剣道と居合道とは極めて密接な関係があり、居合における抜刀や納刀は勿論、刃筋、気魄その他の手の内などは、剣道人としても参考となることが多いはずである。また、普通の人々は剣道と居合とは一体のものであり、剣道人は当然居合を知っていると思っている様である。これは、剣道形を見ても分かるように、剣道はもともと刀を扱う武道から発展したものであるからである。
居合には、剣道とは違い色々な流派があり、それぞれの本数も多いことから、とても面白みがある。しかし、その道へ入るとしてもひとつひとつそれを極めて行くことは難しく、また時間的にも問題がある。そこで全日本剣道連盟は居合道の基本的なもの、技としても各派の基本的なものを抜き出し、これを総合して、いやしくも剣道人ならば、少なくともこの程度のことは知っている。そして抜くことが出来るという様にすることは、本人にとってもまた好ましいことことであり、特に剣道の高段者には指導するという立場からも必要と思われる。ちなみに、居合をやらない剣道の高段者に「何故居合をやらぬ」と聞くと、「膝が悪いから」などと言う者がいるが、それでは剣道は膝が悪くても出来るのであるのか疑問を抱く。ましては踏み込んで打突したり、体当たりしたりする剣道の方が体力も必要であろうし、膝にも負担が掛かることは間違いない。全日本剣道連盟が居合を制定した趣旨を理解して、よくよく考えてほしいものである。
