アンティークショップ~紫の石~
アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉚
嵐の中…自称まーくんが潤の手を引き…。
そして、自称まーくんに手を引かれている潤が俺の手を引いている状態で、黄色の点滅する光に少しずつ少しずつ近付いていき…。
黄色の点滅する光は…思いの外小さくて手のひらより少し大きいくらいだったのだ。
自称まーくんはその黄色の光を見て複雑そうな顔をしていたのだが口を、
「よしっ!!」
と動かしたかと思うと、意を決した様に点滅する黄色の光に左手を翳したのだった。
すると…。
点滅していた光が点滅を止め、それまで以上に光の強さを増していき眩しくて目を開けて入れなくなり、
「眩しっ…。」
と言いギュッと目を瞑ったのだった。
目を瞑ってはいるが黄色の光に吸い込まれる感覚があり、それは此処へ辿り着いた時の様に激しい感じはなく…何となく優しく包み込まれる感覚があり、暖かさも感じたのだった…。
アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉚
「こんのっバカがっ!!
やぁーっと捕まえたっ!!」
聞き覚えはあるが…俺の知っている声よりも低くてドスの効いた声が少し先から聞こえてきて、
ドスンッ!!
と床に尻もちをつく感覚があり、そぉーーーっと目を開けると…。
そこにはアンティークの家具や陶器の置物…テーブルに古めかしい絵画が所狭しと置かれていた。
見覚えのある店内をキョロキョロと見渡していると…。
「えっ!?
嘘っ!?
まーくん…貴方…。
ジュンくんと翔ちゃんも巻き込んでいたの…?」
と言うカズの声が聞こえたのだった。
声の方を見ると…いつもとは違って黒の上下の服にマントの様な物を羽織り髪も綺麗にセットされていて…まるで映画に出てくる英国の紳士の様ないつもとは全く雰囲気の違うカズの姿があったのだった。
「カズ…?
その格好はどうしたんだ…?」
と聞くと、
「ああ…。
今日は野暮用があって出掛けていたんですよ。」
と言いわざとらしく、
「ハァーーーーッ。」
とため息をつくと肩をすくめて、
「口うるさいジジイ共が多いから…この格好は仕方なしにしているんです。」
そう言いながらマントの様な服をグイグイッと引っ張って見せてくれたのだった。
「そうなんだ。」
そういえば前に潤と一緒に俺の実家に行った時…。
俺が弾くピアノを聞いた潤が注意しても何度も白くて小さな羽根を出してしまうので、カーディガンを袖を通さずに肩からかけて1番上のボタンだけとめてマントの様にして羽織らせてやると、
『ふふふ。
コレ、カズくんやまーくんみたいですっ!!』
と嬉しそうにクルクルと回って見せてくれたよな…。
それって今日のカズの格好の事を言っていたのだろうか…?
と思い、
「潤…。」
と潤に声を掛けたのだが…。
隣にいる潤はグッタリとして目を閉じていて、長いまつ毛が潤の白い肌に影を落としていたのだった。
繋いでいる潤の手も冷たくなっており…。
「潤っ?
大丈夫っ!?」
と問いかけると、潤はいつも以上に真っ白で血の気のない顔をして…目を瞑ったままコクリとうなずいたのだった。
その様子に気が付いたカズが、
「まーくん、どいてっ!!」
と自称まーくんを突き飛ばし、潤の元へと走り寄ってきたのだった。
「ジュンくん…。」
と潤に声を掛けて、潤の頬にそっと触れたカズが、
「これは不味いな…。」
と呟くと、
「翔ちゃん。
ネックレス見せて。」
と言われたので、傷つかない様に服の中に入れていたシルバーのフェザーの形をしたネックレスをそっと服の中から抜き出すと、紫色の石のついたペンダントトップをカズに見せた。
服に触れた時に気付いたのだが…あれだけの雨を浴びていた筈なのに、潤も俺も濡れたおらず…。
自称まーくんだけびしょ濡れの状態だったのだ。
「石には傷がついていないから大丈夫だね…。」
と言うとカズは店内の片隅を指差した。
カズの指差す方を見ると…深みのあるグリーンのベルベット素材のソファーが置いてあり…。
でも…。
さっきまであんなのなかったよな…?
と不思議に思っていると、
「翔ちゃん、潤くんをあのソファーに運んでくれる?」
とカズに言われて、
「ああ。
分かった。」
と言い、
「潤…。
移動するからね。」
とグッタリとしている潤に声を掛けると、潤をそっとお姫様抱っこをして店内の片隅に置かれた深みのあるグリーンのベルベット素材のソファーへと運んだのだった。
アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉚
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