個展の作品づくりはもう終盤に入ってきた。
あとひと月以上はあるけれど、もっと本格的な事務のことや配送関係、ディスプレイ関係に時間を割かれると思うと作品に取り掛かってばかりもいられない。
貴婦人シリーズ最強のものができそうな予感がある。頼む頼む頼む頼む自分!!!
古い布はいっそう好き。でも、とにかく布が好き。
古い布のあせた色、つくろい。
シルクの滑らかなとろみ、厚手の麻の心地のよい冷たさ…
それぞれに本当に好きでたまらない。
ガンディーはカディコットンのことを、「ただの布ではなく思想」だと言う。
そして青森の古い古い貧しい時代の文化、襤褸(ぼろ)。
ここ数年ぬいぐるみを作っていて、今再確認できたことも、わたしはぬいぐるみの姿形が好きというより、布でできているということが好きなのかもしれない、ということ。
たまたま好きになったものはくまの形をしていることが多かったけれど、
あの、布。
あの質感。あせた色。
個展に向けた製作と、FANTANIMAのことにも少し目を向けている今、自分が心から愛しているのは布なんだと改めて思った。
布と一言で言えばなんだか味気ない気もするけど。
あせた布、やぶれたレース、触れば溶けるように消えてしまうほど傷んだシルク。
ぼろうさよ、君はやっぱり間違ってなかった。
撮影場所乙女屋
この子はぼろうさ第一号。乙女屋さんの子。
ぬいぐるみでも、ショールでも、アクセサリーでも、なんでもよかったのかもしれない。
形の制約を設けることも自分にとっては挑戦的で楽しかった。
纏うことだって好きだし、ぬいぐるみは完全に愛している。
でも、そうやん、布。布やん。
布のことをすごく思ったのは、浅草にあるアミューズミュージアムの、襤褸の展示を見て、本当に本当に心を打たれたから。
六アイで見たときはとにかく感激したけれど、今回は確信した。
「あなたが涙を流す場所に気をつけなさい、そこに私がいます。そしてそこにあなたの宝物があります。」小説アルケミストより。
これよ!
ただまぁ、とにかく時代が違いすぎる。
こんなに便利な時代に生まれたわたしは、ひたすら感心することしかできない。
わたしは襤褸が心から好き。1つのものをいつまでも大切にする心ごと。
でも、ミニマリストには絶対になれないし。
なんかそういうのとは、また違う。
今、製作でよく使用している素材のひとつが段ボールであるけれど、それも、「廃材アート」みたいなつもりでは一切やってない。
何をどういうふうに愛し接するか。それはもう自由やから。
いいの。
壮大な空間演習とかは特別考えていないけれど、作品勝負でどんな空間になるのか楽しみにしていてください。(またハードルが…!!)
大西けい個展 虚構メルヘン
サイト青山