アンティークショップ~紫の石~




















































〝ファンタスティックワールド〟の地図が置かれているテーブルに到着すると、潤はそっと俺の手を離したかと思うとニコニコとしながら楽しそうに地図を見始めたのだった。







地図の周りをゆっくり歩きながら見ていたかと思うと潤はある場所でピタッと動きが止まったのだった。


身を乗り出してその場所をずっと眺めていたので、



潤は一体何を見ているのだろうか?


と思い、潤の視線の先を追うとその場所は青色に輝いていて…。




青色…っていう事は…あれは確か…〝天界〟…だったよな…?




と思いながら潤の隣へと行き、一緒に地図の〝天界〟のミニチュアの様な世界を見つめつつ潤をチラチラと見ると、潤は楽しそうに微笑みながら〝天界〟を見つめていたのだった。




〝天界〟を見つめる潤の横顔は綺麗で…長いまつ毛が横からだとハッキリとよく分かり、背中の小さな羽根は時折パタパタ…パタパタ…と動いていて、まるで天使がそこに居るかのに美しかったのだ。





潤は…綺麗だな…。


と見惚れていると、


「ちょっとー、翔ちゃん…。
アナタ、ジュンくんを見過ぎだよ。」


近くにある丸テーブルでまーくんとハーブティーを飲んでいるカズにそう言われ、



「そ、そんな事ないしっ!!」



と言うと慌てて視線を潤から〝ファンタスティックワールド〟の地図へと移したのだった。





〝天界〟以外の他の国(?)をよくよく見てみると、それぞれの国に建てられている建物の特徴が違い、〝神界〟はギリシア神話に出てくるような神殿が中心に建てられており、〝魔界〟は中世ヨーロッパの城の様な建物、〝妖精界〟はレンガ造りの可愛らしい建物、〝魔法界〟は塔の様な物が中心の洋風の建物。



そして〝天界〟は教会が中心に建てられいたのだ。



そして…地図の中のミニチュアの世界では小さな小さな人(?)も居てその人々がチョコチョコと動いていたのだった。




「カズ、この〝ファンタスティックワールド〟の地図のミニチュアの世界、よく出来ているよなー。
建物も立派だし人も居て動いているし。」





と感心しながらそう言うと、カズはハーブティーを美味しそうに飲みながら、



「あっそれね。
ミニチュアではなくて〝ファンタスティックワールド〟を空の高い所から見ている状態なのよ。
なので全部〝ファンタスティックワールド〟に実在する建物や住民だったりして本物なんだよ。」



と答えたのだった。




「はっ!?
本物っ!?」



と思わず大声を出してしまったその時…。




〝天界〟の中に居る小さな小さな人が上を見上げた様に見えたのだった。



えっ!?

まさかな…?


と思いながら俺もその小さな小さな人を見つめていると…。



天使…?


白い大きな翼を持つ天使に見えたのだった。



潤は天使に憧れているからこの〝天界〟を見て楽しんでいるんだろうな?



と思いながら潤に



「潤。
天使が見えるね。」


と言うと…何となくその人の顔がぼんやりと見えたような気がして…。




「あっ!!
あの人…の翼は立派で…青い瞳をしているね…。
格好良い天使だね…。」



と言うと潤は〝ファンタスティックワールド〟の地図を必死で覗き込み、



「しょおさん…。
何処ですか?
僕、見えないです…。」



と言ってきた瞬間…。











カズがパッと立ち上がりこちらへ急いで来て、俺と潤の肩を持ち2人の間へと入り込むと、




「ごめんっ!!
翔ちゃん、ジュンくん。
ちょっと離れてっ!!」



と言いながら俺と潤を〝ファンタスティックワールド〟の地図から離したのだった。







「ジュンくん、ごめんね…。
もうお終いにするね。」


とカズが振り向いて潤にそう言うと…。



潤は不満そうな顔をしていたがカズは潤に近付き、潤の頭をそっと撫でて、



「ジュンくん。
本当にごめんね。」


と申し訳なさそうに謝った後、クルリと地図へと向き直すと、






「ROEKI•IMASHIO!!」



と叫びながら魔法の杖を〝ファンタスティックワールド〟の地図に振りかざすと、ミニチュアの世界はスゥーーーッと消えていき、地図はただの古びた紙へと戻ったのだった。




「まーくん、地図を急いで片付けて!!」


とカズがまーくんに言うとまーくんは、



「はーい、カズくんっ!!」



と言いながら走ってやって来ると、手際よく地図を元の様にクルクルと丸めるとそのまま手に持ってカウンターの奥にある扉へと消えて行ったのだった。





カズは珍しく焦った顔をして、



「危なかった…。
アイツ…相変わらず余計な事をしようとするんだからっ!!」


チッと舌打ちをしながらそう呟いたのだった。





















アンティークショップ 〜紫の石〜 ㊴
























先程までハーブティーを飲んでいた丸テーブルに戻ると、カズは何事もなかったかの様に椅子に座っており、



「カズ…。
さっきは一体どうしたんだよ?」



と言いながらカズの向かい側へと座ると、



「えっ?
何の事?」



と惚けるのでそれ以上カズに聞くのはやめたのだった。



潤が俺とカズの間に座ると、カウンターの奥の扉から戻ってきたまーくんが、


「翔ちゃん、さっきはよく見えたね?」



と言いながら俺の隣へと座りながらそう言ってきたのだった。




「えっ?
何が?」


と聞くと、



「〝ファンタスティックワールド〟の地図の中に居る住民が見えたんでしょう?」


と言われたので、



「ああ。
何となく…だけど見えたんだよな。」



と言うとまーくんは椅子ごとズズズ…と俺に近付いて来て、




「だって、豆粒にしか見えないのによく見えたよねー。
それに瞳の色まで見えるなんてー。」


と言うので、


「あれは…何となく…。
そうかな?と思って…。」



と答えると…。






まーくんは、


「翔ちゃんって凄いーっ!!」


と言いながら俺の顔をズイッと覗き込んできて…。


このままキスをされるんじゃないかという距離感で、まーくんの黒目がちな綺麗な瞳が俺の目をジッと見つめていると思っていたら…。




「あっ!!
ああぁーーーーーっ!!
翔ちゃん、すっごく目がいいんだねっ!!」


突然叫びながらそう言ったかと思うと、まーくんは更に近付きてお互いの鼻先が触れてしまい…。





ちょっとっ!?


まーくんっ!!


これ以上近付くと、唇当たるんじゃねっ!?



と焦っていると、




「えっ!?
あれっ!?
うそっ!?
翔ちゃんってもしかして…「まーくん、翔ちゃんから離れなさいっ!!」」



まーくんが何かを言おうとしたが、カズが椅子から立ち上がるとまーくんの椅子の背もたれをズズズ…引っ張り、まーくんを俺から引き離したのだった。



カズに椅子ごと引きずられているまーくんは、


「あっ!!
翔ちゃん、ごめんねっ!!」


と俺を見ながら両手を合わせて謝ってきたのだった。


「あ、いや…。
まあ…驚いたけど…。」


と言うとカズが、

「まーくんほら、翔ちゃんもジュンくんもビックリしているでしょう?
アナタ、距離が近すぎるんですよっ!!」



と言うので潤の方を見ると…。



潤は目をまん丸にして固まっていたのだった。




潤…?


大丈夫か…?



と思っているとカズがまーくんの肩をバシバシと叩きながら、



「まーくん貴方、距離感バカなんだからっ!!」


とまーくんを揶揄うようにそう言ったのだった。






それを聞いたまーくんが、



「えーっ!?
カズくんひどいよーっ!!」



と、しゅんと肩を落としながらそう言うのを見てカズはケラケラと笑っていたのだった。




「はいはい。
まーくんは少し反省してくださいねー。」


と言いながらカズがまーくんにそう言うのと同時に…。

《それよりも翔ちゃん…ジュンくん……》


とカズが喋っているのとはまた別の言葉を発するカズの声が聞こえたかと思うと…。








急にグイッと腕を掴まれたので、


「うわっ!!」



と声を思わず上げてしまうと、潤が俺の腕を思いっきり引っ張ってきたかと思うと、椅子ごと俺に近付いてきて、俺の腕に顔を擦り寄せてきたのだった。




えっ!?

ええっ!?

どういう事っ!?



と思いつつも、急に甘えてくる潤が可愛くて、



「ふはっ。
潤、どうしたんだよ?」


と思わず笑みをこぼしながら潤の頭を撫でてやりながらそう聞くと…。




俺を見上げてきた潤の紫色の綺麗な瞳はウルウルと潤んでおり、今にも涙がこぼれ落ちそうになっていたのだった。


「えっ!?
はっ!?
潤、どうしたの…?」


と聞いても潤は顔をフルフルと横に振るだけで、全く理由が分からず困っていたのだったが…。





「潤…?
どこか痛いの?
さっき嵐の中をいっぱい飛んだから羽根が痛いとか?」


と聞いても潤は

フルフル…

と首を横に振り、



「じゃあさ。
お腹が空いた?
夕飯前だったもんなー。」


と言っても潤は


フルフル…

と首を横に振るだけで…。




「じゃあさ…。
ニャーゲンダッツアイスが食べたいとか?」



「じゃあさ…。」



と次々と潤に質問をするが、潤は何を聞いても首を横に貼るだけで…。





他に何があるっけ…?



困り果ててカズを見つめると…。





カズと目が合ったのだが、カズはニコッと微笑むと椅子からそーっと立ち上がり、


「まーくん、向こうに行こうよ。」


とまーくんの手を引くとまーくんは、



「えっ?何で?」


と言っていたが、カズはそんなまーくんを、



「まーくん、いいから行くよっ!!」


と言いカウンターの方へと移動したのだった。










えっ!?


カズっ!?


どうしたっ!?






と思っていると、潤が急にギュッと俺に抱きついてきたのだった。





「潤…?
どうした?
言ってくれないと分からないよ…。」



と潤をギュッと抱きしめ返しながらそう言うと潤は、



「…あの…。」




「…さっき…。」



とポツリとポツリと話し始めたので、


「ん?」


と聞き返すと潤は紫色の綺麗な瞳をウルウルとさせながら俺の顔を見上げて、





「…だって…。
…しょおさんと…まーくんが……。」



と言ったかと思うと…。





俺の目の前には潤の綺麗な顔があり、紫色の綺麗な瞳がジッと俺の目を見つめてきたかと思うと、そっとその瞳は閉じられて…。





うわっ!!

潤のまつ毛なっがっ!!



と伏せられた瞼からは生える潤のまつ毛に気を取られていると…。







「…まーくん…。
…ズルいです…。」



と言う声と共に唇にふわりと何かが触れて…。





それは柔らかくて温かい感触があったのだった。



































アンティークショップ 〜紫の石〜 ㊴ 
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