アンティークショップ~紫の石~






















 















まーくんだよーわんっ!!』だとっ!?




待て待て待て待てっ!?



この人は一体何を言っているんだっ!?


『わんっ!!』


と言っているがこの人はどう見ても人間で、俺の知っているゴールデンレトリバーのまーくんではない。



まだ俺を騙そうとしているのだろうか?




思いっきり自称まーくんを睨みながらも俺の頭の中はパニクっていた。




自称まーくんは相変わらずキラキラとした太陽の様な笑顔で俺を見つめてきて…。




「ねっ?ねっ?ねっ?
翔ちゃん、これで分かったでしょう?」



と、フローリングの床の上に座り込んでいる俺の足の上に乗っかる状態で、自称まーくんは意味不明な事を言いながらズイッと俺の顔を覗いてきたのだった。




うわっ!!


ち、近いっ!!



キスされるんじゃないか?と思うくらいの至近距離でその人の顔を見ると…。




優しい笑顔で、それでいて爽やかイケメンで…悪い人じゃなさそうな気もするんだよな…。







でもこの人は俺の知っている犬のまーくんではないんだ…。






とりあえず…何をどうすればいいんだ…?



と目の前にいる自称まーくんの顔を見つめながら悩んでいると…。







潤がトテテテテテテテッと俺の元へと駆け寄ってきたのだった。






潤は心配そうな顔をして、



「しょおさん…。
大丈夫ですか?」



と言うと、自称まーくんに向かって、




「まーくん、しょおさんの上に乗ったままだとしょおさんが重いです。」



と言った。



すると自称まーくんは、




「あーっ!!
翔ちゃん、ごめん、ごめん、ごめんねっ!!」



と言うと素早く立ち上がりペコペコと頭を下げてそう言った。




そんな自称まーくんに潤は、



「もう。
まーくんダメですっ!!」




と頬を膨らませてそう言った後、





「しょおさん…大丈夫ですか…?」



と言いながら俺の顔を覗き込み、手を差し出してくれたのだった。



その潤の白くて綺麗な手を掴み立ち上がると、



「潤…。
この人誰だよ?
よく分からない事を言うし…。
それに潤、知らない人を家にあげてはダメだよ。
潤が危険に晒されるんだよ。」


と潤の両手を自分の両手で掴み、潤の紫色の綺麗な瞳を見ながらそう言うと潤は、



「しょおさん…。
まーくんは知らない人じゃないです。
カズくんのお店で何度かお見かけた事があるんです。
カズくんとまーくんはお友達なんです。」


と俺を見上げながらそう言ったのだった。















アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉗





















「潤…。
カズの所に居るまーくんはゴールデンレトリバーなんだよ。」



と潤を諭すようにゆっくりと優しい口調でそう言うと、潤は紫色の綺麗な瞳をパチクリと開き、



「ゴールデンレトリバー…?」



と言い…。





「…って、何ですか?」



と聞いてきたのだった。







そ、そうか…。


潤には犬種は分からないか…と思い、





「あ、あ…あー…。
ゴールデンレトリバーはね犬なんだよ。
だからまーくんは犬で人間じゃないんだよ。」


と言い、


「あーでもまーくんは天才犬だけどね。」


と付け加えると自称まーくんは、




「えっ!?
僕、天才なんだってっ!!
ジュンちゃん聞いたっ!?
僕、凄くないっ!!」



と嬉しそうな顔をして潤にそう言うと、潤も笑顔で、



「えーっ!?
まーくん、天才なんですねーっ!!
凄いですーっ!!」



と2人が手を取り合ってピョンピョンと跳ねて喜んでおり…。





そんな可愛らしい潤の様子を見て、



微笑ましいなぁー。



と顔が一瞬頬がゆるんだのだが…。



いやいやいや、今は可愛い潤に癒されている場合じゃないし、2人とも〝犬〟ではなく〝天才〟に反応しているし…。




問題はそっちじゃなくてまーくんが〝犬〟ではなく〝人間〟なのがおかしいっていう事だろうっ!?



しかも自称まーくんは、潤を狙っている不審者かも知れないんだぞっ!!



と思い、



「こら、潤っ!!
その人は危ない人だから離れなさいっ!!」




と言うと、潤を自称まーくんから引き離したのだった。








「翔ちゃーん…。
僕はまーくんだよー…。」



と悲しそうな声で自称まーくんがそう言うと、潤も真剣な顔でコクコクコクッと頷き、



「しょおさん、まーくんです。」



と言いながら自称まーくんを見つめたのだった。







「でも俺がカズの店で逢ったのは君ではなく、ゴールデンレトリバーの…犬のまーくんなんだよ。」




と言うと、







「あれは…。」



と言うと自称まーくんは押し黙ってしまったのだった。




「ほら。
嘘を言っているから何も言えないんだろう?」



と言うと、自称まーくんは困った顔して、





「そ…それはぁ…。」



と言うが、




「…言えないというか…。
言ったら怒られちゃうんだもんな…。」




とブツブツと呟いているかと思うと急に大声を出して、




「あぁーーーっ!!
どうしようーっ!?
言わないと翔ちゃんに信用して貰えないし…。
言っちゃうと怒られちゃうし…。」


と頭を抱えて悩み始めたのだった。





「…翔ちゃん…。
どうすればいいと思う…?」



と真剣な顔をして俺の顔を見つめてきたのだが…。



その黒目がちな綺麗な瞳には涙を浮かべており…。





えっ!?



泣きポイントは何だよっ!?







もしかして…。



泣き落とし作戦か…?





と思っていると、




「グズっクズっ…。

言っちゃったら……に怒られちゃうんだけど…あれは……が……。」



と本気で泣きながら誰かに怒られると訴えてくるのだが、その肝心な〝誰〟がかは聞こえず、



「あの…。
聞き取れないんですけど…。」




と自称まーくんにそう言うと…。




自称まーくんは俺の方を見て、


「だってっ!!
……が、僕に犬になる魔法をかげたんだもんっ!!」



とグズグズと泣きがらそう言ったのだった。







「へぇー。
魔法ねー。
魔法なら仕方ないよなー…。」






と思わずつられてそう言ったのだが…。





はぁーーーっ!?


魔法だとっ!?




魔法だなんて非現実的な事ある訳ないじゃないかっ!!




と思い、





「って、待ってっ!?
魔法ってなにっ!?」



と思わず叫ぶと急に…。




キィィィィィーーーーーーーーーーンッ…






と耳鳴りがしたかと思うとグニャリとリビングの床が歪み…。



足元がフラフラとしてグラリとバランスを崩したのだった。















































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