アンティークショップ~紫の石~



















 














ニャーゲンダッツのアイスクリームを食べ終わった後、潤は眠そうに目をこすっていたので、



「じゅーん。
もう寝ようか?」


と言うと、


「しょおさんはぁー?」


と聞いてきたので、


「俺も寝るよ。
一緒に寝ような。」


と言うと潤は、


「うん。」


と微笑みながら返事をすると、


「ぼく、はみがきしてくるぅー。」


と眠そうな声で…いつも以上に子供っぽい喋りでそう言うと、洗面所へと消えていった。



「さてと、俺も歯磨きをして寝るか。」





と呟き、潤を追いかけて洗面所へと向かった。

















アンティークショップ〜紫の石〜 ⑩


























〜♫♩♪♫♩♪♫♩♪♫♩♪〜




ピアノの音が…す…る…?



目の前が真っ暗からモノトーン…そしてカラーになり、俺の手元にはピアノの鍵盤があった。




その白と黒の鍵盤を俺はどんな音を奏でれるのか楽しみながら弾いていた…。


  









ああ…。


まただ…。


記憶にはないが見覚えのある洋館に俺は居て…。









俺のピアノの演奏に合わせて例の天使が、


バサッバサッ


と翼を羽ばたかせて俺の奏でるピアノの音に合わせて、両手を大きく振って指揮をしている。





〜♫♩♪♫♩♪♫♩♪♫♩♪…




演奏が終わると…




























♪ジリリリリリリリ…♪








え…?


何の音だ…?



でも、聞き覚えがある音だ…。





ゆっくりと重い瞼を開けるとそこは…。





いつもの俺の部屋だった。





ベッドの横にあるサイドテーブルの上では起きる時刻を告げる目覚まし時計が鳴っていた。



胸の辺りが温かくてふと目をやると、妖精の潤が俺の胸に顔を擦り寄せてスヤスヤと眠っていたのだった。




その背中には…白くて小さな羽根が生えていた。


昨晩、潤は羽根をおさめる練習をすると言って羽根をしまって寝たのだが、無意識のせいか白くて小さな羽根は姿を現してしまっていて、潤が目覚めるときっと
『失敗しちゃいました。』と落ち込むだろうな…。


落ち込む潤は可哀想だがその姿はきっと可愛んだろうな、


と思うと思わず頬が緩んでしまうのであった。





潤を見つめていると、ふわふわとした羽根は時折、パタパタッと揺れその度に潤は楽しそうに寝ながら笑っていたのだった。


きっと楽しい夢を見ているんだろうな…。


と思いながら白くて小さな羽根にそっと触れると、柔らかくて何だか懐かしい感触な様な気がした。




そんな訳ないよな…。









と思いながら潤の可愛い寝顔についつい見惚れてしまっていたのだった。




長いまつ毛に整った目鼻立ち…眠っている姿はまるで絵画に描かれている天使の様だな…。


なんて思いながら俺の腕の中で眠っている潤を起こさない様にそっと起き上がると、サイドテーブルに手を伸ばして目覚まし時計を止めた。



ベッドから抜け出すとクローゼットへと向かい、今日着ていくスーツやシャツを選ぼうとすると…。



クローゼットの片隅にスーツにシャツやネクタイがセットされていた。



ふふ。
潤が用意してくれていたんだ。


と思い着替えているとベッドから、



「ん〜んん…。
ふぁー…。」

と潤の起きた気配がしたかと思うと、


「しょお…さ…ん…。
おはよぉございますぅ…。」



と言う潤の声が聞こえた。



「おはよう潤。
今日の分の服も選んでいてくれたんだね。
ありがとう。」



と潤の選んでくれたスーツに着替えて、まだベッドの上では眠そうにしている潤の側へと行くと、


「しょおさんっ!!
ぼくの選んだお洋服着てくれたんですねっ!!」



と潤は紫色の綺麗な瞳を輝かせてそう言った。



「ああ。
そうだよ。
潤はセンスがいいからこれからも選んで貰えるとありがたいな。」



と言うと、


「はいっ!!
僕、明日からもしょおさんのお洋服選ぶお手伝いしますっ!!」



と嬉しそうにそう言い、



「あっ!!
急いで朝ごはんの支度をしますねっ!!」



とベッドから起き上がると、寝癖のついた頭のままキッチンへ消えていったのだった。




キッチンへ向かうといい香りがしており、


「潤。
何を作ってるんだい?」


と聞くと、


「まーくんからフレンチトーストの作り方を教わったので、それを作っているんです。」


と答えた。



「えっ!?
またまーくんっ!?」


と言うと、


「まーくんは暫く僕にお料理を教えてくれる為に来てくれるみたいですっ!!」

とフライパンを持った潤は振り返り、笑顔でそう言ったのだった。




まーくん…。


犬なのに本当にすげーよな。

でも、どうやって潤に教えてるんだ?


と気にはなったのだが、ゆっくりしている時間は無いのでとりあえず潤の作ってくれたフレンチトーストを頬張りながら、


「んまっ!!
潤、コレ美味しいよっ!!
俺、フレンチトースト大好きなんだっ!!」



と言うと潤は、


「ふふふ。
よかった。
しょおくん、また作るね。」


と潤もフレンチトーストを頬張りながらそう言った。



仕事に行く時間がきて、



「じゃあ、潤。
行ってくるな。」


と言うと潤はトテテテテテテテッと玄関までついてきて、


「しょおさん、いってらっしゃいっ!!
お仕事、頑張ってくださいねっ!!」


と天使の様な可愛い笑顔で見送ってくれたのだった。



あんな笑顔で、



『お仕事、頑張ってくださいねっ!!』



なんて言われたら頑張らない訳にはいかないよな。




ウキウキと心ときめかせながら出勤したのだった。



















 アンティークショップ〜紫の石〜 ⑩
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