切ない想いの残滓とともに


目を醒ます



・・私、今、泣いてた?


 


彼が他の誰かを想っている・・・



そんなイメージが


ほんとうにあったことみたいな


現実感をもって


なんどもなんども


頭の中で繰り返される




何でこんな夢・・




ざわつく心も知らずに


隣で寝息をたてる彼



そおっと腕の中へ


もぐりこむ




ぎゅうーっと抱きしめられて、


そしてちょっと安心する



変なの


寝てるはずなのに、


どうしてそんな力が出るんだろ




彼のにおいに包まれて、


もういちど目を閉じる




朝まであとすこしだけ





ファン心理は

ときに妄執を生む。


ファンを名乗るとき、

彼らが愛でているのは

自分自身で作り上げた「私」の形。


彼らの物語の中に存在する、

fictionとしての私。


決して現実の私じゃない。


彼らの求めているものは

偶像(まさにアイドルidol)なのだ。


だから、生身の私が

彼らにとっての「私」像の範疇から外れたとき、

一瞬にしてそれは起こる。


失望、否定、非難、悪意。

あらゆるマイナスの感情が

容赦なく降り注ぐ。



実体を伴わないfragileな偶像は

ひとたびこわれたら

二度と元には戻らないのだ。




いつもこっち見てこそこそしてたでしょ。

見てますって感じでずっと見てたよね。


だから、呼びとめられたときも驚かなかった。



「僕ら、ファンなんです」


ファンって・・





そういうことなら、わたくしも。



ゼミ。

コの字型に座った教室。


視線には気づかぬふりで。


シャープペンをもてあそんで

そして芯が指にささって、

痛がってみせる。

ちょっぴり天然キャラの演出。


ウケてるし。

他の「ファン仲間」に報告してるし。


そう、せっかくのご厚意に、

ファンサービスは不可欠なのです。




駆け引き。

どう見せるかの計算。


このくらい余裕がある時の方が、

女の子はかわいく見えてるのかもしれないね。