深い深い海の…  〜エピローグ〜  

























半年後…。















「…あっつ…。」


ベッドルームのエアコンの冷房は効いているが、設定温度が潤好みの27℃で温度を設定しているので、俺には少し暑いんだよな…。




でも潤が風邪を引くよりまあいいいか…。




そんな事を思いながら俺の腕の中で生まれたままの姿でスヤスヤと眠る最愛の人を、ギュッと抱き寄せると彼の左肩にあるハートの形をした赤い痣に舌を這わせた後チューッと吸い付き、



俺の大切な人




という印をつけるんだ。




すると、



「…ん…ん…んん……。」



と綺麗な唇からは声が漏れて、瞼がピクピクッとしたので、






そろそろお目覚めかな…?


と思い、



「じゅーんさん。
朝ですよー。
起きてくださーい。」



と耳元で囁くと、




瞼がゆっくりと開くと寝起きで虚な瞳がユラユラと揺れて、俺の姿を捉えると、




「しょおくん…。
おはよう…。」




とニッコリと微笑むとチュッと俺の唇のおはようのキスをしてくれるんだ。


「潤さん。
おはよう。」


と言いながら俺もおはようのキスをすると、いつまで経っても潤は目を伏せて恥ずかしそうにするんだよな。







気怠そうな潤が、ふとサイドテーブルに置かれた時計に目をやり、



「えっ!?
もうこんな時間っ!?
翔くん早く準備しないと。」



と言い潤はベッドから飛び起きて服を着ようとするので、


「潤さん。
シャワー浴びようよ。」



と言い潤の手を引いてバスルームまで行き2人でシャワーを浴び、朝食を済ませた頃に、



♫ピンポ〜ン ピンポ〜ン♫



とチャイムが鳴った。




朝食の片付けをしてくれている潤の代わりに玄関に行き扉を開けると、


「翔ちゃん、おはようーっ!!」



と言いながら雅紀がガバッと抱き付いてきて、その後ろに居た和と大野さんが、



「翔ちゃん、おはよう。」


「翔くん、おはよう。
魚釣れたぞっ!!」



と言うとその更に後ろで、ビーチボール大の黒い奴らが手に海老やら貝やらタコなどを持ってピョコンピョコンと跳ねて挨拶をしてくるんだ。









「おはよう。
上がってよ。」



と言うと、大野さんと和、雅紀は、



「「「お邪魔しまーすっ!!」」」



と言い家の中に入り、黒い奴らはわちゃわちゃと何か話し合っているので、


「お前らも上がっていいぞ。
潤さんが『上がって貰ってね♡』と言っていたぞ。」


と言うと揃いに揃って全員頬を赤らめていた。




が、




首をブンブンと横に振り手に持っていた海の幸を俺に渡すと、奴らは庭の方へとガサガサガサッと移動をして行ったのだった。






リビングに戻り、



「潤さーん。
アイツら上がる様に言ったんだけど、庭に行っちゃったよー。」


と潤に伝え、


「はい。
あとコレ。
アイツらから潤さんへの貢ぎ物。」


と言い海の幸を潤に渡すと潤はクスリと笑い、


「ありがとう。」


と言いながら受け取ると、潤は庭が見える窓のレースのカーテンを開けて庭を見ていた。



「ああ。
あの子達は先にバーベキューの準備をしてくれているんだね。」


と言うので庭を見ると、奴らがバーベキューグリルに火を起こしたり庭に置いてあるガーデン用のテーブルや椅子を拭いたり、自分達が座る用のレジャーシートを敷いたりしてせっせと働いていたのだった。




チッ。

またああやって潤に点数稼ぎしてるな…。


と思って見ていると、



「翔ちゃん、醜い心の中が顔に出ていますよ。」


とアイスコーヒーを飲みながらソファーでくつろいでいる和にそう言われて、



「和、うるさいわっ!!」


と言うと潤が真顔で、


「和くん。
翔くんの心の中は醜くないよ。」


と言うと、俺の良い所を次々と和に力説するもんだから、和がタジタジになっていると、
(聞いている俺も恥ずかしい…。)



「準備出来たぞーっ!!」


「皆んなー、お待たせーっ!!」



と大野さんと雅紀が、釣ってきた魚や潤が用意していた肉や野菜をタッパに入れてた物を持ってリビングに入って来たのだった。




「じゃあバーベキュー始めようっ!!」


と言うと和は急いで雅紀の元へと駆け寄り、


「まあくん行こうっ!!」


雅紀を引き連れてサッサと庭に出て行ったのだった。


















潤は雅紀と奴らと一緒にバーベキューを焼くのに精を出していて、それを離れた所から冷たいビールを飲みながら見つめていると、



「翔くん、潤を見つめ過ぎだぞ。」


クスリと笑いながら大野さんが俺に話しかけてきた。






「いい奥さんだな、と思って見惚れていた。」


と笑いながらそう答えると、




「まあ、潤はいい奥さんだよな。
翔くんと潤が幸せそうで何よりだ。」


ビールの入ったグラスを持った大野さんが、海の魔物達と戯れながら肉を焼いている潤を見つめながらそう言った。





「大野さんのおかげだよ。」


と言うと、



「んふふふふふ。
潤はやっぱりロマンチストだっただろう?」


とふんわりと笑いながらそう言ってきたのだ。











半年前の潤が目を覚ましてから、俺は再度潤から戻ってきたハートの鱗を潤に渡してプロポーズをしようと思っていたんだ。




潤と付き合いの長い大野さんに、それとなしにその事を相談すると、




『潤は意外とロマンチストだからなー。
もう少ししたら愛の告白をするのに持ってこいの〝バレンタインデー〟があるぞ。
大切な人に気持ちを伝える日だから、バレンタインデーに翔くんの気持ちを潤に伝えたらどうだ?』


と返ってきたのでバレンタインデーに潤と出かけて、その日の夜に…浜辺の満天の星空の下で潤にプロポーズをしたのだ。


 


プロポーズの返事…?



それは勿論OKだったさ。









「翔ちゃん、顔がニヤけてて気持ち悪いですよ。

で、プロポーズの言葉は何だったのよ?
いい加減教えてよ。」



いつの間にやら和が俺の横に居てそう聞いてきたので、


「教えないよ。」


と答えた。




「何でよっ!?
潤くんも、お酒飲ませて酔わせても絶対に口を割らないし…。」

と言うので、


「ちょっ!!
お前、潤になんて事するんだよっ!!」


和を睨むと和は悪びれる様子もなく、


「だったら教えてよー。」


と言うんだ。


「ダーメッ!!
プロポーズの言葉は潤だけが知ってればいいんだから。」


と答えると和は面白くないという顔をし、大野さんが、



「んふふふ。
潤も『翔くんと俺が知っていればいい。』と言っていたから、翔くんと潤らしいな。」


とふんわりと笑いながらそう言った。





「あ、そういえば翔くん。
この間の〝こんにチワワ〟好評だぞ。」


と大野さんが話題を変えてくれて、そう言ってきた。




「大野さんもよくあんな絵を採用したよね?」


和が肉を一口食べながら、呆れた顔をしてそう言うので、


「和、うるさいわっ!!」


口を尖らせてそう言うと、大野さんも和も笑っていた。





あれから俺は、何故だか大野さんの会社で働いていて…。




大野さんと一緒にお遊びで描いた絵が大野さんの目に留まり、イラストレーターとして契約をしているのだ。




まあ、描く度に皆んなが大爆笑をするので、本当に俺が描いていいものかは微妙なんだろうけどな…。





潤だけは笑いながらも、


『翔くん凄いよっ!!
天才だよっ!!』



と褒めてくれるんだけどな。


と思いながら潤を見つめていると潤と目が合い、潤がニッコリと微笑んでくれるんだ。








「俺、手伝ってくるわ。」

と言い席を立つと、



「「火傷には気を付けてーっ!!」」



と大野さんと和が口を揃えてそう言うんだ。


「もうっ!!
大丈夫だからっ!!」


と答えると、肉や魚を焼いている潤と雅紀の所へ行き、


「雅紀、交代するよ。」


と言うと雅紀までもが、


「翔ちゃん、ありがとうっ!!
でも、翔ちゃん…。
火傷には気を付けてね…。」



なんて真剣な顔で言ってくるんだ。







潤にいい所を見せようと一生懸命あれこれ焼いていると、


「翔くん、手伝ってくれてありがとう。」



なんて潤が可愛い笑顔で言うもんだから、その笑顔に見惚れていると…。





「あちっ!!」


網の部分にトングを持ったまま手を下ろしてしまい…。





「翔くん、大丈夫っ!?
直ぐに冷やさなくっちゃ…。」

と潤が俺の手をそっと握ると、奴らに、



「ごめんけど後はよろしくねっ!!」


と潤がお願いすると、



コクコクコクッ



頷いて返事をしたので、潤は俺の手を引いて家の中へと入っていったのだ。

















ザァァァァァーーーッ



キッチンの水道水で、潤が俺の手を冷やしてくれており、


「翔くん。
痛くない?
大丈夫?」


と心配そうに聞いてくるので、


「潤さん、大丈夫だよ。」


と答えると、


「念のために和也くんに火傷の魔法薬を貰ってくるね。」


と俺から離れようとするので、



「潤さん…。
行かないで…。」



と言うと潤は、




「でも…。」


と心配そうな顔でそう言うので、




「潤さんが側に居てくれないと、俺寂しいよ…。」


と悲しそうな顔でそう言うと…。





「ん…。
分かった…。」


少し迷ってはいたけれど、そう答えてくれるんだ。







「それにもう大丈夫だし…。」


水道水で冷やしていた手を流れる水から抜き出し、そっと潤の口元へ持っていき、


「こうして貰ったら大丈夫…。」


と言いながらまだ少し赤くなっている右手の手の甲側の薬指でそっと潤の唇に触れると、


「もう…。」


と呆れながらも潤が俺の右手に自分の手を添えて優しく舐めてくれて…。
 






俺の指を舐めてくれる潤を見て思わず、


「潤さん…。
なんか…やらしい…。」


と言うと潤は顔を真っ赤にしてパッと唇を離した。



「ちょっ…。
翔くん…。
そういうつもりでやっているんじゃあ…。」


と言う唇をそっと自分の唇で塞ぎ、


「俺。
こっちの方が好き。」


と言いながら潤の唇を味わうのだった。




















深い深い海の中で…俺はずっとずっと貴方を想いながら俺は過ごしてきたんだよ…。





だから俺は貴方と一緒になれて、今とっても幸せだよ…。





 
そんな想いを込めながら貴方に深い深いキスをしながら、左肩にあるハートの赤い痣にもそっと唇を落とし、
 
 
 
 
俺の大切な人
 
 
 
という印をつけるんだ…。
 
 
 
 
 
 
「潤さん…。
愛してるよ…。」
 
 
 
 
とそっと耳元で囁くと、
 
 
 
「しょお…く…ん…。
おれ…も…。」
 
 
 
 
と甘い声で貴方はそう応えてくれるんだ。
 
 
 
 
 
深い深い海の中で俺はずっと貴方を想い続けてよかったよ…。
 
 
 
 
 
 
潤…愛してるよ…。
 
 
 
 
 
 
俺と一緒になってくれて、ありがとう…。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 




























〜深い深い海の…〜
⭐⭐end⭐⭐













いつもお話を読んでいただき、ありがとうございます照れラブラブ 


〝深い深い海の…〟はこれでお終いですキラキラ




なんだかんだと長くなってしまったのですが、最後まで読んでくださって本当にありがとうございましたラブキラキラ



今回はあとがきを書こうかな…?と思っています音譜