ふと窓の外を見ると空がオレンジ色に染まっていた。



「もう夕方だね。」


と呟くとそれを聞いた潤くんが、



「俺、そろそろ帰るね。」


と言い荷物をまとめ始めた。







「潤くん、車で送っていくわよ。
今日は相葉くんのお迎えはないんでしょう?」


と伯母さんが潤くんにそう聞くと潤くんは、


「うん。
今日はまーには言わずに来てるから。」


と答えた。





潤くん…。

それは非常にマズイんじゃないの…?



と思い、


「潤くん…。
相葉さん、心配して探してるんじゃないの…?」


と言うと、伯母さん、翔ちゃん、そして朔くんも花樹ちゃんも、ウンウンと頷いていた。




「んー。
そうかもね。
まーが心配しない事なんてないんだもん。」



潤くんは右手の人差し指を口元に当ててそう言った。





「潤くん、急いで帰った方がいいんじゃないの?
直ぐに車の準備をするわね。」


と言い伯母さんがソファーから立ち上がろうとすると潤くんが、


「夏芽さん、大丈夫だよ。
かずが駅まで一緒に行ってくれる事になっているから。」


と突然潤くんにそんな事を言われて、



「「えっ!?」」


と何故だか翔ちゃんと同時に驚いた声を出てしまった。







何で?


という顔で俺を見てくる翔ちゃんに、左手を顔の前でブンブンと左右に振って、



知らないよ。



と訴えていると、




「あら、そうだったのね。
それなら和ちゃんも一緒に乗って行く?」



と伯母さんが聞いてきた。





「ううん。
夏芽さん、ありがとう。
俺達歩いて帰りたいし、まーの事も大丈夫だから。」



と潤くんが答えると、



「ひ弱な和が歩いて駅まで行けるの?」


とボソッと翔ちゃんが呟いた。



「どうせ俺はひ弱ですよ…。」


と言うと伯母さんが、


「そんなに心配なら翔も一緒に潤くんを送ってあげなさいよ。」


と翔ちゃんにそう言うと花樹ちゃんも、


「そうだよー。
翔お兄ちゃん、送ってあげなよーっ!!」



と翔ちゃんの方に乗り出してそう言った。






「和ちゃんはひ弱というよりか弱いから、兄ちゃんも一緒に行って守ってあげた方がいいんじゃないの?」


と朔くんまでもがそんな事を言ってきた。







きっと翔ちゃんは、潤くんが居るからきっと「送るよ。」と言うだろうなー。



と思いながら翔ちゃんの方を見ると、翔ちゃんは、


「……。
いや…。
俺は遠慮しとくよ。」



と肩を竦めてそう言った。









えっ!?

うそっ!?

翔ちゃん、潤くん送ってあげないのっ!?


と思っていると、翔ちゃんは気まずそうな顔をすると俺から目を逸らした。







何よっ!?


その態度っ!?


と思っていると潤くんに、



「ほら。
かず行くよっ!!」


と言って腕をグイッと引っ張られた。










リビングを出て玄関に向かうと、伯母さんと翔ちゃん、朔くんそして花樹ちゃんも玄関に見送りに来てくれて、



「お邪魔しました。」


と言いながら潤くんが頭を下げると花樹ちゃんが、


「潤ちゃん、また来てねっ!!」


と潤くんの両手握るとブンブンと振りながらそう言った。



潤くんは笑顔で花樹ちゃんに、


「うん。
また来るねっ!!」



と言うと花樹ちゃんが潤くんから手を離して、



「うんっ!!
またねっ!!」



と言うと手を振った。




潤くんも花樹ちゃんに手を振り翔ちゃんをチラッと見て翔ちゃんにヒラヒラッと手を振ると、玄関から出て行った。




「お邪魔しました。」


と言い俺も潤くんを追いかけて玄関から出て、櫻井家を後とした。













駅に向かって歩いていると潤くんが、



「かずー。
送って貰ってごめんね…。」


と言ってきたので、



「急に言うから驚いたけど、大丈夫だよ。」



と言うと潤くんは俺の顔を覗き込んで、



「急だったから…。
本当にごめんね…。」


と首を傾けてそう言った後、



「でもね…。

かずがあのまま残ると、翔くんに説教するでしょう?
それを本当は阻止したかったんだー。」



と悪戯っ子の様な顔をしてそう言った。








「えっ?
まさか潤くん…。
俺が翔ちゃんに説教しない様にする為に、今日は俺と一緒に居たの…?」


と聞くと潤くんは素直に、


「うん。
そうなんだ。」


と言った。


「やけに俺にベッタリだからおかしいと思っていたんだよなー。」


と言うと潤くんは、



「ふふふふふ。」


と微笑むと、



「でも、今日はかずと一緒に居たいと思ったんだよー。」


と俺の腕に自分の腕を絡めながら甘えた声でそう言った。





潤くんを送っていなければ今頃俺は翔ちゃんを説教していたよな…。


だって潤くんを襲っていたんだよ。


と思い、



「あー、あー。
翔ちゃんを説教しそびれたよ。」



と残念そうにそう言うと、



潤くんは急に真剣な顔になり、

「かず、さっきも言ったけど翔くんは悪くないから。」


と俺の腕を掴む力をギュッと込めてそう言った。






「それは潤くんが翔ちゃんを庇っているんじゃないの?」



と潤くんにそう聞くと潤くんは、



「だって…。
キスも俺からしたんだし…。」



恥ずかしそうに俯きながらそう言った。




潤くんを見ているとそれは嘘ではないとは思うけれど、


「それも翔ちゃんを庇う為に言ってるんじゃないの?」


と言うと潤くんは、


「違うし…。」




と言い、



「だから俺が…キス…したし…。」


と小さな声でそう呟いた。





潤くんは顔を上げて俺を見つめると、


「って…。
かず…恥ずかしいから何度も言わせないでよ…。」


言うと潤くんは頬を赤らめて…。


それでいて、少しばかり拗ねた声で口を尖らせてそう言った。





そんな潤くんを見て、



「ふふふ。」


と思わず笑みがこぼれてしまった。







何だかこういう所が潤くんは子供っぽくて可愛いよね。



と思っていると、



「かず、何で笑ってるんだよ…。」


と潤くんはますます拗ねた顔をしてしまった。






そんな会話をしながら歩いているといつの間にやら駅に到着していた。






「ああ…。
もう着いちゃったね…。」



と潤くんは残念そうな顔をして、ふと空を見上げた。




潤くんがあまりにも空をジッと見上げているので、俺も見上げてみると…。



空は日が沈み夜へと移り変わろうとしていた。










黙ったままジッと空を見上げていた潤くんが、



「かず…。
今日は満月なんだ。」


と言う潤くんの声に、


「へぇー。
そうなんだ。」


と答えて俺は空に浮かぶ月を探した。





ああ…。
確かに空には丸いお月様が浮いていて、



「本当だ。
満月だね。
綺麗だねー。」



と言うと、




「うん。
今日は満月だから、新月の夜にお願いした願い事が叶うんだよ。」


と潤くんはポツリと呟いた。





「『お願いした事』?」


と潤くんを見てそう聞くと、潤くんはコクコクッと頷いた。






そして、


「満月の日は夜じゃなくても願い事が叶うみたい。

姿はみえにくいけど、日中も空にはお月様がいるからかな?」


と潤くんは空にある月を見上げながらそう言った。





















暫く2人でまん丸い満月の浮かぶ夜空を眺めていたが、



〜♫♪♩♫♪♩〜



潤くんのモバイルの着信音が鳴り、潤くんは持っていたリュックのポケットからモバイルを取り出すと画面を俺に見せてきて、



「まーからだ…。」



と眉間に皺を寄せてそう言うと、モバイルの画面をタップして通話を始めた。






「もしもし。
……まー、大丈夫だってばー。
……今?かずと一緒に居るし……うん、うん……。」


潤くんのモバイルからは相葉さんの潤くんの心配する声が漏れてきて、思わず笑いそうになるのを両手で口を押さえて必死で堪えていると、潤くんがチラリと俺の方を見てうんざりとした顔をしていた。




「今から電車に乗って帰るから……うん、分かった。
………はい、はい。
……分かった、分かったから。
……駅に着いたらまーを待ってるから大丈夫だって………。
……じゃあね、………またあとでね………。」



相葉さんの声はまだ何かを言っていたが、潤くんはそのままモバイルの画面をタップして通話を切ると、


「まーがやっぱり心配して電話してきちゃった。」


とペロッと舌を出してそう言った。




「今までかけてこなかったのか奇跡じゃない?」


と言うと潤くんは、


「ふふふ…。
確かにそうだね。」


と笑うと、



「これ以上遅くなってまた電話がかかってくると面倒だから、もう行くねっ!!
かず、またねーっ!!」


と言い改札口へと向かった。


「うん。
潤くん、またね。
気をつけて帰ってねーっ!!」


と言い潤くんに手を振ると、潤くんは振り返り俺に手を振りながら駅の改札口の中へと消えて行った。

















⭐to becontinued⭐