〈佐賀民話の語りより〉


 ここは九州の北の海ぞいを

 うねうねと行く街道の

 とある峠道

 夏草に虫の音が

 リーリリー

 リーリリーと

 ひびきわたる

 あるむし暑い夕ぐれ

 沢づたいの

 ふかい木立のおくに

 ひっそりと

 淡く白い花がさいた


 峠の方から美しい唄声の馬子唄が 聞こえてきた。馬子の清吉です。ぼんやりしていると 表の戸を叩く者が。月夜(さよ)という 娘だった。


 夫婦になって しばらくして……


 喜ばしてあげたかっただけなのに・・・