翼骸骨v翼


つづき。


早起きして海に行くけど、
 
一部に光が差すだけで、雲が多くて薄暗かった。

この穏やかな海の名は美保湾だと昨日知った。

今日は小雨が来そうだな。

この3日間すごく晴れてよかった。



朝食の前に温泉に入る。

いいお湯なのに、温泉は空いていた。

浸かりすぎてはいけないのでほどほどに。

体が温まったら、窓辺に腰かけて脚だけ浸ける。



朝食は大きな畳の広間で、
 
部屋ごとに席が決まっていた。

わたしの他に一人おばあさんが来ているだけ。

目の前には小さなステージがあった。

ここで幾多の宴会芸が披露されてきたことだろう。

ステージ両端には年季の入った木製のスピーカー。

献立は和食。
 
サラダは食べられる量を自分でお皿に取る。



部屋に戻って荷物をまとめる。

チェックアウトは10時、それまで少し横になる。

行きは思ったよりも短く感じたけど、
 
帰りは長いことだろう。

それでももう1か所だけ、新しい土地と出会いたい。

できれば1時間以内に移動ができるところ。

ここで重要な神社の存在を思い出す。

何気なくパンフレットを見ていた時にふと目に留まった。

結構格式の高い神社だった気がするんだけど、

確かこの辺りじゃなかったっけ。

出雲大社だけじゃ片詣りになるとかいう。



それが美保神社だった。

全国えびす社3385社の総本宮とある。

今まで移動してきた中で米子市からが一番近く、

思い付きだったけど、
 
最終日を飾るのにふさわしい選択だと思った。

T.M.Revolutionが米子を選んだことを奇跡に思った。

そうでなければここには来なかったから。



しかしノーマークだったので、まったく知識がない。

とりあえず駐車場の情報が欲しい。

ネット検索を読み漁るうちにあることがわかる。

どうやら美保神社参拝に当たっては、

いか焼き屋さんのおばさんたちと
 
いか焼きをめぐる攻防戦があるらしい。

どの情報もなんか壮絶な印象を受ける。

でも、無料駐車場に駐車すれば
 
回避できるということであった。



つまり、ほとんどの人は無料駐車場に
 
気づかず通過してしまい、

神社の参道前に駐車する。

するとそこに駐車することを交換条件に、

待ち受けるいか焼きのおばさんたちから
 
いか焼きを買うという図式であるよう。



参道の前にお土産屋さんが立ち並んでいるみたいね。

そのスペースにも無料で駐車はできるけど、

いか焼きを買う義務はないということは
 
意外と知られていないみたいで、

これまで誰も教えてくれなかったと
 
複数の人が嘆いていた。

ショック

えっと・・・・・・

あたしそういうのめっちゃ苦手やで・・・・・・



ただどれも古い情報で、
 
最新のものがなかったのが気になるけど、

いかを買う覚悟で向かう。



チェックアウトして美保関を目指す。
 
R431を道なりに北上。

ここから25.3km、所要時間40分。

11時前について、12時過ぎにそこを出れたら、

18時頃に三重に着けるな。



米子空港の近くを通るからか、広くて大きな道路。

交通量は多くない。周辺は工場が多いな。

水木しげる記念館や水木しげるロードの標識が出てくる。

ここが境港^-^

存在は知っていたけど、
 
位置関係までは把握してなかった。

目玉おやじピース

興味があるけど、今日は寄り道できないね。



境水道大橋を渡る。

もともとは有料道路だったのがうなずける。

絵になるいい造り。長さ709m、高さ40mの立派な大橋で、

海がずっと下に見えて、通過するのが楽しかった。

高さ40mって、ウルトラマンの身長と同じだよ。



海を渡ったら島根県だった。

島根にまた戻ってきた^-^



水産製造の街と思われた境港から、
 
海を渡れば美保関は漁業の街。

R2を走行するうちに、
 
家はまばらになってくる。

道は1本しかないので、
 
間違えることはないはず。



ナビに従い駐車場へ到着。

郵便局の裏に20台ほど駐車できるスペースがあった。

おそらくここが、人々が気付かず通過するという
 
例の無料駐車場。目の前は海。

付近は小さな魚港で、釣りをする人の姿も見られる。



そこから歩いて5分くらいで美保神社に着いた。

雨に降られそうで、傘を持参する。

人気のない通りで、
 
空き家と閉店している店舗がほとんど。

通りかかった小さなお社も、
 
どこかに引越したという貼り紙がある。

無料駐車場から続く道をまっすぐに進んで、
 
左に曲がれば鳥居。

右に曲がればその角はお土産屋さん。

でも閑散としていて人の気配はないので、
 
そのまま左に進む。

月曜日だし、天気も良くはないから、
 
こんな日はお休みかな。

それとも、
 
過疎化で当時の賑わいは影を潜めているのか。



鳥居の前に着いたのが11時。

鳥居は立て直すようで、
 
手前に新しい足場が用意されている。

厳かな感じがする佇まい。

そこでかつてないほどの鋭い眼光を感じる。

碧い目がわたしを捉えて離さない。

緊張が走る。

こわ!!

ここの狛犬、身体は石だけど、
 
眼球は青銅を嵌め込まれているようで
 
素材が異なる。

その目がどういう角度で見ても
 
わたしを鋭く凝視している。

阿形も吽形もどっちもいい勝負。

青銅の変色の加減のせいだと信じたい気持ち100パーセント

後付けの眼球って、
 
凝った造りで手が込んでて素晴らしい。

来たことを後悔するぐらいにこわいんだけど泣き

通り過ぎるまで緊張が解けない。

完全に通り過ぎても、
 
狛犬が振り返って肩越しに睨まないか
 
確認してしまった。



ほっとしたのもつかの間、

今度は手水舎にいる男性が、
 
いぶかしそうにわたしを見ている。

服装から神職の方ではないようなので、
 
地元のおじさんかと。

他にも別のポジションから
 
おばさんとおじさんの視線を感じる。

異物感半端ない。

神社に来てここまで疎外感を感じたのは初めて。

ちょっとお詣りに来ただけなのに。

ここの神さまとは相性が悪いのかもしれない。



緊張しつつ手水舎で心身を清める。

そこにはラミネート加工された
 
参拝用のパンフレットが数組用意されていた。

参拝の手順から、それぞれの由来、
 
撮影ポイントまで記載されていて、

丈夫でカラーで大きくて見やすい。

もしかしてあのおじさん、
 
これをわたしに知らせたかったのとか?

観光ボランティアかなんかの人?

(それとも単にわたしが挙動不審だっただけなのか)



せっかくなのでパンフレットに沿って忠実に参拝する。

神門には大きなしめ縄があって、

そのあたりに出雲大社との関わりを感じるな。

ここに祀られているのは、
 
大国主命の御妃神、三穂津姫命。

高天原から稲穂をもって降りてきて、
 
人々に食糧として配り広めた神さま。

そして大国主神の第一の御子神、事代主命。

出雲神話の国譲りで、
 
御父神から重要な判断を任された神さま。

えびす様とはこの神さまのこと。

えびす様って、
 
宝船に乗って釣竿と鯛を持って
 
ニコニコしている人だよねぇ。



出雲大社の神さまの妻と子を祀る神社だから、

出雲大社と一緒にお参りすると両詣りになって、
 
縁起がいいのだそう。



神さまが二人いるから、本殿も二つ。

同じ向きを向いて真横に並べた格好で、
 
大社造りを「装束の間」でつないだ特殊な造り。

美保造りとか比翼大社造りとか呼ばれている。

屋根の上の千木が性別を表しているのも確認できた。

本殿は国指定の重要文化財だった。



順路通りに一回りして拝殿に来ると、
 
ここにも小さな狛犬たちが・・・

あれっ? シーサー???(笑)

出迎えてくれた子たちと、
 
ずいぶん容貌が異なるではないの。

なにこの親しみ感^-^

さっきまで引き返そうと思うくらいに
 
ビビりまくったというのに^-^;



拝殿も立派だった。

そこには『福種銭』という
 
祈祷された10円玉が置かれていたので、

50円を納めて1ついただく。
 
この10円玉は「幸せの種」で、

自分のお金と一緒に使って日々を頑張れば、

廻りまわって大きな実りになって返ってくるんだって。



『福種銭』をいただいたらお詣りをすませる。

車の中に御朱印帳を置いてきたので、取りに戻った。

巫女さんは気さくで話しやすい人だったので安心した。



絵馬に願い事を書いたのだけど、
 
ここの絵馬は変わっていて、

釣り好きのえびす様にちなんで、
 
「釣り竿」につるすの。

絵馬には、鯛(えびす様の象徴)が
 
稲穂(三穂津姫命の象徴)を

くわえている絵が描かれていた。



長い紐の付いた絵馬と一緒に
 
40cmほどの細い竹の枝を渡されて
 
カピバラてなっていると、

巫女さんがやり方を教えてくれた。

 
 
 
絵馬に願い事を書いたら、
 
自分で絵馬の紐を竹の竿に結び付けるの。

竹の節の上から2つめぐらいに結ぶのがいいらしい。

絵馬をかけるところには
 
たくさんの竹竿からぶら下げられた絵馬が並んでいて、

そこにわたしも挿してきた。

絵馬に夢を書けば、
 
その人の夢を釣り上げてくれるんだって。

よろしくお願いしますaya



鳥居を出たところで、
 
地元民らしい若い派手なカップルとすれ違った。

どちらも二十歳前後だな。

女の子は茶髪のロングヘアにすらっとした長身。

超ミニスカートに、
 
SHOW-YAの寺田恵子さんがはいていそうな

切り込みだらけの黒いレギンスをはいていた。

男の子は小柄でやっぱり茶髪なんだけど、
 
美容師でもバンドマンでもなさそうな。

地元のヤンキーって感じで、

神社に来るのにそれかっていう派手ないで立ちだけど、

その年でこの神社にデートに来るのはいいなって思った。

その世代が求めるレジャー的な要素は皆無だもの。

わたしであんなに見られたんだから、
 
この子たちはどうなのって思ったけど、

地元の人なら、ここで結婚式とかするのだろうね。



鳥居を出て、来た道を帰る。



わたしが境内を出た時、
 
参拝客は私とさっきのカップルぐらいで、

やっぱりいか焼き屋さんは閑散としていた。

今日は予想外のところでドキドキを使ったな。



駐車場で12時のサイレンを聞く。



では、帰るとしますか。


つづく。




翼骸骨v翼




【美保神社】 松江市美保関町美保関608 参拝自由 駐車場無料

弓ヶ浜荘から美保神社まで25.3km、所要時間40分。