翌朝は、いつもより早く準備をして果物をかじって

誰もまだ起きていない時間からバスに乗って学校へ向かった。

 

初めての友達ができて、学校へいく意味が見つかったような気持ちだった。

 

 

学校に時間通りに着き、教室に入るとハイルの姿が見えない。

その代わり、入ってきた先生に手紙を渡された。

 

 

 

「ハナ、教頭先生が呼んでいるからこの紙を持って行ってね。」

 

 

「はい・・・」

 

 

 

何か怒られるのだろうか。生活態度が悪い?遅刻が多すぎる?ひやひやしながらも鞄を持って一階まで降りる。

受付前の広間に目をやると

そこには小柄なアジア人の女性が座っていた。

 

 

「あ、ハナさん?」

 

 

日本語で話しかけられた。

 

 

「はい・・。」

 

 

「わたしはここの学校に時々くる日本語の先生をやってます。マリです。今日は日本人の生徒さんのサポートということできました。」

 

 

かわいらしくて優しそうな先生だった。

 

 

 

「ありがとうございます・・日本人が一人もいなくて。」

 

 

 

「そうだよね〜。もう一人いるんだっけ?」

 

 

 

「はい、上の学年に。でももうすぐ卒業だと思います。」

 

 

 

「そうだね〜そうすると一人だもんね。」

 

 

 

 

長椅子に腰掛けて教頭先生の部屋を覗くと、先客がいるようだった。

 

マリさんが

「今ね、他の生徒さんの面接中みたい。」というと

 

先客がこちらを振り返って、大きく手を振った。ハイルだった。

わたしも手を振り返す。

 

 

「おともだち?」

 

 

「昨日入学してきた子で、仲良くなったんです。」

 

 

「そうなんだ〜!よかったね。」

 

 

 

 

「初めての教頭先生との面接」を目の前に緊張しながらも

日本語を話せる人がきてくれたこと、ハイルが壁越しの目の前にいてくれることを心強く感じていた。

 

 

数分マリさんと雑談をしていると、ハイルが部屋からでてきた。

無言でわたしに笑顔で手を振ると、教室へ戻って行ったようだった。

 

 

中から座ったまま教頭先生がわたしを呼ぶ声が聞こえる。

 

 

「入ろっか。」

 

 

「一緒にきてくれるんですか?」

 

 

「もちろん!」

 

 

 

 

会ったこともない教頭先生の存在にびくびくしながらも

おそるおそる扉を開くとそこにはつりメガネの明らかに「教頭先生」な見た目の女性が座っている。

 

 

「ハナね〜!!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「そしてマリさん。」

 

 

「お早うございます。」

 

 

「ハナ、学校はどう?」

 

 

「う〜ん・・難しいです。」

 

 

「日本人がいないものね。」

 

 

「そうですね・・・」

 

 

よく見ると教頭先生の机にはたくさん仏像の置物が置いてある。

 

 

 

「わたしは、日本が大好きなの。」

 

 

「えっ・・?」

 

 

「日本は素晴らしいわ。見てこの仏像。日本で買ったの。わたしは日本が本当に好き。」

 

 

教頭先生は突然日本で買ったお土産コレクションをわたしに紹介し始めて

わたしは相槌をうつだけ

 

英語だからわからないとかそういうこともなく

ただただ教頭先生の情熱に圧巻された。

 

 

「あなたが問題なく学校生活を送っているならいいわ。頑張ってね。」

 

 

「はぁ。。ありがとうございます!」

 

 

「日本は素晴らしいわ。」

 

 

 

最後まで言い続けている先生。

 

わたしは部屋を出て、マリさんと目を見合わせた。

緊張していたのが嘘のように、なんだか面白くなってきてしまった。

 

緊張をほぐしてくれようとしたのかもしれないけど

あれが学校の面接なんだと思うと、文化の違いを感じて

とてもいい世界にいるんだなと感じた。

 

 

「今日午前中はいるからサポートしますよ〜。」

 

 

「本当ですか!嬉しい。」

 

 

マリさんは今日はわたしのサポートのためにきてくれていたようで、

授業にもついてサポートをしてくれるとのことだった。

 

今後も週一できてくれるとか。心強い。