翌日、授業が終わるとさとちゃんとの待ち合わせの学校の近くにある本屋さんへと向かった。





さとちゃんは既に来ており俺は走ってさとちゃんの青い車に走り寄ると、運転席側の窓をコツンと叩くとさとちゃんは、


「おお。
和、お疲れさん。」


と言い助手席側の扉を中から開けてくれた。






俺はさとちゃんに、


「さとちゃん、ありがとう。
お待たせ。」


と言うと助手席に乗り込んだ。




さとちゃんは俺がシートベルトを締めたのを確認すると、



「さてと。
行くか。」

と言って車を発進させた。








さとちゃんに何から話そうかと昨晩から考えていたのだが、考えはまとまらず…。




今もさとちゃんに何から話そう…と頭の中でグルグルと考えているのだが、やはり考えはまとまらなくて…。





「……。」


「……。」






黙ったまま助手席に座っているのだが、さとちゃんも何も言葉を発さないし今日に限って車に音楽も流れていなくてシーンとした車内の沈黙に耐えきれず…。








前を真っ直ぐと見つめて運転するさとちゃんに意を決して、


「さとちゃん。
あのさ…。」

と話しかけるとさとちゃんは、



「和、話しは着いてからゆっくりと聞くから。
まあ、それまではドライブを楽しんでくれよ。」


とふんわりと笑いながらそう言った。




「それもそうだね。
その代わりさとちゃん、後でしっかり聞いてよ。」



と俺も戯けてそう言うとさとちゃんは、


「あ、ああ…。」



なんて気のない返事をするもんだから、



「さとちゃん、何よ。
その返事っ!!」


と言うと、


「俺は…。
櫻松の季節のお庭セットの内容の方が気になるんだよなー。
9月は何だろうなー…。」


なんて言うもんだから、


「ちょっとっ!!
さとちゃんっ!!
どういう事っ!?」


とさとちゃんの方を向いてそう言うと、



「んふふふふふ。
やっといつもの和な戻ったなー。」


とさとちゃんはチラリと俺の方を見てそう言った。




「今日は何だかしおらしいから、助手席には借りてきた猫が乗ってるのかと思ったぞ。」


とさとちゃんが笑いながらそう言うので、


「はぁーっ!?
誰が借りてきた猫だよっ!!
そう言うさとちゃんだって何も喋らなかったじゃんっ。
俺、てっきりお地蔵様が運転しているのかと思ったよっ!!」


とさとちゃんに向かってそう言うと、



「んふふふふふ。
和はそうでなくっちゃな。」


とさとちゃんはニコニコとしながらそう言った。















月見ヶ丘公園の前を車が通過した時にさとちゃんが、



「そういえば潤くんと月見ヶ丘公園に連れて行ってあげる約束していたなー。
今週末にでも行くか?」


と言ってきたので、


「うん。
そうだね。」


と答えると、


「翔ちゃんも一緒に行くかなー?」


なんて声はのんびりしているのにそんな事を言うもんだから…。



さとちゃんはもしかして翔ちゃんが潤くんの前で人間の姿になったのを知ってるんじゃないの?


なんて思い、



「さとちゃん…。
ちょっと待ってっ!?
何で翔ちゃんの名前が出てくるのよ?」



とさとちゃんを見つめながらそう言うと、



「んふふふふふ。
どうしてだろうなー?」


とさとちゃんはニッと笑ってそう言った。



「さとちゃん…。
アナタ…何でもお見通しなんじゃないの?」

さとちゃんを見つめると、さとちゃんはドヤ顔で、



「凄いだろう?」


と言ってきた。





いくら勘のいいさとちゃんでも、潤くんが翔ちゃんに好意を持っている事が分かってしまうのが何だか怖くなって…。





「さとちゃん…。
凄いけど怖いよ…。
気持ち悪いよ。」


と言うと、



「こらっ!!和っ!!
気持ち悪いとか言うなよっ!!」


とさとちゃんが眉間に皺を寄せてそう言った。





「だって…。」


さとちゃんは勘がいい方だが今日のはよすぎるだろう?


と思いながらジッとさとちゃんを見つめると、



「んふふふふふ。
実は昨日の夜、潤くんから電話があったんだ。」


とさとちゃんはふんわりと笑いながらそう言った。






「はいっ!?」



今、何て言った?


と聞き返すとさとちゃんは、



「昨日の夜潤くんから電話があって、
『さとちゃん先生、翔くんと仲良くなりたいからセッティングしてよ♡』
ってさ、潤くんが言ってたんだ。」


と教えてくれた。






潤くん昨日は、


『かずっ!!
俺が翔くんを好きだという事は内緒にしておいてくれる?』

と言っていたのに翔ちゃんの事が好きだとさとちゃんには言ったんだ…。


と思い、



「……。
そうなんだ…。
潤くん、翔ちゃんの事が好きだとさとちゃん言ったんだ…。」


とポツリと呟くと、


「ん?
なんだそれ?」


とさとちゃんが不思議そうな顔をして聞いていた。





キョトンとして、全く分かっていないさとちゃんの顔を見て…。



マズイっ!!

さとちゃんは潤くんが翔ちゃんの事が好きだと知らなかったんだ!!




と気付き、




「えっ!?あっ…。
あっ…ああーっ!!
ごめん、間違えたっ!!
翔ちゃんじゃなくてショコラの事が好きだと言おうとしたら翔ちゃんになっていたよ…。
もうっ!!さとちゃんが翔ちゃんの名前なんか出すからーっ!!」



あははははは


ワザとらしいな…。

と思いつつ笑って誤魔化した。





誤魔化しきれてないよな…?



と不安になりながらチラリとさとちゃんの顔を見ると、


「ああ。
潤くんはショコラの事が好きだもんなー。」


とさとちゃんは、

んふふふふふ。


と笑いながらそう言った。


さとちゃん誤魔化されてくれたのっ!?

危なかったー、セーフ…。


と心の中で呟いた。






「さとちゃん。
潤くん、他には何か言ってた?」


と聞くとさとちゃんは、

「ん?
他には何も言ってなかったけどな…。」


と答えた。






「ショコラの事とか…。」


と恐る恐る聞くと、



「あ、ああー…。
ショコラの事は何も言ってなかったなー。」




あんなにショコラの事が好きな潤くんにしては珍しいよなー。



とさとちゃんはのんびりとした声でそう言うと、



「おっ。
そろそろ到着するぞっ!!」



と言うさとちゃんの声で車の窓の外を見ると、櫻松のお店が見えてきたのだった。



















⭐to becontinued⭐