東日本大震災を契機に、日本国家は第二次世界大戦以後、最大の国家的危機を迎えた。福島原第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、女川原子力発電所、東海第二原子力発電所は程度の差こそあれ、地震、津波の被害を受けた。福島第一原発の全電源喪失による、事故状況は世界の人々が知ることになったが、東海第二原子力発電所も全電源喪失一歩手前まで来ていたことを東海村の村上達也村長がNPJのインタビューで答えている。村上村長は「防潮堤6.1メートル、津波到来5.4メートル。あと70センチ高ければ、福島第一原発と同様に全電源喪失に陥っていた。」と答えている。東海第二原発が全電源喪失に陥れば、場合によっては、水素爆発などにより放射能物質が大量に外部に漏れ、全村民が避難するというケースも考えられた。当然、福島原発1号機、3号機のような爆発が起きれば、首都圏は風向きよっては、より放射能が届いていたと考えられる。管総理が官邸からヘリコプターで福島原発へ向かう際にも影響が出て、ことの進展によっては、福島原発、東海第二を同時平行で対応せざるをえず、混乱が生じて、東京電力の職員を一時福島第二に退避させることを了解せざるを得ない事態になっていた可能性もある。



また福島第一原発の4号機は、3号機の爆発により、奇跡的に4号機の使用済みプールに水が流れ込み、空焚きになるのを防いだ。NRCは4号機の使用済み燃料は科学的に計算すると空になっているとしており、そうなれば原子委員会の近藤駿介委員長が作成した「「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」という最悪のケースへと進展して行った可能性もある。つまり、日本国家は存続できるかどうか、ギリギリのところまで追い込まれていたのである。そして、偶然性の連続と現場作業員の懸命な努力により最悪のケースは防げたことになる。

<東海村村長のインタビュー 質疑 NPJ>





<3月25日付の最悪のシナリオ「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」>
$六本木ヒルズ映像ジャーナリズム
(http://www.asahi-net.or.jp/~pn8r-fjsk/saiakusinario.pdf)



さらに、3.11前の日本では原子力ルネッサンスがテレビ新聞で唱われ、原子力発電所はCO2排出が少なく地球温暖化対策に効果的であること、エネルギー自給率(20%以下)が低く世界中で「資源獲得競争」が激化してきてることから原子力発電所の新設が必要であることが広く国民に認識されている状態であった。もちろん原発立地の地権者、周辺住民の反対運動は起きているのだが、国民全体としては、原子力大綱の描いたストーリに反対する様子は見当たらなかったし、全国規模での反原発デモも起きていなかった。むしろ、震災前は反原発運動をする人々へ向ける世間の視線は厳しいものがあった。地元市町村の合意と地元地権者への合意が取り付けられれば、粛々と原子力発電所は新設されていた。原子力政策大綱では、「2030年以後も総発電電力量の30~40%程度以上の供給割合を原子力発電が担うことを目指す」旨の政策目標が掲げられている。この政策目標の達成に向けた当面の目安として、2006年度の供給計画において13基の新・増設案件が掲げられている。従って、13基の新設・増設後に東日本大震災と同規模の地震が起きていれば、より被害は深刻な事態になっていただろう。3.11前の日本では反原発の機運は今よりも格段に弱く、遅かれ早かれ原子力発電所は新設・増設されていたと考えられる。従って、原子力ルネッサンスが完了した後に大地震が来なかったことはある意味、幸いだっと言えるだろう。


<平成18年 原子力立国計画より>
$六本木ヒルズ映像ジャーナリズム


では、日本人、日本国家がギリギリの所まで追いつめられ、偶然性も重なり、何とか生き残ることが出来ていたことを認識した後を、どう考え、どう生きていくかを、自分なりに取材してきた経験を通じて、述べたい。当然であるが、日本国家存続の危機まで陥ったという認識は映像ジャーナリズムの見方であり、いろいろ認識の仕方がある。放射線による致死量は7シーベルトであり、人体への影響は100ミリシーベルト以上から見る事ができ、それ以下では科学的に明確に立証されておらず、今回、東日本を覆った放射能のレベルは低線量であり問題ないとする見解もある。夏に東電の事故調査最終報告書、政府の事故調査委員会の最終報告書、国会事故調査委委員会の最終報告書が提出される。冬には日本政府としてIAEAの総会で原発事故の最終報告書を提出する予定になっている。各最終報告書を冷静に読み比べながら、福島原発事故の事態を理解することは必要であることは言うまでもない。今のところ、映像ジャーナリズムは震災以降の取材を通じて、日本国家は戦後最大の危機的状況に陥ったという認識をもっている。


東京電力記者会見で印象的であった質問の1点目。テルル129、テルル129mが検出されていると早い段階から東京電力は会見で認めており、テルル129は半減期が70分と短く、検出されているならば、自発的核分裂が起きていることを示している。従って、11月のキセノン検出による「再臨界」「自発核分裂」騒動以前に、自発的核分裂は起きていることは、7月の時点で認めている。69トンもの燃料がデブリとなっている状態では、爆発という大きな事故に至らないとしても、小さな核分裂は部分的に発生していると、想像がつく。11月騒動の発端は深夜に東京電力がキセノン検出のメールを一斉に投げたことが要因である。検出限界を技術的に可能なレベルまで下げれば、6/6保安院が作成した「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」通り、大気中へ放出された30種類程度の核種は全て検出されるだろう。

<「テルル129検出に関して」 質疑 六本木ヒルズ映像ジャーナリズム>



東京電力記者会見で印象的であった質問2点目。1号機の地下水全核種検査が6ヶ月に1回であることが、会見の質疑応答から明らかになった。配布資料に「備考欄の左記採取場所から毎月1カ所を順番に採取」とのみ記載されており、記載のみでは検査頻度が判りかねる状態であった。東京電力記者会見は会見開始直前に資料の用意ができたとアナウンスされ、記者が机に並べられた資料を取りに行ってから、直ちに会見は始まる。従って、毎回数百ページある大量の資料を細かく読む事は不可能であり、松本広報部長代理の話す内容をなんとか資料を見ながら理解するだけで精一杯である。映像ジャーナリズムは事前に問題意識を地下水の検査に絞っていたため、地下水検査の資料を配られた直後に集中的に読む事ができ、備考欄の記載内容を詳細に聞く質問をすることができた。そして、1号機の全核種の検査は6ヶ月に1回という驚くべきものだった!。6ヶ月に1回という回答が出た後、フリーランスの木野龍一さんが、6ヶ月に1回であることの再確認と、改善要求を行い、さらなる追求質問がされた。



東京電力記者会見に出席して、感じることは、フリーランスと会社所属の記者ではスタンスが異なるということである。これは、良い悪いという批判ではなく、両者の立っている立場の差異であり、両スタンスとも必要である。フリーランスの場合は基本的には会社に所属しておらず、自らの意思で会見に参加し、自らが疑問に思うことを質問している。一方、会社所属の記者の場合は、当然であるが、上司という存在があり、その上司の指示の元、一定の役割を負って参加している。会見の質問の仕方を見ていると、自らの疑問を東京電力にぶつけるというよりは、東京電力の発表内容を整理、整頓して、本社へ送ることを仕事として課されているように見える。質問の方向性も発表内容の確認と詳細をつめる質問が多くみられる。そのことは、正確に読者、視聴者に伝えるという意味でも大事であると思う。ただ、今回の前代未聞の大事故で発表側が必ずしも事実を公表しておらず、また公表しないことが広く国民に危害を与える可能性がある際には、普段とは違った体制をとる必要があったように思う。「東京電力の公表している内容は果して本当ですか?」という発表内容そのものに疑義を呈する姿勢があっても良かったのではないだろうか。そして、震災以後のマスコミ報道への不審はそのような姿勢から産まれているように思える。逆に言えば、今回フリーランスが評価を上げた要因はそのあたりにあるのではないだろうか。ただ、今後のジャーナリズムをフリーランスに期待するのは無理があると思う。フリーランスーは基本的には個人で行動しており、個人ではできることに限界があるし、組織で取材をする方が広範囲、長期の取材が可能である。また、フリーランスは経済的に苦しいことが多く、フリーランスで活動して食べていけるような環境はなかなか無い。東京電力記者会見へ参加したフリーランスの場合、交通費、食費、など様々な経費は自腹であり、かつ会見に参加したからといって、対価が発生するわけではない。会見内容の記事をどこかの週刊誌が購入してくれる場合は別であるが、会見自体はインターネットでも無料で中継されており、特段お金を払うメリットは払う側に無いので、会見に参加するフリーランスにお金を払うケースは希有である。従って、フリーランスの場合は基本的には会見に参加すればするほど赤字になることになる。会見で知り合ったフリーランスは全員自腹で持ち出しであった。つまり経済性を度外視して、動いているわけで、持続可能性が無い。インターネットの普及によって、各自が発信できるようになり、WEB上で活動しているフリーランスも多くいるが、その多くはカンパ、有料メルマガが柱である。震災を契機に著名なフリーランスに対する寄付、メルマガ購読は増えている。しかし、寄付、有料メルマガで生計を立てられるのは、普段からテレビに出ている有名な方であり、数人程度ではないだろうか。この問題は「自由」と「お金」のバランスという哲学的問いも含まれており、悩ましい問題である。


<「1号機の地下水検査が6ヶ月に1回の頻度」 質疑 六本木ヒルズ映像ジャーナリズム>




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<大野もとひろ議員HPより>

「インテリジェンス・NSCワーキンググループ」とは民主党で外交防衛情報の在り方を議論しているワーキンググループである。座長に大野もとひろ民主党議員が就任している。

議題は主に以下の5つである。
1.日本版NSC(国家安全保障会議)の設置
2.インテリジェンスコミュニティの強化
3.官民国会議員ともに秘密保全の徹底
4.日本版CIA(中央情報局)
5.日本版FEMA(危機管理庁)

藤村官房長官は5日午前、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が議事録を作成していないことに関して「情報保全に関する検討委員会から諮問された有識者会議であり、議事用紙、有識者報告書があることから必ずしも公文書管理法に抵触しない」と述べた。


公文書管理法四条の一 「法令の制定又は改廃及びその経緯」

秘密のための法制の在り方について(報告書 8/8作成)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jouhouhozen/dai3/siryou4.pdf