しばらくして 甲西さんの家から帰ってきた教頭先生と生活指導の先生が入ってきた。
「いやあ、お母さんは大変な取り乱しようです。
さっきまでお父さんに連絡したといいながら警察の方にはまだ連絡してなかったとか、急に泣きだしたりとか、まあ興奮状態っていうんでしょうが。
事実がちっともわからなくて一体何を信じていいものやらわかりませんでした」
職員室は再び沈黙が流れた。
時計は10時50分を過ぎていた。電話が鳴った。校長は はいはいとうなずきながら聞いていたがしばらくして電話を置いた。職員室の先生たちはみんな校長先生の言葉を待った。
「今警察から電話がありました。甲西香織ちゃんは善意の人によって無事保護されたということです」
途端に職員室の中は ほっとした声が聞こえた。
「まあ、よかった」
「ああ、やっとこれで安心して帰れるわ」
すぐに室内は矢継ぎ早に質問の声がとびかった。
「善意の人ってどんな人ですか」
「で、香織ちゃんは大丈夫だったんですか」
「犯人はわかったんですか」
校長は言った。
「詳しくはわかりません。とりあえず この事件のことは先生方からくれぐれも話題にするようなことは控えてください。ただ、一部の保護者にはもう伝わっているようですから十分気をつけてください」
ああ、まただ。この対応、私も何度か聞いた言葉だった。