凌ぐほどの出来。この辺を見ると、やはりオリジナル脚本にして良かったような気がする、色々あったらしいが(この辺の話を知りたい人は関係者の話を勝手に調べて)。

第3章は、濡場が美しい。凡百な青春映画何ぞは、問題にならない。真のセクシーさは若けりゃいいてもんじゃない。有森也実のヌードも素晴らしい。

第4章は、構想倒れの感が無くも無い。想いが余って壮大な世界観を提示しようとしたからかもしれない。キョラ族とナマ族の抗争は少々類型的で、残虐さを表現しようとしているシーンも陳腐と言わざるを得ない。しかし、その破綻すら美しかったりするのが映画の良いところじゃなかろうか。それをもたらしているのは、舌足らずながら、ほとばしる製作者の思いであり、現場の熱を感じさせる映像だ。緑魔子の妖怪じみた存在感の凄さは言わずもがなだが、有森也実が霧の中を延々と歩むシーン(少し長すぎるが)では、死を予感させながらもほのかな希望を暗示している表情が、印象的だった(観終わって回想すると、演技力というより、演出の力かな、などと思うのだが)。

 

なんだかんだと言っても「映画的快楽」に満ちている。想いが溢れて、散らかった話になってしまいかねない所を、プロの技術と力技で取りまとめ4時間の大作に仕立て上げている秘密は、間違いなくこれだ。繰り返す「映画的快楽」である。