深い深い海の…  〜25〜 





















ソファーに座りタブレットに夢中になっている翔くんの姿を、少し離れた窓際にある椅子に座って眺めながら、


 


「毎日が幸せだなー。」



なんて思っていると、





「潤くん…。
心の声ダダ漏れですよ。」



と和也くんの色白の可愛らしい顔がズイッと目の前に現れて、



「うっわっ!!
か、和也くんどうして居るのっ!?」

 

驚いてそう言うと、



「何でって…。
まーくんと遊びに来たんですよ。」

と和也くんがそう言うと、和也くんの後ろから雅紀くんがひょこっと顔を出して、



「潤ちゃん、こんにちはっ!!」

ニコニコとしながらそう言うと、



「潤ちゃん、キッチン借りるねー。」



と言いキッチンへと消えて行ったのだった。








雅紀くんがキッチンへと行くのを見届けると、和也くんは俺の耳元は手を当てると、



「潤くん、翔ちゃんを見過ぎですよ。」


と小声でそう囁くと、俺の向かい側にある椅子へと座りクスクスと笑いながら俺を見てくるので、



「えっ!?
俺…そんなに見ていた?」


と聞くと、




「うん、見ていたよ。」


と和也くんは頷きながらそう言った。





「うわっ!!
恥ずかしいっ!!
俺、ヤバい人みたいじゃんっ!!
翔くんのストーカーみたいで怖いじゃんっ!!」




と言うと和也くんは、


「あー。
でも、もっと凄いのが居ますからねー。
潤くんのは可愛いもんですよ。
だから気にしなくても大丈夫ですよ。」


とニッコリと笑ってそう言ってくれるけれど…。






いや…。


気にするし…。


俺、絶対にヤバい人じゃん…。


なるべく翔くんを見ないように、と思うけれど…。


どうしても見てしまうんだよな…。



「あー。
ダメじゃん…俺…。」



と思っていると、





「ふふふ。
潤くん、心の声がまた出ていますよ。」


と和也くんが笑いながらそう言い、



「あ、そうそう。
あと、またアイツらが…。」



と窓の外を指さすので見てみると…。







窓の外ではビーチボールくらいの大きさの黒い何かが集団でガサガサガサッと動き、手らしきモノをブンブンと振ってきたので、胸の前で右手を振るとザワザワとザワつき、目が合ったのかな…?と思ったらそのまま立ち去って行ったのだった。





「またあの子達が海の幸をくれたの?」

と和也くんに聞くと、



「そうなんですよ。
全く…。
最近は仕事サボって潤くんの為に海の幸探しに勤しんでるんですよね…。
だから今日はまーくんに料理して貰う為に来たんですよ。
潤くん病み上がりだから、料理作るのしんどいと思って。」


と和也くんは呆れた顔でそう言った。



「和也くんも雅紀くんも、あの子達もわざわざ俺達の為にありがとう。」


と言うと、



「皆んなやりたくってやっているんですから、潤くんは気にする事ないですよ。」


と和也くんはそう言うけれども…。




「でも…。
今度和也くんと雅紀くんと、それとあの子達にもお礼しなくちゃね。
あっ、そうだっ!!
あの子達も招待してあげて、今度皆んなでバーベキューをする?
大野さんも呼んでさー。」



と言うと和也くんが、


「バーベキュー、いいですねー。
でもねー。
翔ちゃん次第ですけどねー。
ねー、翔ちゃん。」



と言うといつの間にか翔くんが此方へ来ており、


「……。
俺が居る時ならいいよ。」


と一瞬間はあったけれど、翔くんはニッコリと微笑んでそう言ってくれたのだった。





「翔くん、ありがとうっ!!
ねえ、和也くん。
翔くんがいいって言ってくれたから、今度の土曜日にでも集まろうか?」


と言うと翔くんが、


「あ…。
今度の土曜日はちょっと…。
その次の土曜日ならいいよ。」



と言ったので、


「えっ?
何で?」


と聞くと翔くんは、


「潤さん…。
今度の日曜日に一緒に出かける約束したよね?
だから前日の土曜日は早く寝なくちゃいけないから…。」


と言い、


「ねっ。
潤さん。」



と言いながら俺の手を握ってあの可愛い顔でじっと見つめてくるもんだから、


「うん…。
そうだね…翔くん…。」


と言いながら、思わず翔くんに見惚れてしまったんだよね…。



ああ…。

今日もやっぱり翔くんは、可愛くて綺麗だなーーっと…。


その横で和也くんがニヤニヤと見つめていたのにも気付かずに…。




















その後、


「皆んなー。
ご飯、出来たよーっ!!」


と言い、雅紀くんが夕飯をリビングに運んできてくれたので4人で、


「「「「いただきますっ!!」」」」


と手を合わせて夕飯を食べたのだった。







雅紀くんの作ってくれた夕飯を食べ終わると、



「そういえば潤ちゃんが眠っている間に、こんなの見つけたんだよっ!!」



と雅紀くんはそう言うと、リビングの片隅にある本棚から一冊のアルバムを持ってきたのだった。






ローテーブルの上にアルバムを広げて見ていると、




「ねえ。
これって潤ちゃんの子供の頃?
可愛いねーっ!!」



と雅紀くんはアルバムを広げてそう聞いてきた。


「ああ、うん。
俺と姉ちゃんだ。」



と言うと、アルバムを見ていた翔くんが、



「ああ…。
潤さんの子供の頃か…。
懐かしいな…。
その頃も潤さん可愛かったよね♡」


と言ったのだ。




「えっ!?
懐かしいって…?」


その写真は翔くんに助けて貰った時よりも前の写真で…。





俺が翔くんと出逢ったのは、小学一年生の海で溺れた時だよね…?


と思っていると、翔くんの目が明らかに泳いでおり、『しまった!!』という顔になっていたのだ。







「さっき言っていた『もっと凄いの』ってこの人です。」


と和也くんはケロッとした顔で翔くんを指差してそう言うと続けて、




「翔ちゃんの方が潤くんのストーカーですから。」


とニッコリと笑ってそう言ったのだ。




「へっ?」


と間抜けな返事をすると、


「和っ!!
お前、余計な事を言うなよっ!!」


翔くんが慌ててそう言うと和也くんの口を塞ごうとしていたが、和也くんはスルリとその手から逃れて2人が揉めているのを見ていたのだが、どうにもこうにも理解が出来ないので…。




「「どういう事っ!?」」




と思わず雅紀くんと声を揃えてそう聞いてしまったのだった。









「翔ちゃんは25年前の潤くんが海で溺れて助けてあげた時よりもずっと前から、潤くんの事を見守っていたんですよねー。」
(和也心の声:潤くんの事を見続けていて怖いったらありゃしない。)


と和也くんがそう言うと、雅紀くんが手で口を押さえて、



「えっ!?
翔ちゃん…ちょっと怖くない…?」


と言うと和也くんも、


「でしょう?
怖いですよねー。」


と言っていたのだが…。








俺は翔くんが俺の事をずっと見守っていてくれたかと思うと、何だか嬉しくて…。




それって翔くんがずっと俺の事を好きでいてくれたって事だよね…?



自惚れてもいいのかな…?




なんて思っていると和也くんが、



「まーくん。
修羅場になるかもしれないので、我々はもう退散しようっ!!」



と言い立ち上がると、雅紀くんの手を引いて部屋から出て行こうとしたのだった。



「えっ!?
そんな…。
和也くん、揉めたりしないよ。」


と言うけれど和也くんは、


「いいえ、潤くん。
俺の立場が危うくなるので。
それではまた来ますねっ!!」

と言い、


「えっ!?
和くんっ!?
僕、今日は潤ちゃんとお話し出来ると思っていたのにーっ!!」

と言う雅紀くんの手をグイグイと引っ張り、和也くんと雅紀くんは帰って行ったのだった。










「和也くん、何であんなに慌てて帰ったんだろうね?」



と首を傾げて翔くんにそう言うと、翔くんは眉間に皺を寄せて、



「和のヤツ…。
アイツめ…。」


とお怒りモードになっていたのだった…。





あ、ああ…。


修羅場になるかもしれなかったのは、翔くんと和也くんがか…。



と思っていると、翔くんが俺の視線に気が付き、ハッとすると今度は顔を真っ赤にしながら困った顔になり、



「潤…さん、違うんだよっ!!
潤さんが初めてあの海に来た時、俺…天使の子供が迷い込んで来たのかと思っていて…。」


と恥ずかしそうにそう言うと…。



「…あんなに可愛い子は他の人に渡したくなかったし…。
だから潤さんがあの海に来る度に、見に行っていたんだ…。」




と顔を背けながらそういう姿が愛おしくて…。






そんな翔くんに近付くと、俺はそっと翔くんに抱き付き、



「翔くんっ…。
あんなに広い海で…。
俺を見つけてくれてありがとう。」


と言うと翔くんは驚いた声で、


「えっ!?」



と呟いたのだった。




「俺の事を愛してくれてありがとう。
俺も翔くんを愛してるよ…。」



と言うと翔くんは、



「潤さん…引かないの…?」



と震える声でそんな事を言うもんだから、



「引いたりなんかしないよ。
むしろ嬉しいよ。」


と言うと翔くんは、



「よかった…。
潤さん…俺も潤さんを愛しているよ…。」



と言うとそっと俺の顔を両手で包み込むと、深い深い口付けをしてきたのだった…。
















『また逢いに行くから。
待っていてね。』




25年前…海で溺れた俺を助けてくれた、赤いユラユラと揺れるスカートの綺麗なお姉さんは約束通り俺に逢いに来てくれたのだった。





でもそれは本当は人魚の王子様で…。



その人魚の王子様は俺を助けた事により、人魚の国の禁を犯してしまい、深い深い海の底に閉じ込められていたけれどこうして俺の元へとやって来てくれて…。






人魚の王子様は海の泡にはならずに、人間になりこうして俺と一緒に暮らしてくれており…。








翔くん、俺は翔くんと出逢えて幸せだよ。




どうかこの気持ちが翔くんに届きますように…。












その想いを伝えるかの様に、俺は翔くんの甘くて蕩けそうな口付けに応えるのだった…。





























⭐to becontinued⭐