正体不明の筆者が写真と言葉で紡ぐ物語。コメントはほとんど返信はできていませんが共鳴のしるしとして大切に拝読しています。コメント・いいねを頂いた方への訪問を心掛けています。2021年に慢性骨髄性白血病発症し体調と折り合いをつけながら作品をお届けしています。
内側から見た春
弘前の夜桜を見て、そのまま北へ向かった。少し無理をした旅だったと思う。一ヶ月ほど前、雨に濡れた桜の蕾を見ていた。まだ固く閉じたままのその姿に、これから来る春を思っていたことを覚えている。静かな雨の中で見た、小さなはじまり。そこから季節は進んで、弘前では、光に包まれた夜の桜に出会い、そして翌日、五稜郭に立っていた。目の前に広がる桜は、まだ咲いたばかり。それでも、あの雨の日に見ていた蕾が、こんな景色へつながっていたのかと思う。同じ桜でも、蕾の時間があり、夜に輝く時間があり、静かな昼を迎える時間がある。たぶん写真に残しているのは、花の姿だけじゃなく、その時ごとの季節の気配や、自分の中に残った感情なんだと思う。今年は追いかけるように過ごした春だった。でも振り返ると、春のほうが少しだけ先を歩いていて、その背中を見ながら、ただついていっただけなのかもしれない。撮影 2026年4月19日五稜郭カメラ EOS5DMARK2、スマホ
本当は、ただ通り過ぎるはずの一瞬だった。山の向こうから差し込んだ光が、ゆっくりと川面をなぞり、やがて鉄橋へと届く。そのタイミングで、汽車が来た。白い煙は光を受けてやわらかく舞い、まるでこの場所の空気ごと、静かに浮かび上がらせるようだった。阿賀野川は、何も言わずにそれを映し込む。橋も、煙も、そして光さえも。ほんの数秒。けれど、その時間だけは確かに止まっていた。あの光は、狙って出会えるものじゃない。けれど、待っていれば、こうして応えてくれる瞬間もある。だからまた、立ちたくなる。同じ場所に。撮影 磐越西線SLばんえつ物語パソコン用 「大きな画像」
少しだけ予定を前に動かして、初めての弘前。昼から夜へ移りゆく姿を、ただ静かに、写しにきた。暮れゆく時間、足元に気を付けて歩こう。満開の桜が、そっと迎えてくれる。風はほとんどなくて、水面は驚くほど静かだった。振り返ると、空の色はもう昼ではなくて、夜になる直前の、あの曖昧な時間に変わっていた。やがて灯りが入りはじめる。城を照らす光と、それを囲む桜。昼とは違う顔を見せながら、 それでも桜は、ただそこに咲いているだけだった。一度水辺へ。息を一つ整えて、わずかに揺れる気配を押さえながら、静かにシャッターを押す。夜の桜は、空にあるのか、 水の中にあるのか、少し分からなくなる。今日のことは、 きっと写真の中に残っている。あとは、 あなたの感じたままに。撮影 2026年4月18日弘前公園・弘前城跡カメラ EOS5DMARK2、スマホパソコン用「大きな画像」:EOS5DMark2 手持ちシャッター速度1/8秒パソコン用「大きな画像」:スマホ
本当は、今日ここにいる予定だった。桜に合わせ、予定を約10日早めた。さぁ、一緒に歩こう。静かに見えるけれど、屋台のにおいと、声に包まれていた。満開の桜に引き寄せられて、みな、どこかやわらいだ表情をしていた。ついたときは曇り空。それでも、さくらは変わらない。ゆれる桜。流れるとき。その中にいた。曇っていた空に、光が差した。そっと流れていく時間。水辺に残っていた。灯りが入るころ、もう一度、歩いてみる。撮影 2026年4月18日弘前公園・弘前城跡カメラ EOS5DMARK2、スマホ
風薫る。同じ場所に立っても、見えるものは、もう違っていた。あの時の気配は、汽車にだけ残っていた。あの時と同じように、汽車だけを止めて。撮影 磐越西線SLばんえつ物語明日から5月。
汽車が、春を横切った。その一瞬を、追いかけていた。置いていかれないようにと。撮影 磐越西線 SLばんえつ物語
ふと思い立って向かった先。その夜、空気は少しだけ冷えていた。まだ少し寒さが残るのに、桜はちょうど見ごろを迎えていた。ほんの一瞬、息を止める。その気配のまま、シャッターを切った。同じ桜でも、立つ場所が少し変わるだけで、見えてくる形が変わる。 人の流れ。足音。やわらかく揺れる光。 春の夜は、少しだけ感覚を曖昧にする。 気づいたときには、同じ方向を見ている人が増えていた。 「これでいい?」そんな声が、あちこちから聞こえる。 みんな、それぞれの距離で、同じ形にカメラを向けていた。ぼくも、ほんの一瞬だけ。 息を止めて、シャッターを切る。 反対側に回ると、同じ夜でも、少しだけ印象が変わる。あの夜に見えたかたちは、この位置でしか、残せなかった。撮影 スマホ 弘前公園 2026年4月18日
水面に、残る。流れてきたものが、ここで、止まっていた。僕は、立ち止まる。翌週、桜を追いかけて、弘前公園にいた。撮影 スマホ 2026/4/18
朝の光。風が吹くたび、花びらがひらひらと離れていく。川面に落ちて、流れる。視線は、水面へ。映り込みと、流れていくもの。僕はあの場所の、下にいた。一瞬は、もう過ぎていた。旅の途中。季節は、そっと移り変わる。撮影 スマホ