アンティークショップ~紫の石~
アンティークショップ 〜紫の石〜 ⑱
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ピアノを奏でる音が止むと、
パチパチパチッ…。
と拍手が起こった。
拍手の音がする方に顔を向けると、紫色の瞳をキラキラとさせた潤が大きく手を叩きながら、
「しょおさん、凄いですーっ!!」
と言い、拍手を続けていたのだった。
「ふはっ。
潤は大袈裟だなー。」
と言うと潤はこれでもかというくらい首を横にブンブンと振り、
「大袈裟なんかじゃありませんっ!!
すっごく素敵でしたっ!!
僕、しょおさんのピアノの音色に感動しましたっ!!
僕、しょおさんのピアノ大好きですっ!!」
と大きな瞳を更に大きく開き、真剣な顔でそう言ったのだった。
「ふはっ!!
でも喜んで貰えてよかったよ。」
と言い椅子から立ち上がり潤の方へと行くと、潤は椅子に座ったまま俺を見るげて、
「しょおさん。
ありがとうございます。」
と言うと、せっかくおさめていた筈の背中の白くて小さな羽根がいつの間にやら姿を現しており、潤の背中でパタパタッと羽ばたかせていたのだった。
「ちょっ!!
潤っ!!
ここではこれはダメだってっ!!」
と慌てて白くて小さな羽根にそっと触れると
、
「あっ!!
しまったっ!!」
と潤は右手を口元に当ててそう言うと急いで羽根おさめたのだった。
ちょうどその時ピアノ部屋のドアがガチャッと開き、
「翔、潤くん。
よかったらお茶にしない?」
と母が入ってきたのだ。
心の中で、
「セーフッ!!
見られなくてよかった。」
と呟いたのだった。
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昨晩、潤が俺のピアノの演奏を聞きたいと言ってきたので、急遽俺の実家に来て潤にピアノの演奏を聞かせてあげる事となったのだった。
潤を家族に説明するのにまさか俺の胸元にある、
『このネックレスの紫色の石の妖精の潤です。』
と言う訳にもいかず…。
どうしようか…?
と悩んのだが…。
あれこれ悩んだ結果、俺の家族が会う機会がないでだろう人物の身内と説明する事にしたのだった。
そうそれは…。
『職場の後輩の弟さんなんだ。
ピアノを教えて欲しいと言われて。』
と苦しい理由を付けて説明をしたのだが、案外皆んなすんなりと受け入れてくれて…。
母なんて、
「まあ、可愛らしい子ねっ!!」
と大喜びではしゃいでいたのだった。
『ファッションの専門学校に通っているからお洒落だよなーっ!!
あ、この瞳の色はカラコンなんだってっ!!
最近のカラコンは色んな色があるんだってさー。』
と説明したのだった。
母や弟は、
「うわーっ!!
綺麗ねーっ!!」
「よく似合ってるねーっ!!」
と潤に近付いて瞳の色をジロジロと見るので心臓に悪くて…。
当の潤はニコニコとして2人にされるがままだったのだった。
(そんなに潤に触るなよっ!!
俺だってそんなに触った事ないぞっ!!)
潤には、昨日購入した洋服の中でもとびっきりお洒落な洋服を着て貰いそれらしい格好をしているので(あ、選んだのは潤なので安心してくださいっ!!)、父も母も弟も疑っている様子はなく内心ホッとしたのだった。
潤は潤で自分にはよく分からない質問には、終始ニコニコと笑って頷くので、ウチの家族は潤のその可愛い笑顔が見れるだけで質問なんてどうでもよくなっている様子で、
こういう時に潤の天然はかなり役に立つんだな…。
と感心してしまったのだった。
母の用意してくれたケーキを食べ終わると、これ以上一緒にいて矛盾する説明をしてはいけないので、
「それじゃあ、俺達ピアノの練習の続きをするよ。」
と言い立ち上がると、
「えーっ!?
もう少し一緒に居ましょうよーっ!!」
と言う母の声は無視して、潤を連れてピアノ部屋へと移動したのだった。
濃いめの色の木で出来たドアにはくすんだゴールド色のドアノブが付いており、そのドアノブをガチャッと開けて、フローリングの床に白い壁に庭の見渡せる窓のあるピアノ部屋に入ると、部屋の片隅に置いてあった椅子を一脚持って潤の為に用意している椅子の横に置くと俺はドサリと座ったのだった。
「潤も座りなよ。」
と言うと潤は、
「はい。」
と答えるとチョコンと椅子に座ると足をブラブラとさせていた。
潤を見て、
「はぁーーーーっ。
ごめんな、潤。
ウチの家族が興味津々で潤に質問ばっかして。」
と言うと、隣の椅子に座っている潤は、フルフルと首を横に振ると、
「僕。
とっても楽しかったです。
それにしょおさんのご家族にお逢い出来て嬉しかったですっ!!」
と満面の笑みを浮かべてそう言ったのだった。
「それならよかったけど…。」
と言うと潤は、
「うん、嬉しかったですっ!!」
と言った後、
「しょおさん、それよりもっ!!」
と言うと、紫色の瞳をキラキラとさせてピアノと俺を交互何度も何度も見たのだった。
そうして、
「早く次の曲が聞きたいですっ!!」
と、ワクワクとした顔でそう言ったのだった。
「ふはっ!!
分かったよ。
じゃあ、ピアノを弾くな。」
と言い、楽譜のページを開いて曲を選び弾き始めたのだった。
ピアノを奏でる指は自分の指なのだが、今日はいつも以上に軽やかにピアノを演奏する事が出来ている様な気がしたのだった。
潤が居るから俺は張り切っているのかな…?
と、思うとクスリと笑みが溢れてしまったのだった。
こんな風に穏やかに…ピアノを演奏出来るなん幸せだよな…。
と思いながら、潤の為にだけピアノを奏でたのだった。
ふと気がつくと…。
潤が俺の横で指揮者の様に手を振りながら演奏を聞いていて…。
あれ…?
この光景…?
と思ったのだが…。
なんだっけ…?
と思い出せず…。
そのまま潤の指揮に合わせてピアノを演奏し続けたのだった。
その後、何度も羽根を出してしまう潤を注意し…。
「俺の家族に見られたら大変だからさ。」
と説明をして…。
その度に潤はしゅんとして反省をするのだが、ピアノの音に合わせて指揮をすると興奮して羽根は現れてしまう様で…。
最後ら辺は潤の羽織っていたカーディガンを肩からかけて1番上のボタンだけ留めてマントの様にした状態にして羽根を隠したのだった。
潤は、
「ふふふ。
コレ、カズくんやまーくんみたいですっ!!」
とクルクルと回って喜んでいたが…。
カズがこんな格好したのを見た事はないぞ…。
カズのヤツ一番最初に逢った時に可愛らしい格好をしていて、
『この格好…俺には似合わないでしょう?
着慣れなくて恥ずかしいんですよね。』
と言っていたクセに逢う度に可愛らしい格好をしているし、マントをしているイメージはないよな…。
それにまーくんなんて…。
犬だから問題外だろうっ!!
いや…犬用の服でマントを着せているのかな…?
ハロウィンとか…?
と考えていると潤が、
「カズくん、『正式な場での格好はこれなんだよ。』と言っていましたー。」
とますます意味不明な事を言ってきたのだった。
「しょおさん、早くーっ!!」
と、潤がピアノの演奏をねだるので潤の言っていた意味不明な事は置いておいて、潤の為の演奏会に神経を集中させると演奏を続けた。
クルクルと回るマント(みたいな)姿の潤を愛おしく思いながら見つめて、ピアノを奏で続けたのだった。
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⭐⭐to becontinued⭐⭐
いつもお話を読んでくださってありがとうございます
今のところ何のところゆるゆるした内容なのですが、皆様大丈夫でしょうか…?
お話の進みもちょっぴり遅いのですが、気長に読んでいただけると嬉しいです