澤瀉久敬(おもだかひさゆき、1904-1995)の『哲学と科学』を読む。

1967(昭和42)年に出されたNHKブックスの一冊。もともとはNHK教養大学の講義を本にしたもの。最初は角川新書から『真理への意志ーー哲学と科学についての十三のコーズリ』といふ題名で出された(絶版)。

澤瀉氏は『医学概論』の著者として知られてゐるが、その著書『アンリ・ベルクソン』の序文に次のやうに書いてゐる。

「わたくしは若くしてフランス哲学の研究を一生の仕事と決めていたが、運命はそれを許さず、医学概論なる学問の形成に生涯を捧げざるを得ぬこととなり、フランス哲学については、わずかにベルクソンを多少勉強するにとどまったのである。」

『哲学と科学』は、放送された講義の記録なので、わかりやすい言葉で書かれてゐる。哲学は知識をひけらかすためのものではなく、自分一人のためにするものだと強調してしてゐるのが印象的。

哲学と科学とでは対象も方法も異なるといふ立場で、その両方が必要だとしてゐる。ベルクソンの考へ方に近いものが多い。科学の方法についての章で、実証的精神を説明してゐるが、そこで述べられてゐるオーギュスト・コント(1798-1857)の思想についての解説は、勉強になつた。

コントはアラン(1868-1951)が高く評価してゐる人なので、何年も前に購入して積読になつてゐる大著がある。今時、コントを読む人など少ないと思ふが、少し元気を出して読んでみようかな、といふ気になつた。