心がけは滅法悪いので、食べ物に関して、特別な贔屓は無い。贔屓というか拘りというか、旨い不味い以前、口にする全ての食べ物飲み物に対する取捨選択を一切していない。

立派な健康志向のこの世の中においては、しばしば最低限の常識が如く、素材の由来、言い換えれば生産地を問題視することが多い。たとえ国内産であったとしてもそれがオーガニックであるかどうかも重要だったりするし、当然添加物だとか着色料だとかも極力避けるのが食に対する普通の意識として定着しているようだが、そのような健康を大前提にするという意味で、口に入る全ての食べ物飲み物に対して特別な偏りは無いし、素材も添加する何らかの材料にも体に良い悪いを基準にした留意はまるでしていない。

気を付けていないと体に何かしら悪い影響を及ぼしますよと親切に指摘される。或いは体を悪くするようなことは避けた方が良いですよとも言われたりする。

そうですね。

と、そのような親切な忠告には応える。決して拒否もせず、かといって大いに了解したような返答でも無く、そうですね、だ。

何処吹く風ですね、と一瞬で見破られてしまったりもするが、ほんのり笑みを相手に向けて肯定も否定もしない。

不健康にわざわざなりたいとも健康にわざわざなりたいともどちらも思っていない。敢えてどちらかに傾こうとは思っていないだけだ。

「死ぬる時節には死ぬるがよく候」「災難に遭う時節には災難に遭うがよく候」良寛の言葉だが、生きている限り、避けようの無い事象はそのまま受け容れていくしか無いということを表し、死ぬ時節を先延ばしにすることは不可能なことでもあると言っている。

仏教では人間は皆、定まった命を頂いてこの世に生まれてきたと考えられ、それを「定命(じょうみょう)」という言葉で表している。自分の定命がいったいどのくらいかは誰にも分からない。

巷では長寿や健康を目指す文言と共にごく当たり前のように様々な健康法や健康補助食品も氾濫している。

そして、当然のように一日でも長く、今より少しでも健やかに居ることが良しとされている。

良しとされている全てが何故だかとても一方的で、正論など案外脆弱で、ある時覆ったりするにも関わらず、正論として罷り通っている。

避けようの無い事象というのは抗いようが無いし、考えても分からない定命に気持ちを費やしても何かが見えてくる訳では無い。生きていれば普通に考えればマイナスなことなどいくらでも起こり得る。現象は現象として受け止める以外に無い。森羅万象この世で起こることは一切が片時も留まっていない。諸行無常、全てのことが常ならずだ。降りかかってくる変化を厭い無常に逆らおうと無駄な労力を費やさず、意思などと呼べるほどのものも持たず、無常の流れに身を任せてただ流されていく。

そして、何歳まで生きるとかいう長さを定めて目標にもしない。ましてや長生きを目指すことも本意には無い。

では本意は何処に有るのか問われても、そもそも心がけは滅法悪いのだから、最初から何も考えてなどいない。

wednesday morning白湯を飲みつつ空を眺める。

本日も。可も無く不可も無し。