あらすじ
「なぜかいつも期間限定に弱い」「ダイエット中なのに新作スイーツを食べてしまう」「損だとわかっているのに、一度始めたことがやめられない」……。
こうした、理屈では説明しきれない私たちの「不合理な行動」を解き明かすのが、今注目の行動経済学です。
著者の橋本之克氏は、ブランディングやマーケティングの第一線で活躍してきた戦略家。本書『世界は行動経済学でできている』は、専門的な学問になりがちな行動経済学を、徹底的に「私たちの日常」に引き寄せて解説しています。
本書の特徴は、机上の空論ではなく、「買い物」「仕事」「恋愛」「SNS」といったリアルな場面での具体例が豊富なこと。私たちがなぜ罠にはまり、どうすればより良い選択ができるのか。世界を動かしている「心のクセ」を、誰もが楽しく理解できる一冊です。
グッときたポイント
橋本氏の視点で語られるエピソードの中で、特に心に響いたポイントを3つ紹介します。
1. 「おとり」に操られる私たちの選択
「A(高価)」と「B(安価)」の2択で迷っているときに、あえて「Aに近いけれど少し魅力の劣るC(おとり)」を提示されると、人は自信を持って「A」を選んでしまう……。
この「おとり効果」の話は、飲食店のメニューやサブスクリプションのプラン設計に驚くほど活用されています。自分の意思で選んでいるつもりが、実は「選ばされていた」という事実に気づいたとき、世界の見え方が一変します。
2. 「現在バイアス」との付き合い方
「将来の大きな利益(健康や貯金)」よりも、「目の前の小さな快楽(お菓子や浪費)」を優先してしまう「現在バイアス」。
本書では、この人間の弱さを根性論で克服しようとするのではなく、仕組みでどうにかするヒントが示されています。自分の弱さを肯定しつつ、それをどうコントロールするかという著者の視点は、非常に実践的で救いになります。
3. 社会を動かす「同調現象」の正体
「行列ができているから美味しいはず」「みんなが使っているから安心」。
こうした「同調現象」が、いかに強力に私たちの行動を制限しているかが詳述されています。SNSの「いいね」の数に振り回される現代において、この心理メカニズムを知っておくことは、自分自身の「軸」を取り戻すための強力な武器になります。
こんな人におすすめ
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「自分は流されやすい」と感じている方
(心のメカニズムを知ることで、広告や周囲の意見に振り回されにくくなります)
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人を動かす仕組みを作りたいビジネスパーソン
(プレゼン、商品企画、マネジメントにおいて、相手の心理に寄り添ったアプローチが可能になります)
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将来のために貯金や勉強を習慣化したい方
(「わかっているのにできない」を解消するための、脳のクセとの戦い方が見えてきます)
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面白い雑学として教養を深めたい方
(明日誰かに話したくなるような、身近な「なぜ?」の答えが詰まっています)
読者の皆様へ:不合理な自分を愛するための学問
私たちはロボットではありません。感情があり、バイアス(偏り)があるからこそ人間らしい選択をします。
橋本之克氏の『世界は行動経済学でできている』を読めば、自分の失敗や不合理さを「ダメなこと」と責めるのではなく、「人間らしい仕組みの結果」として冷静に捉えられるようになります。
この本は、単なるビジネスの教科書ではありません。
複雑な現代社会を、より賢く、そしてより軽やかに生きていくための「心の地図」です。読み終えたあと、あなたはきっと、いつも通りのコンビニやオフィスで「あ、今、行動経済学の中にいるな」とニヤリとしてしまうはずです。
