アンティークショップ~紫の石~







































カズに言われて店内の片隅に置いてある深みのあるグリーンのベルベット素材のソファーへと潤を運んだ。

潤を横に寝かせても充分大きさのあるソファーへと潤を横たわらせると、潤がキュッと俺の腕を掴んで、



「しょお…さん…。
いっしょに…いて…ください…。」


と力無く弱々しい声でそう言ってきたので、


「潤。
大丈夫だよ。
側にいるからな。」


と言うと、どこからか茶色のフカフカした毛布を運んできたカズが、


「翔ちゃん、ジュンくんを膝枕してあげなよ。」


と顎でグイグイッと合図しなからそういうので、潤の頭をそっと上げソファーに座り潤に膝枕をしてやると、潤の口元は弧を描いたかと思うと、



「ふふふふふ。
ぼく…これ…だぁ〜いすきぃ…。」


とニッコリと微笑んで呟いたかと思うと、スゥースゥースゥー…と寝息を立てて眠りについたのだった。



そんな潤の様子を見て安心した顔をしたカズがそぉーっと潤に毛布をかけてやり、



「翔ちゃん。
少しゆっくりしていってね。」


とニッコリと微笑んでそう言うと指をパチンッと鳴らすと、くるり踵を返し自称まーくんの居るカウンターへとズカズカと歩いて向かって行ったのだった。


















アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉛






















気持ちよさそうに寝息を立てて眠っている潤の頭をそっと撫でてやっていると…。









「へえー。
エプロンなんかつけ翔ちゃんとジュンくんのお家で何をしていたのかなー?
まーくん♡」



と言うカズの声がカウンターの方から聞こえてきたのだった。





離れているけど目のいい俺にはカズの表情が見えて…。



カズの奴…顔は笑っているけど目が笑っていないよな…。



それに自称まーくんはカズに『まーくん』と呼ばれているうえに、カズが言うようにエプロンをつけていたのだった。


家に帰った時には〝まーくん〟の存在の方が気になって、服装までよく見ていなかったのだが…。



首元の詰まった黒のシャツに黒のズボンで姿で、シンプルな服装だけど飾り気がなくてもスタイルのいいまーくんはそれだけでも格好よく見えるのだ。



その黒の服の上に緑色のチェックのエプロンをつけており、あのエプロンは潤が料理をする時につけている紫色のエプロンの色違いだな…。



それにカズが『まーくん』と呼ぶという事は…まーくんは人間と犬…1人と1匹がいるという事なのだろうか…?





2人を見ながらそんな事を思っていると、まーくんは、



「えー。
ジュンちゃんとお料理を作っていたんだよ、カズくん。
今日もね、上手く作れたんだよーっ!!」



とニコニコと微笑みながら嬉しそうにそう答えたのだった。













え…?

まーくんは…天然なのか鉄のハートの持ち主なのか、カズは明らかに怒っているのに動じる事がなかったのだった。



でも…ウチでは『怒られる』と泣いていたよな?


あれはカズに怒られるのが怖くて泣いていたのではなかったのか…?



と思いながら見ていると、




「ほぉー…。
ジュンくんと一緒に料理を作っていたんだー。」


と怒りで明らかに肩を震わせているカズに対してまーくんは…。




「うん、そうだよ。
カズくん。
今日はねー…。」


とにこやかにそう言いながら喋り続けていたのだったが、




「まーくん、貴方ね…。
ジュンくんには絶対に逢ってはいけないと何度も言いましたよね?
それに翔ちゃんにはその姿では逢ってはいけないとも言いましたよね?」


とカズが呆れた顔をしながらそう言うとまーくんは、



「えー…。
僕もジュンちゃんや翔ちゃんに逢いたいもんっ!!
カズくんだけいつも逢ってズルいよーっ!!」


と子供の様に駄々をこね始めたのだった。





「ズルいって…。」


と言うとカズは頭を抱えて、


「まーくん、貴方は〝魔法師〟、俺は〝魔導師〟立場が違うのは分かってる?」



とまーくんにそう言ったのだった。



するとまーくんは、



「でも、サトちゃんから許可は貰ったんだよっ!!
サトちゃんは『逢えばいいさー。』って言ってくれたんだよっ!!」


と黒目がちな綺麗な瞳をキラキラとさせながらそう言ったのだった。





それを聞いたカズが目を大きく見開き、




「はぁーっ!?
サトちゃんがぁーっ!?」



と叫んだ後…。


「チッ。
サトちゃん…いや…大天使サトシ様…か…。
アイツまた何も考えずに余計な事を言いやがって…。」


と眉間に皺を寄せてそう呟いたのだった。









そんな2人の様子を見ていて疑問だらけなので、手を上げて、


「あ…あのぉー…。
質問です…。」



と声を掛けると、




「はいっ?」


と言い…カズが驚いた顔をしてこちらを見たのだった。


 


「あのさー。
〝魔法師〟とか〝魔導師〟とか〝大天使〟とかー…。
何が何だかパルプンテなんですけどぉー?」




と質問をすると、まーくんがにこやかに、

「ああー。
翔ちゃん、そればねー…「ってか、何で翔ちゃんに俺達の会話が聞こえているのよっ!?」」


と話し始めるとカズがその声を遮ってそう聞いてきたのだった。






「えつ?
はじめからずっと聞こえていたんだけど…。」



と言うと、カズはパッとまーくんの方を見た。




するとまーくんは、



「カズくん、ごめんね、ごめんね…。」



と両手を合わせてカズに頭を下げながら謝りながら、




「翔ちゃんにも聞いて貰おうと思って…カズくんの魔法解除しちゃったんだよね。」



と気まずそうにそう言うと…。





「まーくんっ!!
貴方って人はーいい加減にしろよーっ!!」





とカズはそう叫んだのだった。



















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