深い深い海の…  〜23〜



















「しかしまーくんは面白えなー。
ふふふふふ。」




と大野さんは笑いながらそう言いながら、日本酒を美味しそうに飲んでいた。




「俺、雅紀はずっと冗談で言ってるもんだと思ってた。」


と翔くんは大野さんの作ってくれた料理を頬にパンパンに入れながらそう言うと、
(やっぱりリスみたいで可愛い♡)






「だって…。
ずっと海の魔女は魔女だから、おばあちゃんだと思っていたんだもん…。」



と雅紀くんはしゅんとしながらそう言うと、




「まーくんが人の説明をちゃんと聞かないからいけないんですよ。」


と言いながら和也くんは焼き魚に手を伸ばしていた。









どうやら雅紀くんは海の魔女の館には姿を見せないけど、海の魔女のおばあさんが居るものだと思っていたらしいのだ。


違うと和也くんが説明をしようとしても、雅紀くんは、

『和くん。
分かってるから大丈夫っ!!』


と言って話しをちゃんと聞いていなかったらしいのだ。



まあ、魔女がまさかの可愛い男の人とは誰も思わないよね…。






「あ、じゃあ和也くんがマジシャンだと言っていた、あれも嘘なの?
カードマジックプロ並みだけど、あれは魔法なの?」


と聞くと、



「ああ…。
あれは魔法ではないんですよ。
カードマジックは俺の趣味なんで。
人間界に来て暇だったので本読みながらやってみたら、結構面白くてハマってしまったんですよ。」


和也くんは飲んでいたビールをテーブルに置くと、おもむろに取り出したトランプでカードマジックを披露してくれた。



「おおーっ!!
和也、すげーなっ!!」


「流石和くんっ!!」


「俺、全くトリックが分からない…。」


「和、お前やっぱりコレ魔法じゃないのか?」


と4人が口々に言いながら、和也くんのガードマジックを楽しんだのだ。






  

美味しい料理とお酒を飲み(お酒は病み上がりの俺以外の4人がだけどね。)、楽しい時間を過ごして夜も更けてきた頃、大野さんが時計に目をやり、



「もう、こんな時間だな。
そろそろ風呂に入って寝るか。」


と言い、



「魔女先生。
潤は風呂に入って大丈夫なのか?」


と和くんに聞くと、



「まだ痛みは少しあると思うけど、傷口は塞がってきているからお風呂に入っても大丈夫ですよ。」


と和也くんがそう言いニヤリと笑うと、



「潤くん、翔ちゃん。
ごゆっくり♡
翔ちゃん、潤くんをしっかり洗ってあげてくださいね。」


なんて言うもんだから、


「えっ!?」


と思わず声わあげて狼狽えてしまうと、


「和、馬鹿っ!!
余計な事を言うなよっ!!」


と翔くんがそう言い、



「潤さん。
病み上がりの潤さんを襲ったりなんか…じゃなくて、お風呂にゆっくり浸かって疲れを取ろうね。」



ニッコリと微笑みながらそう言うと、俺の手を引いてバスルームへとむかったのだった。





リビングを出る時に、



「「「ごゆっくりーっ!!!」」」




と3人の声がして、俺はますます顔が赤くなるのを感じたのだった。
















バスルームへと到着すると翔くんが優しく俺の背中を流してくれて…。





ふふふふふ。



と笑うと翔くんが、



「潤さん、どうしたの?」


と聞いてきたので、



「いつもと逆だな、と思って…。
まさか翔くんにこんな風に洗って貰う日が来るなんて、夢にも思っていなかったから。
何だか嬉しくて。」



と答えると、翔くんは背中から俺を抱きしめて、



「俺はずっと潤さんにこうしてあげたいと思っていたから、現実になって良かった。
潤さん、愛してるよ。」



と言うので、



「俺も翔くん、愛してるよ。」



と言い翔くんの手をギュッと握りしめたのだった。
















お風呂から上がり翔くんと一緒にリビングに向かうと、リビングは綺麗に片付けられており、



「じゃあ、俺たちは風呂に入ってくるから先に寝ててくれよ。」



と大野さんがそう言い立ち上がりリビングから出ていくと、和也くんもそれに続いて出ていったが雅紀くんが、



「潤ちゃん。
まだ眠くないよね?
まだお話し出来るよね?」


とやって来ると和也くんが戻って来て、



「まーくん。
いいからおいでっ!!
潤くんは病み上がりなんだから、貴方と話しをするのはまた今度っ!!」


と言い、




「えっ!?
えっ!?
何でっ!?
和くんさっき、また後で潤ちゃんと話をさせてくれるっていったのにーっ!!」




と納得していない雅紀くんの手を無理矢理引いてリビングから出て行ったのだった。








 

ふふふふふ。


ふはっ!!



その様子を見て、翔くんと顔を見合わせ笑うと、翔くんが、



「潤さん、じゃあもう寝ようか?」


と聞いてきたので、



「うん。
そうだね。」



と答えて2人でベッドルームへと移動をした。

















ベッドルームに入ると翔くんが、


「潤さん、寝る前に和がくれた魔法薬塗っておこうね。」


と言いサイドテーブルの引き出しから、丸くて浅い茶色の瓶に入った薬を取り出した。


瓶の蓋をクルクルと回して開けるとサイドテーブルの上に置き、俺の着ているパジャマのシャツの裾をそっと捲り上げ右手の人差し指で瓶の中のピンク色のクリーム状の薬を掬い上げ、


「潤さん、痛くない?
大丈夫?」


と言いながら俺の左胸に薬を塗ってくれた。



「痛くないよ。
翔くん、ありがとう。」



と言い、そっと左肩に目をやると…。



赤いハートの形をした痣はなくなっていて…。



「翔くんのハートは、ちゃんと翔くんに戻ったんだね。
よかった。」



と言うと翔くんは、大きくて綺麗な瞳でジッと俺を見つめると、



「今だけね…。」


とニッコリと微笑んでそう言った。



「今だけ…?」


と聞き返すと、



「うん。
そう。
今だけっ!!」


と翔くんは答えると、



「潤さん、はいお終い。」




と言うと俺のパジャマのシャツの裾をそっと下ろして、薬の瓶の蓋を閉めるとサイドテーブルの引き出しの中へと片付けると、



「潤さん…。
おやすみのキスはぁー?」


と言うと翔くんは目を閉じて、


「潤さん。
ん〜ん〜。」


と言いながら唇を俺にクイクイッと突き出してきたのだ。





これって…唇にキスをして、って言ってるよね…?



やはりまだ慣れずに戸惑っていると、



「潤さん、早くぅーっ!!」


と翔くんが甘えた声でそう言うので、



「翔くん、おやすみなさい。」


と言いチュッと翔くんの唇にキスを落とすと、



「潤さん、おやすみなさい。」



と翔くんが俺におやすみのキスをしてくれたのだが…。




「ん…んん…。」




思いのほかディープなキスに俺は酸欠状態で、トントントンッと翔くんの背中を軽く叩くと、



「ん〜。
もうダメなの…?」


と翔くんがあの大きくて綺麗な瞳で…上目遣いで俺の顔を見上げてきたのだった。





「あ…あの…その…。
ダ、ダメじゃないけど…。」




と答えると、



「ふはっ!!
嘘、嘘。
病み上がりの潤さんを襲ったりしないから安心して。」



顔を傾けてニッコリと微笑み、そうして俺をギュッと抱きしめてそのまま横たわると、



「でも、こうやって毎日寝てもいい?」


と優しい声でそう聞いてきたので…。




「うん…。
いいよ。
俺にこうしていいのは翔くんだけだから。」



と言うと翔くんは、ギューーーーーーッ!!と力を込めて俺を抱きしめると、




「潤さん…。
嬉しい…。」



とそっと俺の耳元で囁いたのだった。
















⭐to becontinued⭐