アンティークショップ~紫の石~










































カズの用意してくれたアフタヌーンティーを腹いっぱいに食べた俺と潤は、



「あーっ!!
美味かったーっ!!」


「お腹いっぱいですー。」



と言い、手を合わせて、



「「ごちそうさまでしたっ!!」」


と言うとカズが、


「んふふふふふ。
満足してもらえたみたいでよかったよ。」



と嬉しそうに微笑みながらそう言ったのだった。




「さてと…。
帰るとするか…。」


と潤に言うと潤はコクンと頷き、席を立ったのだった。 



するとカズがいつの間にやら白い紙で出来た箱を2つ手に持っていて、



「コレ、ジュンくんの好きなモンブランやカニクリームコロッケとかが入ってるから、よかったら帰ってから食べてよ。」


と言うと紙袋の中に入れて潤に渡した。



「カズくん、ありがとうっ!!」




と潤は嬉しそうにカズから紙袋を受け取ると、潤は嬉しそうに俺に紙袋を見せると、


「カズくんに貰っちゃいました。」


と言ったのだった。





それを見て俺はカズに、


「カズ、助かるよ。
ありがとう。」



と言うとカズは、


「まあ、可愛いジュンくんの為ですからね。」


とニッと笑いながらそう言った。





「じゃあ、今日はありがとう。」


とカズに礼を言い、入口のドアへと向かおうとすると潤がキョロキョロと店内を見渡し、



「カズくん。
今日は居ないんですか?」


とカズにそう言うとカズは一瞬、何の事?といった顔をしたが直ぐに潤が言いたい事が理解出来たらしく、



「ああ。
まーくんは今日は居ないんですよ。
彼はいつもここに居る訳ではないので…。」


と言うと顎に左手を当てて、


「ふーん。
そういう事が…。」



と呟き何かを考えていたかと思うと、



「…ジュンくん。
まーくんに逢った事があるの?」


と潤に聞いたのだった。






すると素直な潤は頷こうとしたが…。




コクッと縦に動かした顔を直ぐに横にブンブンと振り、



「ううん。
えっと…逢った事は無いです…。

いつもお料理の食材を届けてくれるので、それで…まーくんにお礼を言おうと思って…。」


と答えると、困った顔で俺の顔を見てきたのだった。




まーくんがウチに来ている事はカズにはバレてはいけないと言っていたのに、潤は墓穴を掘ってしまった様で…。




潤が困っているのに助けない訳にはいけないので、





「あー。
そうそう、まーくんにお礼を言いたかったんだよなー。
あーあー。
今日はまーくんに逢えなくて残念だなー。」


わざとらしいかな…?


と思いながらも大袈裟に、


「あー、残念だなー…。」


とガッカリとしながらそう言い、


「今日もまーくんのあの賢い姿を見たかったよなー。
まーくんは本当に天才犬だよな。
なあ、カズ?」


と言うとカズは複雑そうな顔をして、



「……。
翔ちゃん…。
多分、貴方はまーくんの事を色々と誤解しているんだと思いますよ。
まあ、いいけど…。
まーくんは、天才なんかじゃなし、どちらかというと…。」


と言うので、



「どちらかというと…?」



と聞くと、カズは急に口元をくるんと上げて悪そうな顔をして、



「んふふふ。
それは今後のお楽しみで。」


とニヤリと笑うと、



「じゃあ、そこまで送りますよ。」


と入口のドアを指差してそう言ったのだった。
















アンティークショップ 〜紫の石〜 ⑯

















カズの店から出るとすっかりと日が暮れており、外は薄暗くなっていた。



「じゃあね。
ジュンくん、翔ちゃん。
気をつけて帰ってね。」



とドアの所でカズが手を振りながらそう言い、




「カズくん、バイバイ。」


「カズ、またな。」



と言い、俺と潤はカズに手を振り返しアンティークショップをあとにしたのだった。








昼間は暑いくらいなのだが、夜になると風がほんのり冷たく秋を感じさせる季節となっていて、潤と2人夜道を歩いていると例の如く潤がキョロキョロと辺りを物珍しそうに見渡しながら歩いていたのだった。





フラリフラリと歩く潤は危なかしくて、


「こーら、潤。
危ないから前をまっすぐ見て。」


と言うが潤は、


「はーい。」


と返事をするものの、あっちフラこっちフラとフラリフラリと歩く事を止まないので、今日買った荷物を右手に全て持ち空いた左手を潤に差し出すと、


「じゅーん。
危ないから手を繋ごっか?」


と潤に言うと、街頭の明かりに照らされた潤の顔は満面の笑みとなり、紫色の綺麗な瞳をキラキラとさせて、


「はいっ!!」



と返事をすると俺の手をギューッと握りしめてきたのだった。



俺が暑がりのせいなのか潤の手が冷たすぎるのかは分からないが、ひんやりと冷たくて気持ちがいい潤の手をギュッと握り返すと、潤は嬉しそうに俺の隣でスキップをしながら歩いていたのだった。


そんな楽しそうな潤の姿を見ていると、







ああ…。

懐かしいな…。



ふとそう思ったのだった。




懐かしい…?



って、待てよ俺っ!!



懐かしい…ってどういう事っ!?


ああ…。

スーパーに買い物に一緒に行く時手を繋いで行くよな…?


でもそれとは違う感じがして…。




どういう事?

なんなんだろうか…?



潤とこうやって歩いている事に対して懐かしいと思う自分に驚いてしまい、暫く考え込んでしまっていると…。




「しょおさん…。
大丈夫ですか?」


と潤が心配そうに俺の顔を見上げてそう聞いてきたので、



「あ、ああ…。
大丈夫だよ。」



と答えると、


「あー、そうだっ!!
帰ってから…何の映画を見ようかな?と考えていたんだよ。」


と言い誤魔化すと、



「えいが…?」


と潤が聞き返してきたので、



「そう、映画。
買って見れていないDVDがたまっているから一緒に見ような。」


と言うと潤は、


「んー?」


と何の事?といった顔で俺を見つめてきたので、


「えっと…。
潤がウチの家のテレビでドラマとか見てるよね?
あんな感じのものだよ。
色んな物語を見るんだよ。」


と言うと潤は何となく理解が出来たようで、


「はいっ!!
楽しみですっ!!」


と繋いだ手をブンブンと振りながら嬉しそうな声でそう返事をしたのだった。





潤がご機嫌だと俺も嬉しくなり、俺は明日も休みで今日の夜は潤とゆっくりと過ごす事が出来るので、



「明日も俺休みだから、今日は夜更かし出来るぞ。」




と潤に伝えると潤は、



「しょおさん、明日もお家に居れるんですかっ!?」



と驚いて聞いてきたので、


「ああ。
明日も潤と一緒に過ごせるよ。」



と答えると潤は、


「嬉しいですっ!!」


と言うと、


「♪〜♫〜♩〜♪〜♫〜♩〜…」



とご機嫌に鼻歌を歌い始めたのだった。






コンビニの前を通りかかったので潤に、



「潤。
今日は夕飯を買って帰ろうか?」



と言うと潤は、



「んー。
お腹いっぱいなので飲み物だけでいいです。」



と言ったのだった。





まあ、確かにカズの所でアフタヌーンティーをたらふく食べてきたので腹いっぱいだよな…。

それにカズの持たせてくれたお土産もある事だし、腹が減ってもどうにかなるよな…?



と思い、とりあえずコンビニに寄って飲み物を買って帰る事にしたのだった。





 
















アンティークショップ 〜紫の石〜 ⑯
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