未製作のキットから、1980年に発売されたオオタキ製の、セドリックカスタムデラックスです。

地味な普通のセダンのキットで、当時はスーパーカーブームが下火になっていたとは言え、

クルマのプラモデルは、スポーティーな車種や最高級グレードが製品化されるのが常識で、

この様な社有車や公用車向けのセダンを、キット化するのは異例中の異例な事でした。

もっとも、国産プラモデルの初期にはセダンは勿論、実用車までキット化されていましたが、

その当時は車種も少なく、他のジャンルでも様々な類のキットがあった為、その一環だったと

見るべきで、1980年代のプラモデル業界の話とは、また違った事情だったと言えます。

 

では何故この様な車種をキットで出したのか、それはこのシリーズ中にタクシーのキットを

加える事になっていた為で、これは面白い企画として、業界的には話題になっていました。

しかしタクシーでも、当時はキット化する事は冒険であり、結局売上は伸び悩んでしまいます。

今でこそコアなマニアが表立って来た為、この様な車種をモデル化しても、そこそこ売れる

マーケットはあるのですが、結局不人気のキットとして、長年売れ残ってしまう事になります。

 

この個体もしかり、売れ残りを超破格で購入した物で、実際のところ組み立てた完成品が3台

あったので、後年再度購入し、そのままの状態で保存してきた、全くの新品未開封品です。

手元にあった完成品は、阪神淡路大震災の時に、ケースが転落して下敷きになって破損し、

その後部品を寄せ集めて、カスタムデラックスの個人タクシー仕様として復旧しましたが、

ノーマル車をもう一度組み立てたくなり、既に絶版でしたが、まだ売れ残りがプラモデル店の

店頭を探せば残っていた頃だったので、かなりの数を安値で買い集めました。

 

しかし15年程前に、このキットの絶版価格が急に高騰し、カープラモのマニアが血眼になって

探していると聞き驚く事になりますが、それは1980年代のあの刑事ドラマの人気の再燃で、

覆面パトカーとして活躍していた、このクルマにもスポットが浴びたからに違いありません。

既にメーカーのオオタキも廃業した後の話とあって、価格はうなぎ上りに上昇して行きました。

考えれば初回放送されていた当時、このキットも普通に売られていたのですが、脇役程度の

覆面パトカー等に興味を抱く者は誰も居なかったという事で、何だか皮肉に感じます。

 

そして現代版のキットがアオシマから発売され、このキットの絶版価格も落ち着くのですが、

それでも当時物の程良さは捨てがたく、その思いからか新しいキットに何故か興味が沸かず

もし組み立てるとしたら、この当時物を用いて、1980年代をカタチにしたいと思っています。

 

1980年発売 発売当時価格1,000円