RayflowerOpen Mind2021.12.07@東京キネマ倶楽部
Rayflowerのライブに行ってきました。
結成10周年を迎えたRayflowerも、
コロナ禍において
活動を制限されていた。
見てもらえてこそ音楽、
聴いてもらえてこそ音楽と、
日頃からオーディエンスの存在を
熱く称えてくれていた彼ら。
アコースティックを含めた
無観客ライブ配信を重ねては、
集える日が来ることを願い続けていた。
会場には整然と椅子が並べられていた。
収容人数はいつもよりずっと少ない。
チケットが取れなかった人もいただろう。
この日来れなかった人達のために、
定点カメラによる無料同時配信が行われた。
映像は無事それぞれの場所へ中継され、
来れなかった花キュー※とも
感動を共有できた。
※Rayflowerのファンの名称【花キューピッド】の略称
新型コロナウィルス流行の初期に
ライブハウスでクラスターが
認定されてから、
音楽を楽しむ場所は厳しく制限され、
著しく奪われていった。
ヒトの歴史は
感染症との闘いの歴史と言われる。
落ち込む経済が気がかりではあったが、
疲れていたわたしには
他者との接触を断つことは苦でなく、
寧ろ有り難かった。
配信ライブは至極退屈であったが、
有観客のライブが増え始めても
心は動かなかった。
ただRayflowerなら、適切な時期に
適切な場所でライブをすると
思っていた。
わたしの席は2階中央にあった。
2階席は着席して観覧との
注意書きがあるのだが、
メンバーがステージに現れると
1階席の観客が立ち上がり、
それを見て2階席の観客も
立ち上がっていった。
だけど誰も咎められなかった。
わたしは初めから
座って見ると決めていた。
立つとステージから
遠ざかってしまう。
吹き抜けを活かした
3層構造の会場は
オペラハウスのようで、
今日はRayflowerを
俯瞰する新鮮さを
楽しみたい。
発声は禁じられている。
自分のスペースから出ることも、
空気が動くような観覧方法も。
メンバーが揃っても、歓声はない。
ただ拍手だけが続く、
その温かさ。
拍手はいつまでも鳴り止まず、
笑顔で咲き乱れるような
とても温かいものだ。
それを浴びるというよりも、
包まれるメンバー。
言葉なんて必要ないという台詞は
本当だったんだ。
液晶越しだった視界は今
こうして取り除かれ、
念願の対面を果たした。
メンバーは有観客のステージを
経験していたが、
ここまでの規模は全員が
初めてだと言った。
Rayflowerが活動を休止している間、
メンバーはそれぞれの現場で活動していた。
来る日も来る日もレコーディング。
ライブができるようになったら、
自分のバンドやセッションでの
配信を開始。
国や自治体の要請が
少しずつ緩和されていき、
漸く観客を入れてのライブが
可能になるなか、
もうRayflowerは必要でなくなりはしないか?
そんなことを少しだけ思った。
彼らにとってRayflowerは
帰る場所なのか、
それとも出かける場所なのか。
だけどそんな考えは必要なかったと、
この公演を見て安堵したのだ。
どちらでもいいし、
どちらでもあると。
止まない拍手が温かい。
まるで体温のような、心地よい温かさ。
眩しそうにフロアを見渡して、
感無量の表情を浮かべるメンバーが見える。
求め続けた光景がここにあることを
お互いに実感した瞬間だろう。
思いを伝えようと、
皆、精一杯拍手を打ち続ける。
“ここにある想いがステージまで届いてほしい”
胸が締め付けられるようだった。
これが再会。
2階席中央というのは、音響も申し分ない。
すべての音がバランスよく届く。
首を動かさなくても全員が見える。
真紅だと思っていた背景の垂れ幕は、
この日は黒。
曲目は今年7月に発表された、
音楽活動10周年を記念した
ベストアルバム
『~One Side & One Side~』を中心に
構成されていた。
ちなみにこのアルバムは、
ツアーを重ねて新たに得た
解釈やアプローチをもって
アレンジを加えたものを、
全曲再レコーディングされている。
本当に素晴らしいステージだった。
音の波動が眼に肌に髪に懐かしい。
それでいて解釈を違えた演奏に、
『楽曲達の成長』を感じ取れる。
1曲目は、
彼らの世界へ招き入れるあの曲。
そしてタオルを回したい曲へと続いた。
キーボードから始まる曲では、
都さんの極上ソロが聴けた。
そして歌始まりの曲を経て、
最初のMCに入った。
中盤はRayflowerを魅せるセクション。
幅広い音楽性を有する彼らは、
舞台をいろんな色に染め上げる。
一連の世界を繋ぐ間、拍手はせず、
ただ魅入った。
YUKIさんがリザード君を背負い、
エレアコを抱く楽曲がある。
あぁ、こうやって持ち替えてたんだよなぁ。
そんな瞬間も苦労なく見れる。
2年ぶりのあのシャウトに心が震える。
そして希望に満ち溢れた曲に
勇気づけられたところで、
長めのMCに入った。
ここは全員で雑談する予定だったが、
いつものように田澤くんが一人一人に
「何してた?」と聞く流れに落ち着き、
他愛ないトークが繰り広げられる。
YUKIさんは、演奏後に返ってくるのが
歓声でなく拍手であることに
新鮮さを感じていた。
「クラシックコンサートみたい」
「俺らライブハウスで歓声を聴いて
育っているから」
そう田澤くんも言う。
Sakuraさんは挙手し
「短パン辞めました」と報告した。
裸足でキックを
踏んでいた時期もある
Sakuraさんは、
ドラムの叩きやすさを追求した結果
靴を履くようになり、
最終的に
地下足袋に行き着いたそうだ。
しかし地下足袋に短パンでは
何を叩いても
祭り囃子になってしまうため
肌の露出を押さえた出で立ちに。
「キックの感じが違うと思った」
と田澤くんが言うと、
Sakuraさんは「そう?」と言って
笑顔を浮かべた。
そして帽子を差し出した。
最初のセクションで被っていた、
警官の制帽を思わせる黒いキャップ。
Rayflowerの初ライブの時に
着けていたもの、
と田澤くんが言うと、
それが
「家を出る時に掛かっていた」
と答える。
「他に被るところがない」
と言うのは照れ隠しで、
最高のメンバーが揃った喜びに沸いた
結成当時を思い出されたはず。
デビューから本日に至る新旧を
体一つで表したSakuraさんを、
田澤くんは
『ひとりRayflower歴史!』
と賞賛した。
IKUOさんは、
「やっと自分のバンドで
有観客のライブができた」
と喜ぶ。
これまでフュージョン寄りの活動だったから、
体力的に心配だったと語った。
それで先程の、
勇気をもらえるミディアムナンバー、
『Words Of The Wise Man~時の贈り物~』
を演奏中に
人生で初めて指が攣ったと言った。
「遅い曲で??」
激しい曲で攣ると思いきや。
「でもゆっくりの曲だから
どうにか弾けてた」
と攣った右手指でのプレイを
再現してみせた。
ひぇー
都さんは、
メインキーボードを正面に向けて設置し、
客席と向かい合って演奏していた。
「もう何回も有観客での
ステージをやっているけど、
こんなにビシャビシャになったことない」
と興奮している。
「汗で?」と確認する田澤くんが
ちょっとツボ。
そして、客席を向いて弾いていると、
みんなの表情が見えていいと言った。
いつも都さんは
Sakuraさんの方を向いて弾いていて、
鍵盤を叩きながら脚を後方に蹴り上げたり、
大きく跳ねたりしているのが確認できた。
弾きながらヘドバンもするし、
素早くショルダーキーボードに持ち変えて、
フロアを煽りに来たりもする。
「俺こんなに動く人初めて見た」
と田澤くんは、
都さんのプレイスタイルに驚いた過去を
暴露した。
「普通キーボードの人ってこんなに動かへん」
と横向きに立ち、キーボードを弾きながら
大きく跳ねる都さんを再現する。
思わず笑っちゃう花キュー
わたしも初めて見た
はしゃぐメンバーを見ていて嬉しくなる。
以前の
「今日の現場は喋らなくちゃいけないのか・・・」
と朝からブルーになっていた
SakuraさんやIKUOさんを想うと、
こんなに自発的に
バンバン面白いことを喋っていて
すごいのだ。
「こんなに喋らされるのRayflowerくらい」
だって、
(朝に準備してて思い出し)
「あー今日、喋るのか…」
ってなるって、言ってたのに
恒例の大MCで
すっかりツアー中のようなムードに
帰ってしまった。
1階席は熱気も相当上がっている。
ライブ配信では
ソーシャルディスタンスにより
メンバー間の距離が保たれていた
『It's a beautiful day』や『ユースフルハイ』で、
メンバーが肩を組み並ぶ姿が見られる。
それが本当に夢のような景色だった。
配信では聴き取れない領域の音、
笑顔のメンバー、
返ってくるメンバーの反応、
伝わるステージの温度。
最後のMCで、
メンバーが一言ずつ話す。
最初に話し始めたYUKIさんは、
不自然に顔をぐるんと下に向けるような
一瞬前に覆いかぶさるような動作をし、
何かをごまかすように話を終えた。
田澤くんが声をかけると、
「溢れるものが…」とだけ答える。
それを受けて田澤くんが話す間、
YUKIさんはステージ後方で
ギターアンプの上に置いてある
タオルを手に取り
そっと頬を拭いた。
Sakuraさんは、
「答え合わせができた」と言った。
レコーディングは
ドラムから開始するのが一般的で、
楽曲の土台を組み立てる
Sakuraさんから
着手する。
ベストアルバムのドラムレコーディングは
昨年の3月から少しずつ進められ、
同年8月初めに最後の曲を録り終えている。
Sakuraさんの手を離れると、
ベース、ギター、キーボードが重ねられていき
最後に乗るのがボーカル。
楽曲達に後のメンバーの手が加えられ、
完成し、
各地の花キューのもとに届き、
どんなレスポンスを連れて
ライブ会場に戻ってくるのか。
リアレンジ/リレコーディング
という形態をとった今作で、
Sakuraさんはこの光景を、制作当初から
思い描いていたことだろう。
コロナ禍で
レコーディングさえままならぬ中、
発売日の延期すら経て
ずっと眠っていたその答えが、
芳醇なワインのように
醸成されていたなら、最高だ。
どうしても年内にライブをしたくて、
場所はどこでもいいから
とにかくライブをしたくて、
「無理を言って会場を押さえてもらった」
と、
冒頭で田澤くんは力強く語っていた。
そんなライブだったんだ、今日は。
最後の曲は
『花束~from rose with love~』。
この曲はいつでもすごく熱い。
5人の出す音の一つ一つが熱くて熱くて、
火傷しそうなほどの熱量を放っている。
田澤くんの動きも激しさを増していくなかで、
顔を不自然に下に向ける仕草があったのが
気になる。
終演後に、1階前列で見ていた
花キュー仲間のさんが、
彼の目が真っ赤だったことを教えてくれた。
なのに寸分も狂わず歌い上げたんだ。
すごいな。
歓声がなくてもあんなに盛り上がれる??
あんなに大きな声を欲しがっていた
Rayflowerがだよ。
観客は最後の最後まで拍手で通した。
田澤くんが「オン【パート名】!」と
メンバーを紹介するところでは、
【パート名】の後に続くメンバーの名前を
みんな心の中で呼んでいたはず。
終演。
5人が並んで
いつものように固く手をつなぎ、
深々と客席にお辞儀をする。
そして名残惜しそうに何度も会場を見渡して
ステージを後にした。
袖に捌けるのに、
IKUOさんだけ階段を昇り始める。
あっ、その階段は
サブステージにつながっているんだけど…
メインステージよりも高い位置に設置された
バルコニーのような見せ場に着くと、
笑顔でドレープの効いた
絞り幕の奥へ消えていった。
…えっ、わざと??
いつかのライブでは、このサブステージに
メンバーが一人ずつ上がって
踊ってくれたっけ。
今日は誰も上がらないから、
ちょっと寂しかったんだ。
だから嬉しかったのだけど、
あの感動の場面を経て
一人だけそっちを行くなんて、
すごくない?
やっぱり持ってる人なんだなぁ
と思った。
ライブハウスに来ると、
頭上にはいつもミラーボールがあった。
どの会場に行っても
それは必ず天井に備え付けられ、
存在をアピールすることなく
ライブの一部始終を見守っていた。
この日もやっぱりそうだった。
ミラーボールには、
作った人や設置する人達の願いが
込められている気がする。
私は恋愛脳じゃないからわかんなかったんだけど、今読んでる『悪役令嬢と鬼畜騎士』という小説で、愛し合う二人の再会の辺りを今読んでて、「あぁそれってきっとこういう感覚だったんだ」と実感できるような熱い幕開けのライブだった。2年ぶりの有観客。東京キネマ倶楽部。
— リリィ𓅪 (@lilytune) December 7, 2021
終演後、ついこんなツイートをしてしまった。
久し振りの感触を確かめ合ううちに夢中になっていく、
その過程がまるで逢瀬の叶った恋人同士のようで。
都 啓一@Rockparty71Rayflower配信ライブ!リモフラVo.1終了しました! 今年最後のレイフラのライブ! アコースティック楽しかったです! またやりたいですね😊 今年本当にありがとうございました! 来年は花キューの皆さんと同じ空間を作れたら… https://t.co/wIyMvBOPR1
2020年12月09日 23:07
去年の都さんのツイート。
やはり有言実行の人でした。
素晴らしい時間をありがとうございました。
会えてうれしかったです。
それと、
10周年おめでとうございます。