
自然界は人間が住むために完璧に造られていると感じる人がいます。特にクリスチャンであれば愛ある神が素晴らしい自然界を人間に与えられたという感覚をお持ちだと思います。
しかしそのような感想を述べる時,ぼくたちは実際の自然界をどれほど観察しているでしょうか?
昆虫や動物の様々な世界を観察したイギリスの生物学者チャールズ・ダーウィンは自然界をつぶさに観察した結果,それとは異なる意見を述べています。
その一つがこれです。
「恵み深く全能の神が、イモムシの生きた体のなかで養育するという明確な意図をもってわざわざヒメバチ類を造られたのだと、私はどうしても自分自身を納得させることができません。」
チャールズ・ダーウィン - 1860年のエイサ・グレイ宛の手紙
ダーウィンが述べていたことを説明します。
まず以下の写真をご覧ください。

受け付けた卵はやがてイモムシの体内で孵化(ふか)します。イモムシの体内で生まれた数多くのハチの幼虫は次に何をするかと言うと,イモムシの体の中で,その宿主(この場合イモムシ)の体を食べ始めます。
つまり寄生した上で,いわば宿主の肉を食べて栄養をとり大きくなっていくのです。生きたまま,新鮮な肉を食べつづけます。宿主に致命傷を与えることなく食べます。ついにイモムシが息絶えるまで可能な限り体を食べつくします。
しかも寄生バチの中には卵を植え付ける際に一種の麻酔手術までほどこすのです!
卵と一緒に一種の毒を注射するのですが,それはイモムシを殺す成分ではなく,いわば麻酔のような効果を与える注射で,死ぬまで無感覚のまま体内の幼虫に体を食べさせるための手術なのです。
そして幼虫が体の外に出てくるまでイモムシが生き残っていた場合,イモムシの脳は麻痺しているため,その後も寄生バチのさなぎの上でボディーガードのような役割を果たします。麻痺したイモムシは自ら食物を得ることは忘れているので,いずれ息絶えます。
なんと完璧な造りなのでしょう!
寄生バチの幼虫の成長をとらえた動画
彼らは完璧に作られている
続いて一つの動画を見てみましょう。これはカエルアンコウ(Frogfish)と呼ばれる魚の食事風景です。動画を見るとわかりますが,カエルアンコウの中には口の上にヒゲのようなものが付いているものがいます。このヒゲはまるで釣りの疑似餌のように他の魚から美味しそうに見えます。まるで本物のエサのようにゆらゆら揺れる疑似餌に近づいた魚をカエルアンコウはパクリとたいらげます。
なんと完璧な造りでしょう!
しかし,神は動物を草食として造られたのではありませんでしたか?もしカエルアンコウが草食として作られているのであればこの疑似餌は誰が取り付けたのですか?そしてこの巧みなハンティングを誰がカエルアンコウに教え込んだのでしょうか?あるいはハンティングの本能を誰が植え込んだのでしょうか?
動物学者のリチャード・ドーキンスは次のように述べました。
捕食者は餌動物を捕まえるために美しく「設計されている」ように見えるが、餌動物のほうも同じように彼らから逃れるために美しく「設計されている」ように見える。神はどっちの側についているのだ。
神は妄想である P201
自然界に見られる生態系は確かに素晴らしくできています。
しかし逆にその素晴らしさこそチャールズ・ダーウィンが「種の起源」にまとめた自然選択による進化の正しさを立証するものにもなっているのです。
あなたが感じていた「自然は完璧です」という感覚は,もう少し調べてみると違ったものになるかもしれません。