四字漢語「松風水月(しょうふうすいげつ)」と言えば、非常に清らかなことを意味する。

由来は唐の太宗の『三蔵聖教序』に〈松風水月、未だ其の清華に比するに足らず。仙露明珠、詎(なん)ぞ能く茲(こと)の朗潤に方(あた)らん〉とある。松を吹く風、水に映じる月、仙人の降らす露、光り輝く真珠も比べものにならない。経文を讃えた言葉だ。

松風水月の心を求めて、とか、松風水月にも優る心境、などと使う。

松を渡り吹く風、水に映じる月、字面のまま思い浮かべるだにその様子は美しく非常に清らかだ。

この四字漢語が中国由来というのは風に音をたてる松の木や水面に映る月などが古来漢詩の中であまた詠われていることから如何にも頷ける。

幾つかの居住場所のひとつがある街のごく一部に松が多い地域がある。

その辺りは内陸であるにも関わらず、海岸沿いの防風林として見掛けるクロマツが多く点在している。

住まいからはやや離れているが、ＪＲのある辺りは海で、私鉄沿線と国道の辺りは砂州と呼ばれ、縄文時代は海に突き出していたようで、そのような古い歴史から江戸時代になって以降も砂州と呼ばれた地域に沿って植えられたり、自生したクロマツが今も残っている次第だ。

従って今聳えている松の木々は大方が江戸時代以降のものだろうが、それにしても、かなりな樹齢だ。

住まいは更に内陸に向かった場所なのだが、その住まいに滞在している時は何処に出るにもその辺りを通過することになるので、移動の車窓から、ビルの七、八階辺りまで聳えた松や歩道の真ん中に生える松、或いは建物も道も松を優先した静かな住宅地等々、松の木が視界に入るのは馴染みの光景でもある。

松の木々の多い一画はほぼ車で通過するが時々歩くこともある。そして、松毬が落ちる季節だったりすると、真新しい、つい今しがた落ちたであろう初々しい松毬を拾うことがある。

生まれたて、否、落ちたての松毬はまだ柔らかな薄いベージュ色でとても瑞々しい。

何日か過ぎるといつの間に沈着した色となり気付けば黒みがかって、すっかり乾燥している。

特に拾うことを意識していないが、落ちたばかりの松毬を拾うことが多く、ハンカチなどで大切に包んで持ち帰り、何と無く収集する具合となり、柔らかな布を敷いた入れ物に並べていく。そして、時折眺めては声をかけたりもする。

まだまだ松毬が落ちる季節では無いが今から楽しみだ。

とは言うものの。

蝉の脱け殻を大量に拾い、保管するが、季節が過ぎるといともあっさり廃棄するように、松毬も次の季節が訪れる前には何の躊躇も無くゴミ箱に入れる。

後生大事に扱うわりに、まるで、最初から無かったの如く何の気持ちも動かずに廃棄する。その移り気はうまく説明出来ないが、それで良いのだと思っている。ヒドイハナシだ。

monday morning白湯を飲みつつ空を眺める。

本日も。稀薄なまま。