サリンジャーの短編小説
 ジニーとセリーナという二人の女の子がタクシー代の支払いにもめ、ジニーはセリーナに今までのつけを返してもらうために、セリーナの家に行く。そしてジニーはセリーナがお金を持ってくる間、セリーナの兄のフランクリンという変わった青年に会うという話だった。
 ジニーがデリカシーのかけらもないが、どこか憎めないフランクリンとのやり取りにより、徐々にジニーのセリーナへの怒りが冷めていく印象があった。フランクリンという強烈なキャラクターにより、二人の女の子の関係が崩れていいきそうな緊迫した状況がとるにとらない問題として変化させられた感じが新鮮だった。
 気分や感情に流されて、人間関係が壊れることは誰にも起こり得ることだが、感情や気分は恒常的なものでなく、ふとしたきっかけで、変わっていくものなんだと思われる。そして、感情や気分が変化するきっかけは、自分自身でというよりも、他者との何気ないやりとりによって起こるものだと改めて考えさせられた。