不思議なことがあった。
いつものように重い足を引き摺りながら、通勤電車へ乗り込むと
西村さんの「夢魔去りぬ」を開いた。
始発列車で必ず座れるため、貴重な読書時間となっている。
いつの間にか眠ってしまったらしく、乗り換え駅の1つ前で覚醒する。
そして電車から降りるとすぐとその違和感に気付いた。
「鞄が重い」
それこそ鉛でも叩き込まれたように、ずっしりと重く
唯でさえ思い足取りを一層重くさせてくる。
「なんとも面妖な」
鞄を開けて中身を確認するも、当然乗車時と変化はない。
「そんなに行きたくねえんだったら、信濃路行ったらいいじゃねえか。何が会社、だ」
と声が聞こえた気がする。
「いやいや西村さん、マンボウだから24営業はしてないですよきっと」
そんな言い訳をしながら、僕は相変わらずの平凡な毎日にしがみ付いている。
「夢魔はこの希望のない世界のことなんじゃないか知らん?」
「明日は休みだから昼から信濃路でも行こうかな」
そんなことを考えつつ、収容所への行進の列に加わった。



