善神会の事務所へ近づくにつれて鼓動が早く、そして強くなってきた。
狂気。
足が震え出し、冷汗が出て来た。
こんな事、馬鹿げているのか。
身体が鉛のように重くなり、動けなくなってきた。
こんなのは、いつ以来だろう。
高校の頃、僕が生意気だと不良の先輩三人に因縁をつけられ、屋上へ呼び出された時だった。
結果からいうと無傷で、喧嘩には勝てた。
しかし、屋上へ繋がる階段を登っている途中は本当に恐かった。
今回もあの時と同じであれば嬉しいが、そうはいかないだろう。
不良の先輩とカルト教団では次元が違う。
しかし、逃げる事は出来ない。
後、五分もすれば着いてしまう。
どうしよう。
なにか、面白い事を考えよう。
そうだ、わらび餅事件だ。
小学校の頃、普段からギャグや顔芸でクラスの人気者だった、柏木くんの最高の持ちネタだ。
柏木くんと僕が、わらび餅を一緒に買いに行く途中、目の前で車に跳ねられた。
普通であれば、幼い僕は泣くか、大人を探す事しか出来ない。
しかし、人気者の柏木くんは一味違った。
それは、頭から血を流しながら、わらび餅を懇願したのだ。
意識を失うまで、何度も何度も「僕のわらび餅」とつぶやいた。
僕は、大爆笑をしてしまった。
不謹慎だとは思った。
しかし、笑いが止まらなかった。
柏木くんは、成人式の二次会でも持ちネタとして話していた。
これは、鉄板ネタだ。
面白くなってきた。
