アンティークショップ~紫の石~
その後…。
潤は頬を膨らませて、
「しょおさん、妖精と昆虫を一緒にするなんて酷いです…。」
と拗ねてしまったのだった。
椅子の上に両足を乗せて体育座りをして、両膝を抱きかかえて口を尖らせているその姿は…とてつもなく可愛くて…。
そんな拗ねて口を尖らせている潤も可愛いな…。
なんて思ってしまったのだが、今はそんな呑気な事を思っている場合ではなく潤のご機嫌を直して貰わなければ…。
と思い、
「じゅーん。
ごめんな…。」
と謝っても潤はプイッとそっぽ向いてしまったのだった。
「俺の妖精のイメージはトンボみたいな透明なは…ね…。」
と余計な事を言ってしまい潤の頬はますます膨らんでしまい…。
しまったっ!!
と思い、
「だって…。
潤の羽根が天使の翼みたいだな…と思ってしまって…。
その…妖精に逢うのも見るのも初めてだったし、今まで本物じゃないけど絵とかで見ていた羽根のイメージと潤の羽根のイメージが全く違ってて…。
妖精の事をよく知らなかったからごめん…。」
と慌ててそう言うと、潤は拗ねた顔のままこちらを見て、
「僕の羽根は天使さんより小さいんです。
カズくんが『妖精の羽根は天使に比べると小さいんだよ。』と言ってましたし…。
それに…妖精の僕の頭の上には天使さんの輪っかがありません。」
と言われて、潤の頭の上に目を向けると…。
確かに潤には天使の輪は無くて…。
まあ確かに言われてみれば羽根もかなり小さいよな…?
と思っていると、
「しょうがないから、許してあげます…。
その代わり…今後は妖精の羽根を昆虫の羽だと言わないでください。」
と潤が口を尖らせながらそう言ったのだった。
潤が許してくれたかと思うと嬉しくて、ガタンッと椅子から立つと潤の方へ行き、
「じゅーんっ!!
ありがとうっ!!」
と言うと椅子の上で体操座りをしている潤を、思いっきり抱きしめたのだった。
「あ…あのぉ…。
しょ…しょおさん…。
く…苦しいです…。」
と小さな声でそう言った潤の顔は真っ赤で、どうやら俺が抱きついたから息が出来なくなって苦しくて顔が赤くなってしまった様だった。
アンティークショップ〜紫の石〜 ⑧
「まあ、言われてみれば確かに潤の瞳の色とこのネックレスの石の色は一緒だもんなー。」
と胸元にあるシルバーのフェザーの形をしたネックレスについている紫の石の色と潤の瞳の色を見比べながらそう言い、
「という事は…。
やっぱり潤はこのネックレスの石の妖精なんだ。」
と言うと潤は、
「はい。
だから、しょおさんの持っているネックレスの紫の石の妖精だと言ったじゃないですかー。」
機嫌の直った潤は背中の白くて小さな妖精の羽根をパタパタと羽ばたかせながら、そう言ったのだった。
そんな潤の小さくて白くてフワフワとした羽根に手を伸ばしそっと触れ、
「あのさー。
潤のこの羽根ってずっとこのままなの?」
と聞くと潤は首をかしげて、
「どういう意味ですか?」
と聞いてきたので、
「あ…。
あのさ…。
潤がこのネックレスの石の妖精っていう事は、今後も俺と一緒に暮らすという事でいいんだよな?」
と聞くと潤は大きくて頷き、
「はいっ!!
僕はしょおさんと一緒に暮らしたいですっ!!」
と答えた。
「だったらずっと家の中に居るのは退屈だと思うし、潤さえよければ俺が休みの日は一緒に出かけたりしたいんだよな。
となると…。
外に出かけるのに羽根があると目立つから、羽根をおさめる事は出来ないのかな…?と思ってさ…。」
と言うと潤は少し考えたあと、
「それなら…。」
と小さな声で呟くと、
「こういう事ですか?」
と言い大きく深呼吸をしたあと、ゆっくりと目を閉じた。
すると…。
パタパタと羽ばたかせていた白くて小さな妖精の羽根が、潤の背中にスゥーーーーーッと吸い込まれるかの様に消えたのだった。
「えっ?あっ?
消えたっ!?」
と驚くと潤が、
「これでどうですか?」
とニッコリと微笑んで聞いてきたので、
「うん、そういう事…。」
と言いながら潤の背中に触れると先程まであったフワフワとした羽根は跡形もなく、
「すっげー。
簡単に仕舞う事が出来るんだ。」
と感心しながらそう言うと、潤は胸を張り、
「ふふふ。
凄いでしょう?」
と自慢げにそう言ってきたのだった。
「ああ、凄いよっ!!
それにこれなら外に出かけても目立たないよな。
潤、今度の土曜日に一緒に出かけない?」
と言うと潤は目を大きく見開くと、
「えっ!?
土曜日にお出かけですかっ!?」
と聞いてきたので、
「そう。
土曜日にお出かけだよ。」
と言うと潤は紫色の潤んだ綺麗な瞳をキラキラとさせ、
「本当にいいんですかっ?」
と聞いてきたので、
「ああ、いいよ。」
と答えると潤は嬉しそうに、
「ふふふ。
やった〜っ!!しょおさんとお出かけだ~っ!!
土曜日が楽しみです♪
しょおさん、ありがとうっ!!」
と俺に抱きついてきたのだった。
俺の胸の中にいる潤の背中にそっと手を回し、キュッと抱きしめると、
「喜んで貰えてよかったよ。」
と俺まで何だか嬉しい気持ちになりながらそう言ったのだった。
土曜日は潤と買い物に行き、その帰りに例のアンティークショップに立ち寄りカズに逢わせてあげる事を約束すると、
「カズくんに逢えるんですねっ!!」
と潤はとても喜んでいたのだが…。
そんな潤の笑顔を見ると先程まで、潤が喜んでくれる顔を見て幸せを感じていたのに…一気に気持ちが下がるのを感じてしまい…。
何だかモヤモヤ…?イライラ…?としてしまう自分の気持ちを抑えるので精一杯だったのだが、そんな胸の内を潤には気付かれまいとして必死に笑顔を作っていたのだった。
アンティークショップ〜紫の石〜 ⑧
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