アンティークショップ~紫の石~
潤のお気に入りのテープが…よりによって俺が子供の頃の練習テープで…。
しかも戦隊モノにハマっていた頃のテープなので、敵をやっつける掛け声が入っていて…。
こんな恥ずいモノを潤とまーくんに聞かれていたのかよっ!!
と思いながら、
「よりによって何でそのテープなんだよ…。」
とガックリと項垂れながらそう言うと潤が心配そうな顔をしながら俺を見つめると、
「…やっぱり…ダメ…ですか…?」
と紫色の綺麗な瞳を再び潤ませながらそう聞いてきたので、
「潤…。
他にもテープはあるのかい?」
と聞くと潤は、
「…はい。
あります…。」
と言うと不安そうに俺を見つめるので、
「取り上げたりしないから安心して。
とりあえずテープを見せてくれるかな?」
と言いながら潤の頭を撫でてやった。
潤はジッと俺を見上げて見つめながら、
「…は…い…。」
それでも不安そうな声で返事をし、俺からそっと離れるとトテテテテテテテッと走ってリビングから出ていったのだった。
暫くすると潤は見覚えのある茶封筒を手にしてトテテテテテテテッとリビングへと戻って来て、
「…これで…す。」
と悲しそうに紫色の綺麗な瞳をユラユラと揺らしながらそう言うと、潤は手にしている茶封筒を俺に見せてくれた。
潤は茶封筒をリビングにあるローテーブルの上へと置くと、茶封筒をそーっと開き壊れ物を取り扱うかの様にカセットテープを1本ずつゆっくりと丁寧に茶封筒の中から取り出したのだった。
アンティークショップ 〜紫の石〜 ㊹
「これで…全部です…。」
潤が最後の1本を取り出すと俯いてそう言った。
不安そうな顔をしたまーくんが、
「翔ちゃん…まさか全部没収…?」
そう聞いてきたので、
「ふはっ。
そんな事はしないよ。」
と言い、テープを1つ1つ手に取りテープに貼られたシールに書かれた内容をチェックしていき、練習用のテープを数本手に取り、
「そうだなー。
このテープと今聞いているテープ以外なら聞いてもいいよ。」
と言うとまーくんが、
「潤ちゃん、全部ダメじゃなくてよかったねー。」
と安堵の表情でそう言ったが、潤は悲しそうな瞳でジッとカセットデッキを見つめて、
「あのテープは…やっぱりダメなんですか…?」
と聞いてきたのだった。
潤のそんな悲しそうな顔を見てしまうと…。
「そうだな…。
あのテープは俺が居ない時だったら聞いてもいいよ。」
と言うと潤は紫色の綺麗な瞳をキラキラと輝かせながら、
「しょおさん、いいんですかっ!?」
と聞いてきたので、
「ああ、いいよ。
その代わり、俺が居る所で聞いたら没収だからな。
約束できるかな?」
と聞くと、
「うん、約束しますっ!!」
と潤が答えるとまーくんも、
「翔ちゃん、僕も約束するよっ!!」
と太陽の様な明るい笑顔でそういったのだった。
潤は俺が聞いてもいいと言ったテープのうち1本を手に取ると、トテテテテテテテッとカセットデッキへと向かうと流れていたテープを止めてテープを取り出すと、手に持っていたテープを代わりにセットしてカチッとスイッチを入れて曲を流したのだった。
取り出ししたテープを両手の手のひらの上に大切そうに乗せて、トテテテテテテテッと歩いて戻ってきてテープをケースにおさめると、深みのある赤色の巾着を取り出しそのテープを入れると大切そうに抱きかかえて、
「これでよしっ!!」
と満足そうに微笑むと、
「しょおさん、これで大丈夫?」
と聞いてきたので、
「はは。
潤、ありがとう。」
と言い潤の頬をそっと撫でてやると潤は気持ちよさそうに目を細めて微笑んでいたのだった。
そんな潤の顔を見つめながら…。
潤の紫色の瞳は綺麗だよな。
顔も整っているし背中に羽根も生えて本当に天使みたいだよな…。
唇もプルプルで…。
ってこの間あの唇に…キスしたんだよな…というか…されたんだよな…。
潤の唇って柔らかくて気持ちよかったよなー…。
と思いながら潤を見つめていると…。
「ねぇ、翔ちゃん。
潤ちゃんにチューするの?」
と突然まーくんが聞いてきたので、
「はっ!?」
と声をあげると、
「えー。
だって、翔ちゃんずっと潤ちゃんの唇見てニヤニヤしてるし。」
とまーくんが真剣な顔をしてそんな事を言ってきたのだった。
「えっ!?」
と言うと、まーくんが両手で自分の目を隠し、
「翔ちゃん、僕見てないからさ。
ほらっ!!
どうぞっ!!」
と言い始めて…。
まーくん…。
そんな『ほらっ!!どうぞっ!!』と言われてキスする人なんかいないから…。
と、心の中でツッコミを入れながら、
「まーくん、違うから。」
と言うとまーくんは長くて綺麗な指を広げると、その隙間から俺を見つめて、
「えっ!?
そうなの?」
と驚いた顔をしてそう聞いてきたので、
「そうなんだよ。」
と答えると…。
「…そうなんですか…?」
と潤が俺を見ながら口を尖らせて小さな声でそう呟いたのだった。
「えっ!?」
と首を傾げて潤に聞き返すと潤は唇を尖らせたまま、
「…何でもないです…。」
と俯いてそう言うと顔をプイッと背けてしまっまのだった。
「じゅーん?
どうした?」
と潤に問いかけても潤は相変わらず口を尖らせてそっぽ向いたままで…。
潤は何で拗ねているのだろうか…?
と不思議に思っていると、リビングに流れるピアノの音に合わせて身体を左右に揺らしていたまーくんが、
「あっ!!
それよりもさ、翔ちゃん。
僕、翔ちゃんのピアノの生演奏が聞きたいなーっ!!」
と言ってきたので、
「あー。
俺の実家ならピアノがあるから、実家に行けば聞かせてあげれるよ。
まーくん、よかったら今度俺の実家に一緒に行ってみる?」
と聞くとまーくんは、
「えーっ!!
そうなんだーっ!!
じゃあ…。」
と言いかけたかと思うと、
「あっ!!
でもなー…。
…くんがダメだよね…。」
と呟きながら、
「うーん…。」
と天井を見上げて何かを考えていたので、
「まーくん、どうした?」
と聞くとまーくんは、
「カズくんにも翔ちゃんのピアノの生演奏を聞かせてあげたいんだよね。
だけど、それは無理だと思うんだよね…だから翔ちゃんの実家にお邪魔するのは無理かなー…。」
と寂しそうな表情をしてそう言ったのだった。
まーくんはきっと、カズに俺の実家に行く事を話すと怒られるから言えないんだろうな…、と思い、
「それならカズにも声を掛けてみるよ。
まーくんが怒られないようにちゃんと考えるから大丈夫だよ。」
とまーくんにそう言うと、
「そうじゃなくて…。
カズくん…〝ファンタスティックワールド〟に用事があって行く以外はお店を留守に出来ないんだよねー。
あー…。
困ったな…。」
とまーくんは頭を抱えてそう言ったあと…。
「あっ!!
そうだっ!!
そうだったっ!!
翔ちゃん、ジュンちゃんっ!!
僕、いい事思いついたよっ!!」
とまーくんは黒目がちな瞳をキラキラとさせてそう言うと続けて、
「あのね、翔ちゃんっ!!
魔法学校で使ってないピアノがあって、音楽の先生が貰い手を探していたんだよっ!!
それを貰ってカズくんのお店に運べば、翔ちゃんの演奏をカズくんに聞いて貰えるよねっ!?」
と言ったのだった。
すると、先程まで口を尖らせて拗ねていた潤が、
「まーくん。
カズくんのお店でもしょおさんのピアノの演奏が聞けるんですか?」
と紫色の綺麗な瞳をキラキラとさせて、まーくんにそう聞くと、
「うんっ!!
そうだよっ!!」
とまーくんは満面の笑みを浮かべて潤にそう答えたのだった。
「まーくん…。
一応カズの許可を貰っておいた方がいいと思うんだけど…。」
と言うとまーくんは、
「翔ちゃん、任せてっ!!
僕、カズくんを説得するから大丈夫っ!!」
と自信満々にそう答えたのだった。
俺の隣で、
「あー…カズくんのお店でもしょおさんのピアノの演奏が聞けるなんて僕、嬉しいです。
しょおさん、沢山ピアノを弾いてくださいねっ!!」
と潤は俺の腕にそっと触れながらそう言ったのだった。
「ああ。
頑張るよ。」
と言いながらも、心の中では…。
カズが素直にOKを出せばいいのだが、大丈夫だろうか?
と不安に思っていたのだが…。
「「やったーっ!!」」
「潤ちゃん、翔ちゃんの生演奏が聞けるねっ!!」
「うん、まーくんありがとうっ!!
カズくんもきっと喜ぶと思うよっ!!」
と無邪気に喜ぶまーくんと潤を微笑ましく見守りながら、
さてと…カズをどうやって説得するかな…?
と考えていたのだった。
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