ある日の早出勤務。

脳梗塞で寝たきりの患者さんの
 
朝食の食事介助についた時のこと。

朝食の調理は時間が限られるので、
 
レトルトの嚥下食が多いのね。

茶碗蒸しとかコーンクリームスープとかの嚥下食が、
 
使い捨てのプラ容器に入ってでてくる。
 
食べるときは、プラのふたをめくって開ける。



嚥下食のカップって頑丈なプラスチックだから、
 
固くて厚みがあるのね。

製造過程に加熱処理とかあるからね。

で、左手でアルミのふたを上に引っ張ろうとした瞬間に、

手元が狂ってスライドしたらしく、

カップの縁を固定していた右手の親指の腹をざっくり切った。

床にボトボトッて血が落ちた。

深く切れた。

そしてなかなか止まらない。



手の傷は、
 
体液と接触する機会の多い職種にとって、

致命的な感染源になり得る。

親指が使えないなんて、日常生活にも支障でまくり。

その日の夜、どうやってお風呂に入ったんだっけ。

簡単な調理はしたけど時間がかかった。

痛くて物がつかめない。

止血を促すためにも刺激は最低限で。

そんな親指が使えない暮らしは不便で。



「縫わないといけないんじゃないですか?!」

っていう後輩の言葉に、

「自力で治すわ!!!」

と必死で答え、
 
がんばって短期間で治した。



何をしたかって、肉とチーズを食べて、
 
たくさん寝たの。

昔から傷があると、睡魔が強く出るので。

映画『カリオストロの城』で、
 
瀕死の重傷を負ったルパンが

「血が足りねぇ」って肉やチーズを
 
大量に口に押し込んで、

あとは寝て治すシーンがあるの。

そのシーンが印象的でね。



傷がふさがってほっとした時、

これってヒント?!って思った。

もしかして血液量が増加したら、
 
声は出るのかしら。

あたしは生理中はまったくと言っていいほど
 
声がでないのだ。



全身を巡る血液量が減少すれば、

声帯への循環も悪くなる。

血液は優先されるべき臓器に多く送られるからね。

歌の先生も生理中は若干の声の出にくさを感じるそう。

でも症状の出方が極端すぎる。

あたしのはリアルに嗄声だもの。



『巡るものを意図的に増やせば問題は解決できるかも』

この負傷から一つの仮説が生まれた。



簡単に解剖生理を解説しよう。

①出血により体内のヘモグロビン(Hb)量が減少する。
②Hb↓を腎臓が感知して、
造血ホルモン・エリスロポエチンを産生する。
③エリスロポエチンの刺激により、
骨髄で赤血球の産生が促進される。
④Hb中のO2を運搬するための物質である
ヘムの構成要素として、
鉄分が利用される。

造血に必要な食べ物としてよく知られているのが、
タンパク質、脂質、ビタミンB1、ビタミンB2、鉄などを含む魚介類肉類
ビタミンB1やカルシウム、鉄、食物繊維を含む豆製品
ひじき、昆布、メカブ、スサビノリ、アサクサノリ等の海藻

・たんぱく質と鉄…血液の材料になる
・ビタミン類と銅…血液を作る働きを促す

血液の成分と役割
 ・赤血球…酸素の運搬
 ・白血球…免疫機能
 ・血小板…傷口の血を固めて出血を止める



前述でルパンが「血が足りねぇ」といったのは、

血肉の材料となるものが足りない。



鉄に注目。

ヘム鉄(肉類、魚介類、ex.レバー、赤身の魚肉、しじみ)と
非ヘム鉄(海藻、野菜、ex.ひじき、ほうれん草、小松菜、パセリ、豆製品)の
2種類があって、吸収率が異なる。


非ヘム鉄は吸収率が低いので、

ビタミンCと一緒に摂取して吸収率を上げないと、

そのまま老廃物として排泄される。


・もやしは安価でビタミンCが豊富なので使いやすそう。
・酢、香辛料、梅干しなどの刺激物も、
胃酸の分泌を高め、鉄の吸収をよくする。


造血に補助的に働く食材もあげとこう。

ビタミンB12と葉酸は正常な赤血球を作るために必要な栄養素。
・ビタミンB12(牛レバー、豚レバー、魚介類
貝類、卵黄、チーズ)
・葉酸(牛レバー、豚レバー、卵黄、納豆、ほうれん草、ブロッコリー)

海藻に特記すると、
・ワカメには鉄が豊富な上にカルシウムも含まれている。
→血液は骨髄で作られるので骨のケアも。
・メカブには、血液を作る主要な糖質がすべて含まれている。


注意事項
食事の前後のコーヒー、紅茶、緑茶などの
タンニンを多く含むものは、
鉄の吸収を阻害する。
インスタント食品や加工食品に含まれるリン酸も
鉄の吸収を押さえるので控える。


食べるものの選択で造血を促すことは可能。

しかし!造血への道にはまだまだ続きがあったよ!!



●摂取した栄養を血肉に変換する臓器…脾臓



以前、クォンタム・ゼロイドで
脾臓が弱いと指摘されたことがあるので
ちょっと気になる臓器。
母親との関係に何らかの問題のある人に多いらしい。


ここからは東洋医学の見解です。


<脾を傷めないために>

腹八分目を心掛ける
冷たいものの一気飲みを避ける
イライラ・カリカリ・ウツウツしない

造血にはメンタルケアも不可欠。
脾臓はとても傷付きやすい臓器なんだそうだ。



●血を大量に要求する臓器…脳と目

長時間のデスクワークや暗がりでの読書、車の運転は、
多量の血を消耗する。
脳を使う作業も、激しく血を消耗する。

血を消耗するって、なじみのない言葉だね。


赤血球の寿命は120日だと言われているんだけど、

その期間を縮めているってことだろう。



東洋医学では、
血液の足らない人のことを「血虚」という。

そういう人は夜更かしをしてはいけない。

夜に血液は作られるので、
夜更かしする人はそれだけで造血の機会をなくしている。

消耗するだけして、作らない。

結果、不足。



三交代するまでは、
生理だから歌えないなんてことなかったもの。



血虚の人は、生理中子宮に血液が集まると、

全体量が少ないため他の部分に支障が出る。



生理中に睡魔が強く出るのも、

傷ができた時と同様の反応が起きていると考えれば納得。

脳の酸素不足だわ。

赤血球の役割は全身へ酸素を運ぶことで、
運搬の際、両者は結合しているのね。

血が減るということは、酸素の供給量も減るんだ。

脳は多量の酸素をほしがる臓器なのだからなおさら。



見直すのは食材だけではなかったけど、

これで少しでも声が戻るといいなぁ。