アンティークショップ~紫の石~
カズの店へと向かっている途中潤が俺の服の裾をクイッと引っ張り、
「しょおさん…。
カズくんの所に着く前にお願いしたい事があります。」
と言ってきた。
上目遣いで可愛らしく。
純粋な潤の事だから計算なんかではなく自然にだろうけど、こんなに可愛らしく、
『お願いしたい事があります。』
なんて言われたらそんなの、
「ああ、いいよ。
お願いされてあげるよ。」
と答えるしかないよな…。
全く…この可愛い妖精は俺をどうしたいんだよっ!!
潤はそんな俺を見て、
「ふふふ。
しょおさん、まだ内容も聞いていないのに。」
と可愛らしく微笑むんだ。
「で、お願いってなんだい?」
と聞くと潤は、
「あ、そうでした。
あの…まーくんがしょおさんのお家に遊びに来ている事をカズくんには内緒にして貰いたいんです。」
と俺の目を見ながら困った顔をしてそういったのだった。
「えっ?
何で?」
と聞くと、潤は気まずそうな顔をして…。
「まーくん…。
カズくんの許可を貰わずに来ているみたいなんです…。」
と言った。
ああ…。
そういえば前にカズの店を訪ねて行った時に、まーくんは勝手にウチに来ていたっぽいもんな。
とあの時の事を思い起こし、カズにバレたらまたまーくんはあのカウンターの近くにある扉に閉じ込められてしまうんだろうな…。
大きな身体でシュンと落ち込むゴールデンレトリバーのまーくんの姿が想像でき、それはそれで可哀想だな…。
と思い、
「ああ…。
分かったよ。
カズには言わないと約束してするよ。」
と言うと潤は、
「しょおさん、ありがとうっ!!」
と嬉しそうに微笑んだのだった。
アンティークショップ〜紫の石〜 ⑫
暫く歩くと、赤煉瓦の壁には蔦がびっしりと絡まったレトロな雰囲気の建物が見えてきたのだった。
そのまま店の入り口へと向かいガチャッとドアを開けると、
♪カラン〜カラン〜カラ〜ン〜♪
とドアベルが店内に鳴り響き、俺達がやって来た事を告げたのだった。
暖かみのあるオレンジ色の照明が優しく迎えてくれる店内に入り、
「こんにちはー。」
と店の中にいるであろうカズに声を掛けた。
潤はアンティークな家具や絵、テーブルに陶器の人形や食器類が所狭しに並ぶ店内をキョロキョロと見渡し、興味津々で色んな物を眺めては指でつついたりしていた。
するとカウンターの方から、
「いらっしゃーいませー。」
と少し高めの声がした。
すると潤が、
「カズくんっ!?」
と言うとトテテテテテテテッとカウンターへと走り寄ったのだった。
「やあ、ジュンくん、翔ちゃん、いらっしゃい。」
ゲーム機を片手にカズがそう言うと、潤は、
「カズくんっ!!」
と言いながらカウンターの中に入り込み、椅子に座っているカズに抱きついていたのだった。
はあーっ!?
潤、何やってるんだよっ!!
内心イラッとしながら潤とカズの感動の再会を少し離れた場所から見つめていると、カズが俺の目線に気付き潤の背中をポンポンッと軽く叩くと、
「ジュンくん、潤くん。
翔ちゃんがやきもちを妬いているから離れなさい。」
と言い、潤を自分からそっと離すとニヤッと笑い、
「翔ちゃん、これでいいかな?」
と何もかも見透かしたかの様な琥珀色の綺麗な瞳で俺をジッと見つめながらそう言ったのだった。
「誰もやきもち妬いてなんかないし。」
と強がって言うと潤が不思議そうな顔をして、
「やきもち…?」
と呟くと、綺麗な紫色の瞳で俺の方を見つめていたのだった。
そんな潤にカズはそれは、
「それよりもジュンくんのその姿を見るのは久しぶりだなー。
今回はやけに可愛らしいんだね。」
とポツリと呟きながら立ち上がると、
「身長も俺より少し高いくらいなんだねー。」
と左手を水平にし自分の頭の上で前後させながらそう言った。
「カズくん…。
僕…おかしいかな…?」
と潤は不安そうにカズにそう聞くとカズは、
「いいや。
ジュンくん、可愛いよ♡」
と言うと潤は嬉しそうにクルリと回ってカズに、
「本当?
大丈夫?」
と聞いていた。
すると潤の背中にをひょこっと顔を向けたカズが、
「あー。
羽根もおさめる事が出来るんだね。」
と潤の背中へ手を回してそっと撫でながらそう言ったのだった。
アンティークショップ〜紫の石〜 ⑫
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