『越境者 Cammino della Speranza』1950年
英語のタイトルは「The Path of Hope」。直訳は「希望の道」。
ラストで振り返れば、それは希望の道だった。しかし途中、危険に身を晒して集団で越境せねばならない、という話。
シチリア島の人たちが、硫黄を採掘していた鉱山が閉鎖されて職がなくなったため、詐欺師の「(旅券もなく国境を越えるのは)違法だが、フランスに行けば稼げる。家族を養える。俺が案内する。一人2万リラずつ払えば」
という話を信じ、家を売って金を作って実は詐欺師である案内者に同行したが、途中で案内者は逃げる。中の一人が追うと、「金は既に家に送金したあとだ。若い男たちだけなら案内できるが、老人や女子供も一緒だと警察に追われた際に逃げられない」と言う。説得して列車に戻すが、案内者はまた逃げた。
故郷に帰っても家はない。行くしかないと先へ進むと、途中で警察につかまり、故郷へ強制送還となった。
「故郷に帰っても家がない。子どもを食わせないとならない」と訴えても、警察には「国外退去になるところを、故郷に帰してやるんだ。ありがたく思え。後は自分たちで何とかしろ」と言われる。
しかし警察署を出た、リーダー的存在の男性カロ(妻に死なれ、幼い子どもを3人連れてきている)は、「故郷に帰っても職がない、子どもたちの為にはフランスに行くしかない」、と強制退去の書類を破る。すると仲間も「そうだ」と同調し、フランスを目指すことに。
と途中で、広い畑を持つ農場主に、「職はある。週に一人〇〇リラやる。手伝ってくれ」と言われる。
集団で行くと、他にも労働者がいる大部屋がある。
ひとまずここで過ごそうと、集団で働き出す。
すると見知らぬ人々がやって来て、こっちに向かって大ブーイング。
その声を聞けば、「スト破り!」と叫んでいる。ゼネスト中で、辺りの労働者たちが一斉にストライキをして、雇用者に賃金アップと待遇改善を要求している中、自分たちより安い賃金と劣悪環境で「余所者」が働いてしまっては、ストライキの意味がない、というのだ。
彼らの暴力が酷いため、警察が介入。
集団は、仕方なく逃げるように農場を出ていくことになった。
この間、リーダー的男性カロと、ワル男と来て途中で別れた女性バルバラが恋仲に↓。
(カロと三人の子どもとバルバラ)
このワル男はまた集団に合流して来たため、バルバラを既に愛していたカロと決闘となり(先にナイフを出してきたのはワル男)、カロはワル男を刺し殺してしまう(カロはワル男に、「バルバラは熱が出た俺の子に医者を呼び、看病してくれた。俺はバルバラと結婚する」と宣言し、決闘となった)。
左がカロ。右がワル男。
罪悪感で頭を抱えるカロを、バルバラは抱きしめ、ワル男の死体を放置して、国境の雪山へ。
そこで吹雪となり、カロを信頼していた、鉱山の会計士だった初老の真面目で気のいい男性が犬と共に迷子となり、カロは男性を捜そうとするが止められ、泣く泣く進む(会計士だった男性は死去(彼は違法と知りつつ、1人者だから身軽だと、犬と共にフランスを目指したのだった))。
峠を越えると吹雪は収まって、さあ、フランスだ、というところで、イタリアとフランスの国境警察が何人もスキーでやって来た。
この二国の国境警察は仲が良い。
集団の、命を懸けた目力、迫力に、警察官たちは事情を察し(警察は集団に「旅券なしで越境か?」と訊いたものの、無言でまっすぐ睨むように直視する集団に、同期して黙り)、見逃してくれるのだ。
集団が雪の上をフランスへと進む後ろ姿で、ジエンド。
集団の中には、途中で「俺たちは若くない。捕まって刑務所で死ぬより故郷で死にたい」と離脱し帰郷した人たちもいた。
途中で脱落者が次々出る、正にサバイバル映画。
残った人たちが脱落者や死者の思いを内包して生き延びていくというのは、人間社会の縮図にも見える。
イタリア老若男女の『あゝ野麦峠』にも見えた(雪山を越えて命懸けで職場へ)。
又は、「母をたずねて三千里」の求職版、「職をさがして三千里」。
★Wikipediaより★
希望の道(イタリア語:Il cammino della speranza)は、イタリアのネオレアリズモ映画運動に属するピエトロ・ジェルミ監督の
1950年のイタリア語のドラマ映画です。原作はニーノ・ディ・マリアの小説『Cuori negli abissi』。
フェデリコ・フェリーニが脚本を共同執筆した。
2021年7月、本作は2021年カンヌ国際映画祭のカンヌクラシック部門で上映されました。(注1)
2008年、この映画はイタリア文化遺産省の「1942年から1978年の間に国の集合的記憶を変えた」100本の映画のリストである「保存すべきイタリア映画100本」に選ばれた。(注2)
プロット
この映画は、貧しいシチリア人のグループがより良い生活を夢見てフランスに旅する様子を描いています。
シチリア島カポダルソの坑道で心配そうに待つ女性たち。彼らの部下は地下にいる。鉱山は閉鎖され、鉱山労働者は所有者が容赦しない限り、立ち上がることを拒否します。3日後、彼らは絶望してあきらめます...町のバーで、チッチョはフランスでの仕事のために労働者を募集しています。彼は人々を国境を越えて連れて行くことができます - 一人当たり20,000ルピーで。料金を支払うために持ち物を売り払ったバスを埋めるのに十分な人数、サロと彼の3人の幼い子供たち、そして法律に問題があり、イタリアから逃げようと必死になっているバーバラと彼女の男ヴァンニ。
列車でナポリに着いたチッチョは逃げようとするが、ヴァンニに掴まれる。ヴァンニはバーバラに、何か問題が発生した場合に国境で待ち合わせ場所を教えます。ローマでは、チッチョがヴァンニを警察に指摘する。銃撃戦では、ヴァンニとチッチョの両方が脱出します。他の者たちは逮捕される。彼らは警察からシチリア島への帰国を命じられ、さもなければ「不法追放」の罪で起訴される。
サロをリーダーとし、資金が尽きかけた彼らは、代わりに北へ向かう。苦難はサロとバーバラを近づける。
キャスト
- ラフヴァローネ - サロCammarata
- エレナVarzi - バーバラSpadaro
- サロUrzì - Ciccio Ingaggiatore
- フランコナバラ - ヴァンニ
- リリアナLattanzi - ローザ
- ミレッラ・チオッティ - ロレンツァ
- Saro Arcidiacono - 会計士
- フランチェスコトマリロ - Misciu(フランチェスコTomolilloとして)
- パオロレアーレ - ブラジル
- ジュゼッペプリオロ - ルカ
- レナートテラ - Mommino
- カルメラトロヴァート - シルメナ
- アンジェログラッソ - アントニオ
- Assunta Radico - Beatificata
- フランチェスカ・ルセラ - 祖母
受賞歴
- 賞
- ノミネート
脚注
- ^ 「2021年のカンヌクラシックのラインナップには、オーソン・ウェルズ、パウエル&&プレスバーガー、ティルダ・スウィントンなどが含まれます」。映画の舞台。2021年6月25日閲覧。
- ^ 「Ecco i cento film italiani da salvare Corriere della Sera」。www.corriere.it。2021年3月11日閲覧。
- ^ "第1回ベルリン国際映画祭:入賞作品".berlinale.de。2009年12月21日閲覧。
- ^ 「カンヌ映画祭:希望の道」。festival-cannes.com。2009年1月16日閲覧。★