深い深い海の…  〜20〜 





















「知っていたけど…。
翔ちゃんの知っている内容とは少し違うと思いますよ。」




と呟くと和也くんは話しを続けた。



翔ちゃんが助かる方法は…。



まあ、要は潤くんに翔ちゃんの伴侶になって貰えばよくって…。


でもその為には潤くんに心から翔くんを愛して貰い、そして潤くん自身にその気持ちを翔ちゃんに伝えて貰わなければいけなくて…。






だけど、翔ちゃんから潤くんに自分の気持ちを伝えてはいけないし、翔ちゃんの気持ちを知っている俺やまーくんが余計なお世話で翔ちゃんの気持ちを潤くんに伝えてはいけなかったんですよ。


「なのに船の上でまーくんが、大野さんに便乗して余計な事を言おうとしていたので内心冷や冷やしましたよ…。」



と言うと和也くんはキッ!!と雅紀くんを睨んだ。




すると雅紀くんは気まずそうな顔をし、


「ごめんね、和くん…。
ついつい船長さんにつられてしまって…。
あんなに和くんに余計な事は言ってはダメだと言われていたのに…。
言った事にも気付いていなくて、ごめんね…。」


雅紀くんが泣きそうな声でそう言うと、


「そうそう、まーくんには何度も言っていたのに…。
全く…。」



と呆れながら和也くんはそう言うと、



ハァーッ




とため息をつくと直ぐに俺に目線を戻して話しを続けた。




「だから俺は翔ちゃんを潤くんの家で預かって貰う事にしたあの日の帰り際に…。」










潤くんには短剣が見えないように魔法をかけて…。



あの短剣を翔ちゃんに渡してこう言ったんです。




『翔ちゃん。
貴方が潤くんを好きだという気持ちは潤くんにも他の誰にもバレてはいけません。
バレてしまうと潤くんの命が危うくなりますよ。
この短剣で潤くんを刺すしか貴方が海の泡となり消え去るのを免れる方法はないんです。』



と…。




分かりやすい翔ちゃんはその話をした途端、血の気が引いて顔色が悪くなっていましたけどね。





翔ちゃんには悪いけど潤くんから愛の告白をして貰わない事には全て水の泡となってしまうので、そうやって脅しをかけたんですよ。


なので翔ちゃんはずっと潤くんに、自分の気持ちを悟られないようにしていたんですよ。









だけど俺は潤くんが翔ちゃんに好意を持ってくれていると思っていたので、潤くんに賭けていたんですけど…。



なかなか思っていた様に事が進まず…。




だから、タイムリミットまであと1日となったあの日に、魔法で声を変えて潤くんのふりをして大野さんに船を出して貰うように電話をしたんです。




で、その夜…。


潤くんの家の冷蔵庫に赤い瓶に入れた魔法薬の眠り薬を置いておいたんです。


あの瓶には潤くんが飲みたくなる様に魔法をかけておいて、潤くんに飲んでもらう様にしていたんです。





魔法薬で眠った潤くんを連れ出し、夜明け前に大野さんに再度潤くんになりすまして電話をして海に呼び出したんです。



海の上なら海の魔物も呼ぶ事が出来るので、より一層緊迫感がある演出も出来ますしね。




翔ちゃんを魔法の泡の中に閉じ込めた所までよかったんです…。




あの中にさえいれば翔ちゃんは人魚の力が使えいし魔法も効かない空間しですから…。



其処までは俺の計画通りだったんです。







「ただ一つ…。
潤くんを除いては…。」




「えっ!?
俺っ!?」


と言い、右手の人差し指で自分を指して和也くんに問うと、和也くんはコクンと頷き、



「そう、潤くんが大誤算でしたよ…。」



何でっ!?


と思い首を傾げていると、




「潤くんに渡したあの短剣には魔法をかけておいたんです。


潤くんを刺さない様にと…。」




和也くんの色素の薄い綺麗な茶色の瞳が俺を見つめながらそう言った。




「なのに、潤くんは自分の心臓めがけてあの短剣を振り下ろし…。

短剣は見事に潤くんの心臓を貫いたんですよ…。」




「どういう事…?」



「潤くんが自分の命を賭けてでも翔ちゃんを守ろうとした、っていう事ですよ…。


それだけ翔ちゃんを大切に…そして深く愛してくれていた、っていう事ですよね…。


俺の魔法を跳ね除けてでもね…。」













と和也くんはいつもよりも水分を含んだ瞳で俺を見つめながらそう言った。




















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