空の色





























あれから潤の好きな人については何も触れる事なく…8月を迎えていたのだった。



夏休みだけれどもいつもの様に部活に行く為、智くんと潤と一緒に学校に向かっていると、



「櫻井くん、大野くん、松本くん。
おはよう。」


と川﨑さんが声を掛けてくるのも、なぜだか最近の日課となっていて…。






そうすると必ず潤が、


「俺、途中のコンビニで水が買いたいなー。
智ついて来てよ。
翔くん先に行くね。」


と何かと理由をつけては、智くんの手を引いて先に学校に行ってしまうのだった。



「ふふふ。
大野くんと松本くんは仲が良いんだね。」



「うん…。
仲良いよ。」



「松本くんって何だか見た目の印象と違って何だか可愛いらしい人なんだね。」



「はは。
うん。
潤は可愛いし、それに…。」




潤の好きな川﨑さんに潤の良いところを沢山伝えて、2人が両想いになる手伝いが出来ればいいな…。


と思う自分と…。





2人が上手くいかなければいいのに…。


潤が俺の事を好きになってくれればいいのに…。


と思う自分もいて…。



「…潤は良いヤツだよ…。」



と言うので精一杯だった。







はぁー…。



と小さく溜息をつき、空を見上げるとどこまでも青い空と白く眩しい雲が空一面に広がっていたのだった。




灰色でくすんでいる俺の心の中とは正反対で、青く澄んで綺麗な空だった…。



















空の色  ⑨
























そんな夏休みを過ごしているある日、部活が終わって着替えている最中に、



「櫻井って川﨑さんと付き合ってるの?」


とサッカー部のメンバーに聞かれた。




「えっ!?違うよ。
何でそうなるんだよ?」


驚いてそう言うと、



「えー。
だって、夏休みに入ってから部活に来る時に川﨑さんと一緒に来てるじゃん。」


「そうそう。
仲良さそうにしてるし。」


と口々に言うので、


「そんなんじゃないし…。」


と答えると、


「だったら何で一緒に来るんだよ?」


と聞かれた。




「途中で偶然、川﨑さんに逢うだけだし。
川﨑さんに逢うと潤がいっつも智くんと一緒に先に行ってしまうんだよな…。」


と言うと、



「あれ?
櫻井、めっちゃ寂しそうだな。」



「櫻井、潤ちゃんと一緒に来れないのが寂しいんだ。」



と口々にそう言ってきて…。




今、何て言った…?


と思い、



「潤ちゃんっ!?」


と聞き返すと、



「松本くんって櫻井といる時って、なんか可愛いよなー。」


「そうそう。
〝松本くん〟というより〝潤ちゃん♡〟って感じだよなー。」


「他の人と居る時にはクールビューティーに戻るのに。」


「川﨑さんといい、潤ちゃんといい。
櫻井ばっかズルいよなー。」


「そうだよ。」



と口を揃えてそう言ってきたのだった。






潤…俺と一緒に居る時は可愛い顔してるんだ♡

と何だか嬉しくなったが、『潤ちゃん』呼びが気になってしまい、




「…お前ら絶対に潤に『潤ちゃん』呼びするなよ。
アイツ絶対に怒るからさ。」


と忠告をすると、



「モチロン。
本人の前では恐れ多くて言えないしっ!!」


「潤ちゃんはクールビューティーだから、怒ると怖そうだよな…。」



「何かあの可愛い雰囲気は、櫻井限定っぽいもんなー。」





そんな話しをした後部室を出てから智くんと潤の居る美術室へと向かったのだった。













下駄箱で靴を履き校舎に入り一階の廊下を歩き、美術室に1番近い階段へと向かいながら…。




『松本くんって櫻井といる時って、なんか可愛いよなー。』

とサッカー部のチームメイトが言っていたのを思い出し、嬉しくて思わずニヤニヤしてしまったが…。




でも、他のヤツに潤の可愛い顔を見て欲しくないから潤に注意しなくては…。


えっ!?

何て言えばいいんだろう…?




また余計な事を言って潤に嫌われたくないしなぁー。



と考えていると、L字になっている廊下の窓の向こう側に潤の姿が見えたのだった。





中庭を挟んで距離が少しあるのにも構わず、



「潤っ!!」


と潤の名前を呼び、駆け寄ろうとすると、



「櫻井くん。」


と後ろから呼び止められたのだった。



「え?」

誰だ?


と思い振り向くと、そこには川﨑さんの姿があった。


「櫻井くん。
話したい事があるんだけど、ちょっといいかな…?」


と川﨑さんが少し緊張した顔をしてそう言ってきたのだが、潤が気になり振り返ると…。


先程見えていた筈の潤の姿はなく…。





見間違いだったのかな…?


と思いながら、



「川﨑さん、どうしたの?」


と川﨑さんにそう言うと、



「あの…。」



と言い川﨑さんは俯くと、深呼吸をしてから顔を上げると、







「櫻井くん。


私、櫻井くんの事が好きなの。
付き合ってください。」




と言ったのだった。







「えっ!?」



と呟き言葉を失ってしまった。




川﨑さんが俺の事を好きだなんて、どういう事っ?


でも、川﨑さんは潤の好きな人で…。






頭が上手く回らずそのまま黙っていると、川﨑しんも息を呑んで黙ったまま俺を見つめていた。














シーン…



とした空間の中…。



窓の外からは、



ザーザーザーッ…



と雨の降る音が鳴り響いてきたのだった。





その音で窓に目を向けると、窓の外は明るいのに…空からは大粒の雨が降り注いでいたのだった。







































⭐⭐ to becontinued⭐⭐