アンティークショップ~紫の石~


























アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉕
















数日後…。





仕事が終わり帰ろうとすると後輩が、



「櫻井さん。
これ、櫻井さんの所の小鳥にあげてください。」


と言い紙袋を差し出してきたのだった。



中を見ると例の如く鳥の餌が入っており、



「いつも、ありがとう。」



と言うと、




「いえ…。
櫻井さん家の小鳥が食いっぱぐれたら可哀想なんで…。」



とニヤリと笑いながらそうな事を言うもんだから、



「お前…ホント一言多いよなー。」


と言いつつも…。


後輩のお陰で潤が毎日ベランダに小鳥の餌を置いて鳥たちがベランダに食べに来るのを楽しみにしているので、




「まあ、お前のお陰でウチの鳥はご機嫌だから許してやるよ。」



と言うと後輩は嬉しそうな顔をして、


「櫻井さん家の小鳥、ちゃんと食べてくれているんですね。」


と言うので、食べているのは潤ではないが…。



「ああ。
毎日(鳥が遊びに来るのを)楽しみにしているよ。」



と言うと、


「あー、よかったー。

じゃあ、俺、お先に失礼します。」



と言って帰って行ったのだった。








何だかんだと言ってアイツはいい奴なんだよな…。


と帰って行く後輩の背中を見送りながら、そんな事を思ったのだった。






仕事も終わっているし、潤が美味しい飯を作って待ってくれているので俺も帰ろうと思い、




「さてと…。
俺も帰るとするか…。」



と呟くと、帰るためにエレベーターへと向かったのだった。








エレベーターホールへと向かうと、定時のこの時間はいつも誰かしら居るのに今日は珍しく誰もいなくて、







珍しいな…。



と思いながらやってきたエレベーターへと乗り込んだのだった。
















アンティークショップ 〜紫の石〜 ㉕





















エレベーター内の移動している階を知らせるディスプレイを眺めていると一瞬エレベーターがガタンッ!!と大きく揺れたので、




えっ!?


地震…?



と思い慌てて頭を低くしながら様子を伺っていると…。








♪ポ〜ンッ♪


という到着した音がしたので、何階かを知らせるディスプレイに目を向けると、




▼1



と1階に到着した表示されていたのだった。






さっきのは何だったんだろうか?



無事に1階に到着してよかったなー、と思いながらエレベーターから降りると…。













そこは見覚えがあるけれど…。





けれども会社のビルの1階ロビーとは全く違い…。






思わず、


「はっ!?」



と声を上げてしまったのだった。




なぜならそこは…。












俺の住むマンションのエレベーターホールだったのだ。



しかも自分の住んでいる階の…。











「はっ?
どういう事っ!?」



と驚いてキョロキョロと辺りを見渡していると廊下の向こう側から、トテテテテテテテッという聞き覚えのある足音が聞こえたかと思うと、







「しょおさーんっ!!
おかえりなさいーっ!!」




と、グレーのプルオーバーのパーカーにジーパン姿の潤が嬉しそうに駆け寄って来たのだった。






「ただいま…。
って、何で潤が居るんだっ?」



と頭の中が整理出来ずにパニックになっていると潤は、



「ふふふふふ。 
まーくんが言った通り、しょおさんがいました。」



と言いながら、潤は嬉しそうに俺の顔を見つめてきたのだった。




「まーくんが…?」



と聞き返すと、



「はい。
まーくんとお料理を作っていて、そうしたらまーくんが『翔ちゃんが帰ってきたから、ジユンちゃんお迎えに行っておいでよ。』と言ってくれたんです。」



と潤はニコニコとしながらそう言ったのだった。





まーくんは犬だから耳がいいのか…。


と思ったのだが…。




いや、いや、いや…。




そんな事より何で会社に居た筈の俺が自分の家に居るんだよっ!?




と頭を悩ませていると潤が、



「しょおさん…。
難しい顔をして、どうかしたんですか?」





と聞いてきたので、



「いや…。
それが…。
俺、会社のエレベーターに乗ったはずが自分のマンションに到着したんだよな…。」



と答えると、潤は真剣な顔して、



「しょおさん…。
まーくんが『今日は翔ちゃんが早く帰ってきてくれますようにっ!!といっぱい思えば翔ちゃんが早く帰ってきてくれるよっ!!』って、言っていたんです…。

たから…。
僕のせいかもです…。」



と言ってきたのだった。




「だから…。
ビックリさせてゴメンナサイ…。」



と、しゅんとしながらそんな事を言うもんだから、



「ふはっ。
潤のせいじゃないよ。
もしかしたら俺の勘違いだったのかなー?」



と潤を落ち込ませない為におどけながらそう言い、



「あっ!!
そうだっ!!
腹が減っているから早く家(うち)に帰りたいと思ったんだろうなー。」



と続けてそう言うと潤は、


「ふふふ。
だったらお夕飯の支度はもう出来ていますよ。
しょおさん、早く帰りましょうっ!!」



と言うと両手で俺の右手を引くとトテテテテテテテッと早歩きをしながら俺達の家へと向かったのだった。














          

























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