魔戦見聞録 

これは、帝国とかいう大国家の、愚かしい戦乱についてまとめたものである。          我らが自由都市同盟では、こんなことは起こり得ない。力があり、そしてタブーやら何やらを抱えているが故の戦いだろう。正直、この書を記しているだけでも、彼らの愚かさに呆れ果ててしまった。まったく、酒が進まない。もっとうまい話でもないものか。しかしまあ、あの戦いを見てきたからには、記していかなければならないのだろうか・・・。自分が見て、民から聞いたことを。

序章
聖刻歴950年、帝国の最高クラスの技術者「アンドラス・ワグナー」率いて、革命組織「グラップラーファウスト」を密かに結成、それと同時に、以前自分用の操兵を作り上げ冒険者としてこの国を出て行った、アンドラス同等の技術者「ストラス・ワグナー」が、特殊装甲をつけて兵器として扱えるようにした魔獣を引き連れ、兄であるアンドラスに加勢した。
彼らの目的は、自分たちによる国の支配、そして科学の前進的導入。馬鹿馬鹿しい。それに興味を持った者は彼らのもとに集まり、クーデターを起こして国の根幹を勝ち取るのに十分な兵力の調達に成功した。「グラップラーファウスト」のメンバーは主に操兵の技術者が多かったが、アンドラスが改造やら何やらで事前に確保しておいたのだろう、操兵の数はかなりあった。また、科学がタブーだとかどうでもよく、ただ軍事力の強化を望む者の心も掴んだ。アンドラスの話術の巧みさが垣間見える。
一方で、帝国の幹部たちは、この事態に迅速に対処できなかった。情けない話だ。というより、アンドラスの実力もさるものだったのだと言えるかもしれない。このクーデターが始まる直前、その国では国営の競技大会があったらしく、それの後始末に追われていたんだろう。なんだったか、○○ピピックだっけ・・・。実際自分も見てきたのだが、なんとまあ、たいそうなものだった。操兵を大量に持ち出して、乱闘をするんだそうだ。かといって死傷者はあまり出ないという。聖王国だったかな?あの国との戦いもこれで決着をつければいいのに。
まあそんなこんなで、ワグナー兄弟たちの「革命戦争」が始まった。とは言っても所詮は内戦にすぎないのだが・・・。


第1章~帝都動乱

ここは帝国の王宮―かなりの数の人間、操兵が一斉に消えた翌朝のことだ。
 夜のうちに脱走がなされたのだろうか。しかし、何のために?我が国は富も軍力も十分にある。そんな国から脱走する意味などあるのか?皇帝と国家の重役たちが緊急会議をしている。 そんな矢先、一通の手紙が来た、という知らせが。おそらく昨夜のことについてだろう。これで真相に近づくはず・・・。

「君たち本当にこの国を強くしたいのかい? 軍事力を高めたいのなら、タブーなんて捨ててしまえばいのに。 そんなものを捨てきれずにいるから、聖王国サンの侵略もままならない。 もういっそ―」

皇帝は紙を破り捨てた。これ以上は見たくもなかった。何が「タブーなど捨てろ」だ。                                  「科学には触れない」、これは代々受け継がれてきた儀礼のようなものなのだ。 そう簡単に手放せるものか。 しかし、皇帝はふと思った。一体誰がこんなモノを送ったのか?気になったので本文は見ないように手紙に目を通した。 
 
「アンドラス・ワグナー」

この文字を見た瞬間、彼は青ざめた。そしてただ一言、「おのれッッッ!!」
 我が国のトップの技術者が出て行ったというのか! あってはならん。こんなことはあってはならんのだ・・・!彼は地団駄を踏み、傍にあったグラスを投げつけた。その直後―

「バァァン!!!」

彼の目の前に爆炎が上がった。部屋が大破した。 何のことかさっぱり分からず、ただその状況に腰を抜かした。-鳥なのか、機械なのか・・・?はたまた古操兵の復活か?      

空を舞う鳥のような「何か」が、こちらを睨む。背中には魔導砲らしきものがある。

王宮は完全にパニックとなった。この「何か」を見た者は恐怖に怯え、逃げ出し、最早政治などままならない。皇帝は皆に避難命令を出し、自分も命からがら部屋から逃げ出した。廊下なら敵にも見られまい。 しかしこの状況、どう対処すればいいのか・・・。負傷者も出てしまった。
 操兵隊を出すか?しかし一般兵ではこんなものには太刀打ちできそうにない。隊長クラスの者を連れてくるか。どうするか・・・。そんなことを考えていても時間が過ぎるばかり、このままでは王宮全体がボロボロになってしまう・・・。
 まさにその時―
黒く、そして金の光を纏う巨人が現れ、王宮の屋根伝いにその「何か」へと飛びかかった。
「まったく、ウチの兵はどうなっている・・・。」
不愛想な声とともに、その巨人、いや、操兵は「何か」の魔導砲に一閃を浴びせた。しかし相手は空中戦が可能なもの。当然、こちらの方が不利である。            翼をはためかせ、振り回されて、激しく抵抗される。不利にもほどがある。その操兵は、なんとか背中の武装を左手に持ち、そのカギヅメの部分を魔導砲に突き立て、右手の片手剣の向きを何とかして調整する。 反撃の機会は来るのか。

「ぐっっっ!!」 
 剣を振り上げてあと少しで翼をやる、というところで空中で振り払われ、地へと落ちた。

疲れからか、その操兵のパイロットは数分間気絶、気が付いたときには複数の操兵によって運ばれていた。
「被害状況は」「会議室がやられた。皇帝たちが会議していた」「・・・なに!? 皇帝ご本人はどうなんだ・・?」 そんな会話を聞きながらも、回復した意識は未だ朦朧としている。
ひとまず、戦いは終わったようだ。


彼の名は「ジン・シュヴァルツ」、暗黒騎士だ。 そして彼の操兵は「シュヴァルツェスケーニッヒ」、いわゆる「黒き王」だ。