第1話『ふしぎノートの失踪』

 春の風がふきぬける午後、ユウタは図書室で本棚の整理をしていた。
 図書委員になって、はじめての仕事の日だ。

「こっちの棚、あいうえお順になってないよ」
 隣で作業していたアヤが、小さな声でつぶやいた。

「ほんとだ。……あ、これ何だ?」

 ユウタは、奥に押しこまれていた一冊の古いノートを見つけた。表紙はボロボロで、タイトルも書かれていない。

「見せて」
 アヤが近づいてくる。

 ページをめくると、そこには短い物語が書かれていた。

『かなしみをしまう引き出しの話』
 ――その内容は、ユウタが一週間前に友だちとケンカした出来事に、どこか重なっていた。

「これって……ただの物語じゃないよね?」
「なんかさ……オレの気持ち、読まれてるみたいだった」

 アヤは表紙をじっと見つめる。
「うっすら名前が書いてある。……“さとる”? 誰だろ」

「卒業生かな……?」

 その瞬間、ナガセ先生の声が響いた。
「おーい、もう帰りの時間だよ。戸締まりもしておくようにね」

 ふたりはあわててノートを棚に戻し、作業を終えた。

* * *

 次の日、ユウタはふしぎノートをもう一度読もうと、図書室の同じ棚を探した。

 ……ない。

 何度見直しても、ノートは影も形もなかった。

「昨日、たしかにここにあったのに……」

 アヤも顔をしかめる。
 その時、図書委員用のノートに気づいた。そこには小さな文字で、こう書かれていた。

『最終貸出:ナカジマ サトル』
 ――それ以外の記録は、消されたように真っ白だった。

「なんで……? サトルって、あの名前……」
「もしかして、このノート、もともと誰かの物だったのかな……?」

* * *

 放課後、ユウタはナガセ先生に聞いてみた。

「先生、“ふしぎノート”って知ってますか?」

「……そんなノート、知らないよ」
 先生は少し顔をこわばらせた。そして、机の引き出しに何かをしまいながら続けた。
「余計なことには、関わらないほうがいい」

 その言葉が気になったユウタとアヤ。
 ふたりは静かにうなずき合う。

「よし。明日、旧資料室のこと、調べてみよう」
「サトルのこともね」

 こうして、“ふしぎノート”をめぐる謎が、ゆっくりと動き出した――。


続き(第2話)もご希望があればすぐ書きますよ!
キャラの性格をもっと深くしたり、事件の雰囲気を変えたりもできますが、今の感じでどうでしょうか?