アンティークショップ~紫の石~






































「カズ…。
これは一体…?」


目の前に広がるミニチュアの世界を呆然と眺めながらカズにそう問うと、



「ん?
〝ファンタスティックワールド〟の地図だよ。」



とカズは首を傾げてそう答えたのだった。



「〝ファンタスティックワールド〟…?」

と聞き返すと、

「そう。
俺とまーくんは〝ファンタスティックワールド〟の〝魔法界〟の住民でまーくんは〝魔法師〟で俺は〝魔導師〟なの。」


カズは左手の人差し指で地図の〝魔法界〟を指差しながらそう言ったのだった。



さっきからカズは、〝魔法師〟や〝魔導師〟と言っているのだが、それって本やゲームなんかには登場するけれど、実際にそんなのが存在するものだろうか?


そして〝魔法使い〟と〝魔法師〟、〝魔導師〟はどう違うのだろうか?



と疑問に思い、



「あのさー。
〝魔法師〟とか〝魔導師〟って…〝魔法使い〟と何が違うんだよ?」




とカズに聞くとカズはニッコリと笑い、


「ふふふ。
まあ、要は俺もまーくんも〝魔法使い〟なんだよ。
だけれど〝魔法使い〟にも色々あってさ。
〝魔法師〟、〝魔導師〟、〝魔術師〟…といった具合にね。

〝魔法師〟は…要するに魔法使いを育てる者…。
まあ、いわゆる魔法学校の先生の事なのよ。

〝魔導師〟も先生ではあるんだけど、魔法界はモチロンそれ以外の〝神界〟、〝天界〟、〝魔界〟、〝妖精界〟の選ばれし者達に〝魔法学〟やそれぞれの分野の事なんかを教えて育てて導くのが役割なのよ。
〝魔術師〟は〜…。」



とツラツラと説明をしてくれるのだが、俺の頭の中はハテナだらけの何がなんだがパルプンテ状態で…。




「カズ、ストップッ!!
もういいよ。」

とカズを止めるとカズは、


「えっ?
説明、もういいの?」


と残念そうな顔をしてそう言ったのだった。




異世界の事を説明してくれるカズには悪いが、急に〝神〟やら〝天使〟やら〝魔法使い〟なんて言われてもピンとこないし…。



〝魔法使い〟にも種類があって、ましてやカズやまーくんが〝魔導師〟に〝魔法師〟だと!?


それに〝魔術師〟がいて…?


妖精の潤にも驚いたが、次から次へと自分に馴染みのない言葉や世界が自分の身の回りに広がっていて、それを受け入れる柔軟性は…多分俺には備えられていなくて…。


「いや…。
頭の中を整理するので今、いっぱいいっぱいだから…。」



と困った顔をしてカズにそう言うと、カズはそんな俺を見てくすりと笑うと、



「まあ、急にそんな事言われれたら仕方ないよね…。」


と呟くとまーくんの方を見て、


「ねー。
まーくん。
美味しいハーブティー作ってよ。
頭がスッキリとするやつをさー。」




とまーくんに言うと、まーくんは太陽の様なキラキラとした笑顔で、


「うん。
カズくん、任せててっ!!」



と言うと、カウンターへと向かうとカウンターの奥にある扉へと消えていったのだった。































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「カズくーんつ!!
翔ちゃーんっ!!
ジュンちゃーんっ!!
お待たせーっ!!」


と言いながらまーくんはトレイにガラスのカップやハーブティーの入ったガラスのポットを乗せて運んできたのだった。



「翔ちゃん、ハーブティーでも飲んで落ち着いてよ。
ねっ!!」


と言いながらいつの間にやら用意されていたそんなには大きくはない丸テーブルの上にトレイを置いた。


ハーブティーの入ったガラスのポットを手に取ると、手慣れた手つきでガラスのカップにハーブティーを注ぎ、



「はいっ、どうぞーっ!!」

とニコニコと俺の顔を見つめながらテーブルの上に置き、


「翔ちゃん、こっちにおいでよ。」


と手招きをして丸テーブルの所に俺を呼ぶので、俺は丸テーブルへと移動して用意されていた椅子に座ると、


「まーくん…。
ありがとう。」


と言いガラスのカップを手に取り温かいハーブティーを一口飲んでみると…。



「んまっ!!」
  


と思わず声が出てしまったのだった。




ハーブだけではなくてフルーツの味もして飲みやすい味で、甘さだけではなくミントのスゥーッとしたスッキリとした後味があり、頭の中もスッキリといていくようだった。



「くふふふふっ。
それはよかった。」


とまーくんは微笑みながらそう言うと、


「ジュンちゃん。
ジュンちゃんもハーブティーを飲もうよ。」


と〝ファンタスティックワールド〟の地図に夢中になっているジュンにそう声を掛けたのだった。



ジュンは、

「うん。」


と返事をするが、地図の置かれている大きなテーブルの周りをグルグルと回りながら熱心に地図に広がるミニチュアの世界を見つめていたのだった。




「まーくん、ジュンくんには好きなだけ見せてあげなよ。」


とカズがまーくんにそう言うと、まーくんは、


「そうだね。
ジュンちゃんはきっと……が懐かしいんだろうね。」


とまーくんが言ったのだが、何が懐かしいのかハッキリとは聞き取れなかったのだった。



お茶をする用に用意された丸テーブルの俺の向かい側に座ったカズがテーブルに頬杖をつき、



「翔ちゃんはさー。
…妖精…の潤くんはすんなり受け入れているのに、俺やまーくんの〝魔法使い〟は受け入れ難いんだ〜。」



と琥珀色の潤んだ瞳で俺を見つめながらそう聞いてきたのだった。



「は?
ジュンの〝妖精〟っていうのもそんなにすんなり受け止められていなかったし。」



とカズに言うと、それを聞いていたまーくんが驚いた顔をして、



「えっ!?
カズくん…。
……は……じゃないの?」



と呟いたのだが…。


肝心な言葉は聞き取れず、



「まーくん、今何て言ったんだ?」


と聞き返すとまーくんは、口をパクパクさせるが言葉が出てこず、


「ちょっとっ!!
カズくん、また何かしたでしょうっ!?」



とカズを見ながらそういうと、カズは面白そうに、

「んふふふふふ。」


と笑うと、


「あんなにしっかりと魔法をかけたのに、まーくん気づいていなかったんだー?」


とニッと笑いながらまーくんにそう言ったのだった。






















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