河内山宗春という名前、耳にした方は多いと思います。悪徳
坊主です。しかし人気が、高いのです。理由は、弱い者いじ
めをしないから。ひたすら金持ちや強い者をターゲットにす
るところが、共感を呼ぶのです。
実在の人物でして、江戸城奥坊主の家に生まれています。な
ので坊さんではあるのですが、途中から脱線し、悪の道にど
っぷりつかったようです。主には、ゆすりやたかりを生業と
していました。
歌舞伎の主人公としても、よく扱われています。たとえば、
質屋の娘が大名の松江家に奉公に出ると主人に見初められて
妾に欲しいと言われたが娘は断り、逆上した主人に軟禁され
ます。宗春はこの話を聞きつけ、「俺に任せろ」と言って娘
の取り戻しを請け負います。
宗春は「上野寛永寺の御使僧である」と偽って松江家に乗り
込み、「こんなことをして良いのか。幕府に言いつけるぞ」
と脅して娘を取り返しただけでなく、多額の口止め料を受け
取る。というのが歌舞伎のストーリーなのですが、これはほ
ぼ事実だということです。
また、水戸藩が「富くじ」を発行して財政の足しにしていた
のですが、或る時「当たりくじ」をつくらずにくじを販売し
ていました。つまりくじ代を丸儲けです。当然幕府には内緒
です。それを知った河内山宗春は水戸藩をゆすります。
水戸藩は口止め料として、500両を払ったということなの
でした。まあこうした破天荒で強きをくじきといったところ
が、人気を呼んだのでしょう。