度が過ぎたものは、足りないものと同様に良くない。不十分なのも困るが、過剰なものには弊害があり、物事には程よさが大切だ、ということを意味する「過ぎたるはは猶(な)お及(およ)ばざるがごとし」(先進第十一/二六九)という有名な孔子の論語がある。

何に対してもやり過ぎは良くないし、やらな過ぎも良くないが、やり過ぎるよりやらな過ぎる方が規範を破っていないだけ、まだマシだ、と孔子は示している。

田口佳史氏の『超訳論語』は規範という観点からこの論語を以下のように解説している。

「規範」とは、人として行なうべき正しい道は何なのかを判断する基準を言う。正しい道。この「正」の字は「一」と「止」から成る。つまり〈「この線」(一)で止まれ〉と読むことが出来る。「この線」に相当するのが規範だ。規範が無ければ、どこで止まるべきなのかが分からず、まちまちの位置で止まってしまうし、止まらずに暴走してしまう者も居るだろう、そのように思い思いに行動すれば組織や社会はバラバラになってしまう。逆に規範を認識していれば、皆が正しく進むことが出来、人々が信頼関係で結ばれた正しい社会が形成される。規範は英訳すると「norm」。この単語から派生したのが「normal 」。規範を超えると「abnormal 」。だから「過ぎたる」は良くない、そう最後を締め括っている。

思考はそれに伴う言動が如実に連鎖しているから、当人が一応セーヴしている体裁を繕っていても、良くも悪くも一定以上の過剰な思考を抱いていればそれは言動にふとした瞬間見え隠れする。

人間関係に対してあまりにも過度な気遣いをするヒトを時折見掛ける。どうしたらそんなに余計な心配り、それは実際の行動として相手の現状に加担するのだが、その行動が有っても無くても、むしろ無くてもあまり影響が無いし、加担された側が気を遣わなければならなくなる。ような、つまり、心配りも過度になれば余計だということで、余計とは、必要な度を超えて無駄なことだ。

何故か余計な心配りをするヒトは漏れ無く良いことを他者に施していると言う充足感の虜になっているから、如何に自分が良い行ないをしているかを黙っていられないで、必ずそれを人々に知らしめる。

そして、知らしめた人々から、素晴らしいですね、という反応を得て、そこで漸くそのヒトの行ないが帰結する。勿論、余計な心配りした相手からは漏れ無く感謝の言葉を言わせているし、つまりは反応ありきの心配りなのだ。

口先では「させて頂いた」という具合に謙虚さを前面に押し出していても、「やってあげた」という意識があるから、どうしても誰かに知って貰いたいし口に出したくなるし必ず知って貰うために口に出す。

そもそも、度を過ぎた心配りは、された側の何らかの行動を邪魔していたり、或いはそれこそ余計な手間をかけさせてしまうこともある。片付けなくて良いものを勝手に片付けてしまい、相手に二度手間という労力のロスを課していたり。

その人の手順を狂わせるだけでしか無いことに対して、その想像が全く働かずに手順に割り込んで、その人がその修正に費やす時間のロスにまるで考えが及ばない。

要するに心配りだとか気遣い以前、単に無思慮、想像力の欠如から傍迷惑を及ぼしているだけなのだが、それに全く気付いていない。

勿論、当人は自分が無思慮などとは金輪際思ってもいないだろうが、心配りだとか気遣いだとかを前面にアピールしているヒトほど鬱陶しく厄介なことは無いだろう。

tuesday morning白湯が心地良く全身に巡り渡る。

本日も。可も無く不可も無し。