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今回の個展作品についてのコメントです。
パンフレットまたは東邦画廊HPからもご覧頂けます。

「森で迷う」                            高橋克之

 今回のシリーズは、千葉成夫さんがよく言われる「地と図」というものを意識した絵づくりをしてみました。具体的には、地(背景)と図(素材)をより明快に描き分ける、ということです。
 図を描く上で参考にしたのは、「木目」です。その木目をもとにイメージして描いたのは、「植物や木」です。それら植物や木の中に、いつものように人を描き加え、「森で迷う」といった感じを出すように描きあげました。「森で迷う」とした理由に、次のような経験をしたことがあるような気がします。

2年ほど前、夕方、山の中にある森に入りました。
かなり大きな森で、分かれ道がいくつもありました。
地図は見ていなかったので、どのあたりを歩いているのか分からなくなっていきました。
迷いつつも歩き続けていると、遠く下の方に沼を見つけました。
私は、沼の森が大好きなのです。
それで沼への道を探し、そしてかろうじて道と呼べるほどの細い道を見つけ、急な下り坂を、一歩一歩慎重に近づいていきました。
その途中、突然、足下に蛇のようなものがいることに気がつきました。
よく見ると、やはり蛇でした。
私は、蛇をあまり好きではありません。
それで蛇を刺激しないように後ずさり、そして迂回し、ようやく沼のほとりに着きました。
そこには、ちょっとした広さの砂場がありました。
砂場の端にはとても太い木がありました。
その太い木の陰は草むらで、その中に黒いビニルボートがありました。
ボートに乗り、沼の奥まで行ってみるのもいいなと思いました。
それでボートを砂場まで動かし、そして水面に押し出しました。
しかしまもなく、ボートは沈み始めました。
「やはりそうか」と思いました。
辺りは暗くなってきました。
とりあえず両手を合わせて合掌し、来た道を戻ることにしました。
元の道までたどりつき、それからさらに森の奥へ歩いていきました。
まもなくすると、大きな白い花がいくつもありました。
その花からは、濃密なにおいが放出されているようでした。
花の中を見ていると、黒い生き物が出てきました。
それは突然動きを止めました。
何か考え込んでいるようでした。
しばらくすると、また花の中に入っていきました。
しっとりと雨が降り始めました。


最近印象に残ったこと
職場の授業で沖縄を舞台とした生徒のCG作品
繊細さや大胆さやユーモアなどいろいろあって素晴らしい