大門剛明著『不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳』を読みました。
違法捜査で冤罪を生んだと疑われたまま亡くなった父。
遺児2人は別々の家に引き取られ、やがて兄・川上祐介は刑事に、弟・唐沢真佐人は検事になっていた。
21年ぶりに再会した2人は事あるごとに対立するが、異なる視点が合わさり、日々起こる事件の真相を明らかにしていく。
小説は全5章で、ドラマでは「第1章 偶然と必然」「第4章 右と左」「第5章 発火点」の事件が描かれていました。
第1章と第5章は概ね原作通りで、第4章は改変されていましたが、上手く繋げていて良くできた脚本だったと思います。
しかし、ドラマの主人公の人物設定がいけません。
なぜ川上祐介(田中圭)をあんな直情型の人物にしてしまったのでしょう?
原作小説では、30歳過ぎの新米刑事として先輩たちの捜査手法や取り調べから良いところを取り入れて成長していく極めて自制心のある人物でした。
1度だけ被疑者を殴りつける寸前で手が止まる場面がありますが、「俺は何をしているんだ。」とすぐに気付きます。
これは1度だけだからこそ生きるのです。
祐介がすぐ感情的になって違法捜査をしかねない人物では、違法捜査で冤罪を作ることを父の名を冠して「大八木捜査法」と揶揄されているという小説の根幹部分が意味を成さなくなると思います。