20年来の親友たちと会って話す内容には、

昔話と近況報告が主である。

既婚の友は未婚のあたしを心配してくれるのだが、

子どもを産まないのであれば、
 
結婚に強い意義を感じないというか。



あたしにとって結婚とは、ある時期までは、

ストリートチルドレンを作らないための
 
社会政策にすぎなかった。

さらに結婚は、女に強いられる
 
無償の家事労働・育児要員・体のいい介護要員と言う

性的役割分担の偏りを如実に強調させた。



そんな思いきり屈折していた
 
少女時代であったわけなので、

結婚を餌にされると
 
なんかいらいらしたものである。

なのでなんでみんながこぞって結婚したがるのか、
 
正直不思議であった。



知り合って間もない女性の友人にも
 
「結婚しないの?」と聞かれたけど、

話すと長くなりそうなので「しないと思う」
 
と答えておいた。

もう今さらいいような気もしていたので。

未婚の女性はあたしのまわりにも結構いるけど、

みなさんきれいだしやさしいし性格もいい。

お世辞ではない。



こないだひさしぶりに某外科のドクターに会った。

現代の晩婚化を嘆く一人である。

「君はまだ結婚しないの?
見たところ苗字は変わっていないみたいだけど」

とナース・ステーションでフツーに聞く。

他の職場だったらセクハラだと騒がれそうだけど。

今までナースには自分の患者さんで独身の人
(生活保護受給者とか高齢者とかの
通常お勧めしないチーム)

を薦めているのを見ていたので、

あたしにはその時自分に付いていた研修医
(ちゃんと26歳)を薦めてくれたところに

微かな愛情を感じた。

滅多に研修医を付けないから、
 
うれしかったのだろう。

「最近はできたもの勝ちなんでしょ?」と言って、

ホテルの予約までしてくれると言った。

お気持ちだけ頂戴しておいた。


 
婚活していた時期がある。

その時の思い出をひとつ。



ナースとは知らせずに参加した
 
お見合いパーティーみたいな席で、

「休みの日は何をしているんですか」と聞かれ、

「寝てます」と言ってしまい思いっきり引かれた。

その人は少しの間固まっていた。

ひどくぐうたらな人間に
 
思われてしまった瞬間であった。

夜勤明けが休みという図式を
 
この人が知る由もない。



以前にキムラさんに結婚について相談したとき、

婚期を2回逃していると言われた。

心当たりはと聞かれて浮かんできた。

大変後悔した人があったが、
 
かなり年が離れていたので、

自信がなくて、そこから逃げたのだった。

もっと人を信用してもよかった。



キムラさんには「ひとりで生きていける」って
 
太鼓判を押されたけど、

一生ひとりと言うのも、なんだかさみしい気はする。

ずっと歌っていればいいのに。

結婚したら歌は諦めないといけないと思っていたので、

逃げた経緯には
 
そのあたりの偏見も加担したわけだが。

そんなめんどくさい女、絶対いやだと思ったから。



女は家事をしてなんぼと思っていた。

父がそういう考え方をする人だったので。

それを押しつけられたら憎しみすら込み上げた。

なんせあたしは1日中絵を描いていたい子どもだったから、

家事の奴隷になんて絶対なりたくなかった。

母親の姿を見て、
 
主婦には絶対ならないって誓った、
 
変な子どもだった。

だからその当時の夢は叶えていると言えるんだけど。

そんな子どもが結婚願望を持つのは難しいから、

自分と似たような人を探す。



そういう人は、その道にいるから、

あたしもそこに行かなければ出会えない。

でも時間がかかりすぎたな。